自律神経系とは末梢神経のうち、不随意運動(意志に基づかない、自動的に行われる運動)を担う神経系で、随意運動を担う体性神経と対になる神経です。不随意運動とは、例えば呼吸、循環、消化、体温の調整、発汗、代謝など、無意識のうちに行われる運動の総称で、ホルモンなどの働きにより内分泌系の機構と連携して、人が持つ生命の維持機構(ホメオスタシス)の根幹としての働きをしています。

交感神経系と副交感神経系の働き

自律神経系は、交感神経系副交感神経系という二つの神経系統で構成されています。

この交感神経系と副交感神経系は、相反する性質を持っており、片一方が優位に働いているときはもう一方の働きは抑制されます。一般的な朝起きて夜眠る生活では、交感神経系は朝~日中に優位に働き、副交感神経系は夕方~夜間に優位に働きます。

各部の反応日中/交感神経系夜間/副交感神経系
心拍増加減少
血圧上昇下降
呼吸速くする緩やかにする
胃の働き抑制される活発になる
腸の働き抑制される活発になる
精神興奮鎮静
瞳孔拡大縮小
涙腺涙を抑える涙を生産
唾液少量多量
汗腺汗が濃くなる汗が薄くなる
皮膚収縮拡張
肝臓グリコーゲンの分解を促進胆汁放出の促進
筋肉緊張弛緩
エネルギー消費する蓄積しようとする
膀胱排尿を抑制排尿を促進
神経伝達物質ノルアドレナリンアセチルコリン

現代人は自律神経系が弱りがち

交感神経系と副交感神経系の二つで構成される自律神経系の神経は、人体の活動に極めて重要な役割をになっている神経ですが、昔に比べると、現代人は自律神経の働きが弱まっている傾向にあるとされています。

その理由として、自律神経系は、日が昇ってから沈むまでは交感神経が優位に働き、日が沈んでから眠っている間は副交感神経が優位に働くという、人が本来持つ生活リズムに合わせて働くべきものなのに、現代人は昼夜逆転、寝不足・夜更かしなどの不規則な生活を送ったり、夜間でも眩しい光(テレビやスマートフォンなど)を浴びたり、体の働きに必要な栄養素を摂取できないような無理なダイエットをしたり、古来より人が営んできた生活とはかけ離れた生活リズムの中で生きている人が多くなっています。

また、現代人の多くは、職場や学校での人間関係、受験勉強、環境の変化などにより、過度なストレスに長期間さらされることも多くなっています。

その結果、生命を維持する上で重要な働きをしているホメオスタシス(恒常性維持機構)という機能がうまく働かなくなり、人が本来持つ生活や活動のリズムを維持することが難しくなります。

さらに特に注目すべきなのは、食生活や生活習慣の変化などによって、私達日本人の腸内環境が悪化していることも自律神経系が弱る原因の一つであるということです。

自律神経系の働きが弱ると?

自律神経系がうまく働かない状態と言うのは、交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、これらの神経系が働くべき時にうまく働かない状態のことです。

例えば日中、交感神経が働くべき時にうまく働かないと、やる気が起きなかったり、頭が重たかったり、ぼーっとするかもしれません。
また、夜には副交感神経が優位になり、自然と眠りに着くことが出来るはずですが、うまく働かないと、眠くならない、眠れない→不眠、というようなことにもなります。

その他にも、自律神経系の働きが弱まることで、精神的にも身体的にも、いたるところで様々な影響や症状が現れます。

こうした症状の総称として、『自律神経失調症』という病名があります。

自律神経系を鍛えるには?

自律神経系を鍛え、自律神経失調症の予防や改善をするには、以下のようなポイントが重要です。

1.規則正しい生活を心がける
自律神経系は、人が本来持つ生活リズム(朝起きて、夜眠る)に連動して機能しています。
生活リズムが乱れて不規則になっている場合は、まずは規則正しい生活を心がけましょう。
2.日光を浴びる
人は、古来より日光と共に生活をしてきました。
日光には我々人類が生命を維持する上で必要な様々な栄養素や物質の合成や分解にも役立っています。
暗い屋内に閉じこもったり、昼夜逆転の生活をしていると、そうした物質の合成が阻害されることにもつながり、自律神経系も衰える原因になります。 朝起きたら、まずはカーテンを開けて日光をしっかりと浴びましょう。
3.良質な睡眠を取る
睡眠中には副交感神経の働きにより、成長ホルモンコルチゾールプロラクチンなど、様々なホルモンが分泌されるなど、傷ついた細胞や体組織の修復・再生が行われています。その他にも、記憶を定着化させることにより学習効果を高めたり、病気への免疫力を高めたり、脂肪の分解や肌の修復など、ダイエットや美肌、アンチエイジングなどにも良質な睡眠を取ることは重要な役割があります。
睡眠が不足すると、本来副交換神経が優位に働いている時に分泌されているホルモンや、活動している臓器がなどの分泌や活動量が低下し、上であげたような症状が現れやすくなるのとともに、日中の交感神経の活動にも影響が出ますので、夜はしっかりと充分な睡眠時間を取りましょう。
参考: 自分がどれくらい眠れば良いかは、『理想的な睡眠時間』を参考にしてください。
眠りの質に不満がある人は、『快眠のための10のコツ』をご覧ください。
4.ストレスを溜めない
慢性的なストレスや、一時的でも過度のストレスは、自律神経系の働きを強く阻害する要因となります。
特にストレスを溜めやすい人は、スポーツや運動、時にはアロマテラピーやマッサージなど、自分にあった方法で定期的にストレスを解消させましょう。