活性酸素(かっせいさんそ,Reactive Oxygen Species,ROS)とは、大気中に存在する酸素分子のうち、他の物質と酸化反応を起こす力の強い酸素の総称です。通常、人が呼吸によって取り入れる酸素のうち、1~3%程度が活性酸素になると言われています。活性酸素は高い殺菌力を持つ反面、増えすぎると正常な細胞や遺伝子を酸化させ、シワやシミなど老化の原因になる他、加齢臭や動脈硬化、多くの生活習慣病やガン細胞を生み出す原因であるとも言われています。

活性酸素の作用と効果

酸素を利用して生きている人間にとって、活性酸素はエネルギー代謝の結果として生じるもので、人の細胞では1日に約10億個の活性酸素が発生し、体内に侵入した細菌や異物を攻撃したり、酵素反応を促すなどの役割を果たしています。

活性酸素の良い作用

通常、呼気から取り入れる酸素の1~3%程度が活性酸素となり、殺菌作用や血流をよくする作用を発揮します。毒をもって毒を制すといったところでしょうか。

  • 殺菌・消毒作用
  • 抹消血管の血流を確保する働き
  • 生理活性(排卵・受精、細胞分化、アポトーシス)

活性酸素の悪い作用

ストレスなど、何らかの原因で体内の活性酸素の量が増えると、細胞を必要以上に酸化させるなどの悪影響が生じます。

  • 正常な細胞を酸化(錆びさせる)させて、傷を付ける
  • 肌を酸化させて老化を促進する
  • そばかす、肌荒れ、シミなど
  • 疲れやすくなる
  • 肩こり
  • 冷え症
  • 加齢臭など体臭の悪化
  • 過酸化脂質の増加
  • 抜け毛・薄毛
  • 痴呆
  • 動脈硬化
  • その他多くの生活習慣病に関与
  • 細胞を傷つけてガン化させる

活性酸素のうちフリーラジカルが特に有害

活性酸素は細かく分類するといくつかの種類に分かれます。分類された物質うちの2種類がフリーラジカルに分類される、特に有害な活性酸素です。

フリーラジカルとは、不対電子をもつ分子や原子のことです。電子は2個が対になって安定した状態になりますが、不対電子とは、「電子が対になっておらず不安定な状態の電子のこと」で、不対電子を持つ分子や原子は、他の分子や原子の電子と結合しやすい性質を持っています。

フリーラジカルは、不対電子を持つ分子や原子の中でも、他の分子や原子から電子を奪い取る力が高い分子や原子のことをいいます。

フリーラジカルに電子を奪われた分子は「酸化」された状態になります。フリーラジカルは通常の酸素よりも他の分子や原子を酸化させる力が特に強い性質を持ちます。

また、フリーラジカルによって電子を奪われて酸化した分子は、それ自体がフリーラジカルになり、さらに他の分子を酸化させる、「ラジカル反応」という連鎖反応を起こすため、活性酸素による酸化はラジカル反応によって爆発的に広まっていきます。フリーラジカルはこうして体内の細胞を次々に酸化させていく性質があるため、有害性が高いのです。

燃焼もラジカル反応の一種
身近でイメージしやすいラジカル反応はものが燃えること、つまり「燃焼」。ものがひとたび燃えだすと連鎖的に周りのものを燃やしていきます。これもラジカル反応の一つです。

現代社会では活性酸素が増加している

最近この「活性酸素」という言葉をテレビなどでもよく聞くようになりました。その理由は、活性酸素が細胞を酸化させる、つまり老化に深く関わる物質であるという事と、さらに、その酸化作用が実に多くの疾患に関わっていることがわかってきたためです。

そして何よりも、昔よりも現代社会では活性酸素が増加しているのです。その原因は、現代社会が活性酸素が発生しやすい環境になっているからです。

活性酸素を発生させるもの

  • 電化製品全般(電子レンジ、スマートフォン、パソコン、テレビなど)
  • 食事(油モノ、ジャンクフード、お菓子など)
  • 生活習慣(ストレス、タバコ、アルコール、ダイエット、睡眠不足による悪影響、激しい運動、慢性疲労など)
  • 化学物質(化粧品、医薬品、殺虫剤など)
  • 情動の変化(ショック、恐怖、悲しみ、驚き、怒り、痛みなど)
  • その他(放射線、紫外線、病原体、CT検査、レントゲンなど)

現代社会では様々な化粧品、加工食品、化学製品や電子機器などが日々生み出され、私達の生活は豊かになったように感じますが、こうした最新の人工製品こそが、私達の体内で多くの活性酸素を生み出す根源となっているのです。

活性酸素は疲れの原因になる

細胞を酸化させる活性酸素は、疲れの原因としても知られています。激しい運動などをすると、細胞はその機能を維持するために、大量の酸素を消費します。細胞が酸素を大量に消費することで、大量の活性酸素が発生し、細胞の酸化を促進させ、運動機能の低下が起こります。

活性酸素が発生すると、『疲労物質ファティーグ・ファクター(FF)』が発生し、疲労感を感じます。 活性酸素が発生するとFFも発生して疲れを感じやすくなるため、運動にかぎらず、活性酸素を多く発生させるような生活習慣を送っていると、疲れやすくなると言えます。

活性酸素は老化の原因にもなる

活性酸素は、細胞を酸化させます。細胞の酸化とは一言で表すと『老化の進行』です。

私たちが生活する上で活性酸素は常に発生しており、また、そもそも老化の進行は誰にも止めることは出来ません。しかし、過剰な活性酸素の発生は、「老化をさらに加速させる」原因になるのです。

活性酸素は加齢臭の原因になる

老化の進行を促す老化物質である活性酸素は、老化現象の一つとして現れる加齢臭の発生にも関係しています。

加齢臭は若い人には現れず、40歳前後になると発生する中年層以降の独特の体臭のことで、加齢臭が発生する原因として、加齢により体内に活性酸素が増加することが挙げられるのです。

加齢により活性酸素が増えると、活性酸素が体内の脂質と結びつき、過酸化脂質という有害物質を作り出します。過酸化脂質は、皮脂成分の一種である『9-ヘキサデセン酸』という物質が酸化分解されて、加齢臭の発生源である『ノネナール』という物質を産生するのを促進してしまうのです。

ちなみに、過酸化脂質は加齢臭だけでなく、動脈硬化やメタボリックシンドローム、その他様々な生活習慣病にもつながる恐ろしい物質です。

活性酸素が増加する原因

現代の日本人の多くにとって、特に活性酸素を増やす原因になりやすいのが、睡眠不足ストレスです。

日本人の睡眠時間は先進国の中でも常に最低レベルで、多くの人が慢性的な睡眠不足です。

詳しくは『日本人の睡眠に関する統計データ

また、奥ゆかしい人が多いために、中々はっきりと物事を他人に伝えることが出来ず、その結果ストレスを抱えてしまう人が多いとされています。

日本人の奥ゆかしい性格について詳しくは、『性格は遺伝するか?

活性酸素を減らす抗酸化物質

体内で発生した活性酸素は体内に存在する抗酸化物質によって除去されています。抗酸化物質は、酵素、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどから成り、こうした抗酸化物質を増やすことで、活性酸素を減らすことが出来ると言えます。

中でも、SOD(スーパーオキサイドデイスムターゼ)と言われる酵素の働きが重要で、SODは効率的に活性酸素を分解してくれます。SODは大豆、青大豆、黒豆、小豆、グリンピースなどの豆類や、海草類緑黄色野菜、レバーなどに多く含まれる酵素です。

タンパク質から分解されるアミノ酸であるトリプトファンから作られるメラトニンのようにタンパク質を原料に分泌されるホルモンにも抗酸化作用があることが知られています。

その他にも、ビタミン、βカロチン、フラボノイド、カテキンなども抗酸化作用を持ち、また、亜鉛やマンガン、銅や、マグネシウムなどのミネラル類は抗酸化物質の働きを補助する作用があります。

生活の中で活性酸素を減らすには

活性酸素を減らすには、こうした抗酸化物質の働きをうまく利用するために、食事によって抗酸化物質を多く取り入れるようにすることと、先に紹介した、活性酸素を増やす要因から遠ざかる、生活習慣を改める事が重要です。

中でも、現代社会に蔓延している電子機器ストレスについては、要注意です。

電子機器からは電磁波やブルーライトという光が発せられており、これが活性酸素の発生以外にも、体内時計を狂わせて睡眠の質を低下させる原因にもなります。

参考:『就寝前のスマホいじりにご用心

ストレスは我々の社会の中のありとあらゆるところに溢れており、こうして我々は日々活性酸素を体内で増やしてしまっているのです。ストレスは、活性酸素を増やすだけでなく、精神にも大きく影響し、うつ病を始めとした精神疾患の原因にもなります。

photo credit:Rob Fahey