トリプトファンは必須アミノ酸の一種で、体内でセロトニンメラトニンと言った物質の材料となります。そのため、トリプトファンが不足するとセロトニンやメラトニンの不足にもつながり、気分が落ち込みうつ病を起こしたり、寝付きが悪くなり不眠症などの睡眠障害を起こしたりする原因になる場合があります。

このページの要約

時間の無い方や、とりあえずパパっと理解したい方はこちらの要約をお読み下さい。

  • トリプトファンは必須アミノ酸の一種で、食事から摂取する必要がある
  • トリプトファンは肉や魚、豆などタンパク質に多く含まれている
  • トリプトファンはセロトニンやメラトニン、ナイアシンなどの原料となる
  • トリプトファンから合成されるセロトニンは心のバランスを整える
  • メラトニンは睡眠ホルモンとして安眠には欠かせない
  • ナイアシンは栄養の代謝に欠かせないビタミンの一種
  • トリプトファンが不足するとこれらの物質も足りなくなる可能性がある
  • ダイエットや好き嫌いはトリプトファン不足を招く恐れも
  • 女性は女性ホルモンの影響を受けやすくトリプトファン不足には注意が必要

以下では詳しい内容を紹介します。後でゆっくり読みたい方は、ページをブックマークしておくと便利です。

トリプトファンは必須アミノ酸

トリプトファンは人体に必要不可欠で体内で生成することが出来ない、いわゆる必須アミノ酸の一つで、食品のたんぱく質(肉や魚、豆類など)に多く含まれています。(人の必須アミノ酸は全部で9つ)

トリプトファンは、人体を構成する主要な成分であるたんぱく質の一つとなるアミノ酸です。また、強い抗ストレス作用を持つ『セロトニン』、睡眠ホルモン『メラトニン』、脂肪分解作用を持つ『ナイアシン』、その他にも最近の研究でうつ病や双極性障害などとの関連が指摘されている『キヌレニン』など、人体の恒常性や健康を維持する上で重要な役割を担っている様々な神経伝達物質やホルモン等の前駆体(原料)として利用されています。

トリプトファンは人体内では独自で作り出すことが出来ないため、食事で摂取する必要があります。トリプトファンの不足を補うためのサプリメントなども販売されています。

逆に、寝付きの悪さや眠りが浅いなど睡眠の質の悪さや、不安やイライラ、抑うつ症状などでお悩みの方、物事への意欲や仕事中の集中力がない人などはトリプトファンを摂取することで、改善が期待出来るかも知れません。
※トリプトファンは不眠症やうつ病など、疾病そのものを治療するものではありません

トリプトファンの主な働きと効果

トリプトファンは5-HTPという代謝物質を経て、脳内物質『セロトニン』、睡眠ホルモン『メラトニン』、肥満の改善効果や二日酔いに効果があるナイアシンなど、人間の健康に欠かせない物質に変換される必須アミノ酸です。

セロトニンの生成
セロトニンは心のバランスを整える作用のある伝達物質で、セロトニンが不足すると気分の落ち込みやイライラ、激しい怒りなど、感情の起伏が激しくなります。セロトニンの不足は、うつ病不眠症を引き落とすと言われています。また、セロトニンは、睡眠ホルモン『メラトニン』の分泌を促す脳内物質でもあります。
メラトニンの生成
メラトニンはセロトニンから合成されるホルモンで、メラトニンが正常に生成させることで自然な睡眠サイクルの維持と快眠効果が期待される、『睡眠ホルモン』と言われる物質です。(トリプトファンがセロトニンを生合成し、セロトニンがメラトニンの分泌を促進するという関係があります。)メラトニンの生成には太陽などのが密接な関わりがあり、2500ルクス以上の光(太陽光、または人工的な強い光)を浴びると脳内で生成され、およそ14時間後に分泌されます。
メラトニンが分泌されると、体温・脈拍・血圧を下げ、眠気を誘発します。つまり、メラトニンは『朝目覚めてから太陽光を浴び、夜になると自然と眠くなる』、という人間の自然な生活サイクルを作っているわけです。この自然な生活サイクルが崩れる(夜型の生活を続けるなどして)、セロトニンが不足する、などすると、メラトニンがうまく生成できなくなり、不眠症などを引き起こす原因となります。
ナイアシンの生成
トリプトファン60mgからナイアシン1mgが肝臓において生合成されるものとされています。
ナイアシンは糖質・脂質・たんぱく質を代謝・分解するビタミン(B3)で、以下のような働きがあります。
・皮膚や神経を健康に保つ
・血行を良くし頭痛や冷え性の改善
・コレステロールや中世脂肪を代謝しやすくする→肥満の改善
・二日酔いの原因となるアセトアルデヒドを分解する
ナイアシンが不足すると、皮膚炎、口内炎、神経炎、下痢などの症状が生じる場合があります。逆に、過剰・高用量の摂取により、皮膚が赤くなる、痒くなる可能性、肝障害を発生する可能性、血糖値・尿酸値を上昇させる可能性があります。

トリプトファンのその他の効果や作用
その他にも適量のトリプトファンを摂取することで、以下のような効果や作用があります。
・抗ストレス(セロトニンによる)
・快眠(メラトニンによる)
・肥満の改善(ナイアシンによる)
・肌荒れ改善、アンチエイジング(メラトニンによる)
・筋肉の増強(成長ホルモンによる。また、たんぱく質の材料として)

生活リズムを整える働きを持つ
トリプトファンの効果や働きの中で注目すべきは、脳の覚醒に関わるセロトニンや睡眠を促すメラトニンと言った、人の体内時計や概日リズムの維持に欠かせない物質の原料となっている点です。つまり、トリプトファンは、人が『朝起きて夜眠る』という、一見当たり前と思われがちな生活リズムを維持する上で必要不可欠な物質なのです。

トリプトファンからセロトニンへの変化プロセス

トリプトファンは体内で作り出すことが出来ず、食品から摂取する必要がある必須アミノ酸です。トリプトファンは体内で様々な役割を果たしますが、中でもうつ病や不眠症に大きく関わるセロトニンへ変化する点と、セロトニンから睡眠ホルモンのメラトニンが生成される点(セロトニン経路)が大きな注目を浴びており、高ストレスや不安解消、快眠効果を期待したサプリメントとしても人気があります。

ただし、トリプトファンのサプリは、日本国内では栄養補助食品や栄養素としてのみ販売が許可されており、なんらかの効果・効能をうたうことは薬機法上は制限されています。また、サプリメントの多くは個人輸入という形で、海外の製品が販売されていますので、購入や使用の際にはその点に留意して下さい。

→参考:失敗しない睡眠サプリの選び方

食品から摂取したトリプトファンの、セロトニンやメラトニンへの合成経路は以下のようになります。

  1. タンパク質を摂取(食品サプリメントから)
  2. トリプトファン(必須アミノ酸)へと分解される
  3. 5-HTP(5-ヒドロキシトリプトファン)が合成される
  4. (脳内、日中)セロトニンが合成される
  5. (脳内、寝る前)メラトニンが合成される

トリプトファンが不足すると

トリプトファンは、肉や魚など、食品のたんぱく質に含まれるアミノ酸ですから、日常生活の中で極端に不足する事態はあまり起こりません。

しかし、以下のような場合、トリプトファンの体内への供給が不足してしまう可能性があります。
・ダイエット
・好き嫌い、偏食
・菜食主義(豆や穀類で補給できるが)
・食生活の乱れ
・腸内環境の悪化

トリプトファンが不足すると、気分の落ち込みやイライラ、抑うつ症状が現れやすくなったり、不眠や寝付きの悪さ、眠りが浅くなるなど、睡眠の質の低下が起こる可能性があります。こうした場合、脳内ではセロトニンが不足している可能性があります。

女性はトリプトファン不足に注意

トリプトファンの不足によって起こる脳内のセロトニンの不足は、男性よりも女性に起こりやすいとされています。女性の場合、生理周期の影響から、女性ホルモンによって脳内で働くセロトニン神経の働きが抑制されてしまう時期があり、その間、セロトニンの分泌が減少してしまうことが分かっています。

このため、女性は男性よりも脳内でセロトニンを分泌する能力が1/2程度しかないと言われており、これが女性がいらいらやヒステリー、気分障害などを起こしやすい原因であると考えられているのです。

つまり、セロトニンが不足しやすい女性にとって、トリプトファンは特に欠かすことが出来ない物質のひとつであるといえるのです。

★次のページでは『トリプトファンの効果』をご紹介します。

photo credit: eggs (license)