女性はセロトニンが不足しやすい

脳内で働く神経伝達物質であるセロトニンは、ドーパミンノルアドレナリンと共に重要な神経伝達物質です。セロトニンは精神の安定を保つ働きを担っています。脳内でセロトニンを合成する能力には、男女差があり、女性は男性よりも脳内のセロトニンが不足しやすいとされています。

セロトニンが不足すると

セロトニンは脳内で精神安定の働きを担います。セロトニンが不足すると、イライラや不安、悲しみ、怒り、恐怖、無気力、などネガティブな感情が表に現れやすくなります。また、セロトニン不足は顔の表情を暗くしたり、姿勢が悪くなる、痛みに弱くなるなど、体調への影響も多岐に渡ります。

詳しくは『セロトニン不足の原因と症状』をご覧ください。

女性がセロトニン不足になりやすい理由

過去にアメリカで行われた研究により、女性は男性よりも脳内でセロトニンを作り出す能力が50%程低いことが明らかになっています。
参考:Differences between males and females in rates of serotonin synthesis in human brain

いくつか女性がセロトニン不足になりやすい理由を考察してみたいと思います。

体格の男女差

一般的に男性は女性よりも体格が大きく、また筋肉量は女性よりも男性の方が多くなる傾向があります。こうした体格と筋肉量の差は、セロトニンの原料として脳内に取り込まれるトリプトファンの量が男女で異なる可能性を示します。

セロトニンの材料であるトリプトファンは、『アミノ酸トランスポーター』という輸送体によって、脳内へと運ばれます。人の血液中にはトリプトファン以外にも様々な種類のアミノ酸が存在しており、アミノ酸トランスポーターはトリプトファン以外のアミノ酸も運搬しているため、トリプトファンだけが脳へと運ばれることはありません。

トリプトファンを脳へと効率的に運ぶのに関係してくるのが、男女の体格差です。

血中のアミノ酸のうち、トリプトファンとアミノ酸トランスポーターを競合する『BCAA』と呼ばれるアミノ酸があります。BCAAは筋肉を構成する主要なアミノ酸で、筋トレなどをして筋肉を増やす時には必要不可欠です。

男性のほうが女性よりも筋肉量が多いことから、筋肉量を維持するために必要なBCAAの量は、男性の方が女性よりも多いことが考えられます。つまり、同じ量のアミノ酸が血中にあるとき、男性の方がBCAAを筋肉へと取り込みやすいと言えます。

トリプトファンと競合していたアミノ酸BCAAが筋肉細胞へたくさん取り込まれると、その分トリプトファンがアミノ酸トランスポーターを利用しやすい状態になり、脳内へ効率よくセロトニンの材料を送り込むことが出来ると言えます。

このことから、筋肉量の多い男性のほうが、女性よりもトリプトファンを脳へと運びやすいことが考えられます。尚、アスリートやボディービルダーのような特殊な体格の人はこの限りではありません。

月経前後でインスリン抵抗性が変化しやすい

すい臓から分泌されるインスリンには、血中のアミノ酸(BCAA)の筋肉細胞への取り込みを促進させる働きがあります。

月経周期に分泌される女性ホルモンの一つであるプロゲステロンには、『インスリン抵抗性』をさせる働きがあります。インスリン抵抗性とは、インスリンのアミノ酸や血糖の細胞への取り込みやすさを示す言葉で、インスリン抵抗性が上がると、アミノ酸は筋肉へと取り込まれにくくなります。

つまり、月経周期でプロゲステロンの分泌が増加すると、インスリンによるBCAAを筋肉細胞へと取り込む作用が低下し、トリプトファンが脳内へと到達するのを阻害するBCAAが、血中に多く残ってしまうのです。

インスリン抵抗性の増加は、月経周期の女性に限らず、過度の肥満糖尿病患者などでも起こりますので、こうした人達も脳内のセロトニンが不足する可能性が高くなるといえます。

また、女性の場合でも、月経周期のうち『エストロゲン』の分泌が増加する期間は、インスリン抵抗性が下がり、インスリンの効き目が上がりやすくなるため、この期間は脳内でセロトニンを合成しやすい期間だと言えます。

ホルモンバランスの乱れ

女性の場合、月経周期が存在することにより、ホルモンが分泌されるバランスが日々変化します。

ホルモンバランスの変化は、体調や感情の変化に直結することがよく知られていますが、これはホルモンの分泌を司る『内分泌系』と、精神の安定を司るセロトニンを支配する『自律神経系』が、脳内で密接に関わっているためです。

つまり、ホルモンバランスの変化はセロトニンの分泌量の変化にもつながっているため、例えばエストロゲンの分泌量が増える月経周期前半にはセロトニンの分泌も促進され、精神状態は安定しやすく、コミュニケーション能力も向上することが分かっています。

逆に、プロゲステロンの分泌量が増加する月経周期後半では、セロトニンの分泌量が低下して、イライラや不安を感じやすくなるとされています。

女性は、初潮、月経周期、出産、更年期と、一生のうちでホルモンバランスが著しく変化する時期を体験することが男性よりも多く、こうしたことがセロトニンの不足につながると考えられるのです。

ストレス

多くの女性の月経周期で起こる『PMS(月経前症候群)』は、イライラや不安、肌荒れ、腹痛、腰痛、傾眠、不眠など様々な厄介な症状を引き起こす『ストレスのもと』です。また、ストレスはPMSの症状をさらに悪化させることもあります。

長い間PMSに悩み、ようやく閉経を迎えるころになると、今度は『更年期障害』が起こる場合があります。更年期障害も女性の体調や感情に多くの変化をもたらし、やはり多くのストレスを生みます。

こうした女性特有の月経や更年期障害が生み出すストレスは、脳内のセロトニン神経系の働きを抑制してしまいます。

具体的には、ストレスによって副腎から『コルチゾール』というストレスホルモンの分泌が増加し、コルチゾールが自律神経系のうち交感神経系の興奮を生み出すことで、自律神経系のバランスが乱れやすくなりります。

自律神経系のバランスが乱れると、自律神経系と同調して働くセロトニンも、正常な働きが抑制されてしまうため、脳内のセロトニンの分泌も減少してしまうのです。

女性は男性よりもうつ病になりやすい

女性が男性よりもセロトニンが不足しやすい 』ことが起因していると考えられる現象の一つに、『うつ病を発症する人の男女差』が挙げられます。

脳内のセロトニンが不足すると、精神の安定が崩れやすくなり、イライラ、不安、悲しみ、怒り、恐怖、緊張など、様々なネガティブな感情が暴走しやすくなり、うつ病の症状とも重なります。

うつ病を発症する男女の比率は、女性は男性よりも2倍程度多いことが世界的な傾向として現れており、これは女性の方が脳内でセロトニン不足を起こしやすいことと関係が深い一つの根拠であると言えるのです。

参考:厚生労働省 – 「うつ病を知る

セロトニン不足を解消するには

女性は毎月起こるホルモンバランスの乱れやPMSなどの影響から、ストレスを抱えやすく、セロトニン不足が起こりやすいのが事実です。セロトニンの不足は、ネガティブな感情を増やし、女子力ダウンにつながります。

日頃からセロトニンが分泌されやすい健康な体を目指すには、脳内のセロトニン神経を鍛えることが重要です。詳しくは『セロトニンを増やす方法』をご覧ください。

photo credit: spaceodissey Worried bride (license)



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