自律神経失調症とは、自律神経系(交感神経系・副交感神経系)の働きのバランスが崩れたり、うまく働かなくなることが原因で、頭痛や発汗、便秘や下痢などの様々な症状が現れる状態を言います。
目次
自律神経失調症とは
自律神経失調症は、時には頭痛や耳鳴りのような自覚症状を伴って現れますが、臓器や血液の検査をしても異常が数値に現れにくく、病院で何度診察を受けても、何の異常も見つからない場合が多い疾病です。なんとなくイライラしたり不安になったり、くよくよしやすくなったりと、単に一時的な体調の変化なのか、病気の発症なのかの、線引事態が曖昧で自覚しにくい症状が多いのもの特徴のひとつです。
自律神経失調症の症状
自律神経失調症の症状は、非常に広く、多岐に渡って現れます。代表的な症状として、以下のような症状があります。
頭 | 頭痛、頭重感 |
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耳 | 耳鳴り、耳の閉塞感 |
口 | 口の乾き、口中の痛み、味覚異常 |
目 | 疲れ目、なみだ目、目が開かない、目の乾き |
のど | のどの異物感、のどの圧迫感、のどのイガイガ感、のどがつまる |
心臓・血管系 | 動悸、胸部圧迫感、めまい、立ちくらみ、のぼせ、冷え、血圧の変動 |
呼吸器 | 息苦しい、息がつまる、息ができない、酸欠感、息切れ |
消化器 | 食道のつかえ、異物感、吐き気、腹部膨満感、下腹部の張り、腹鳴、胃の不快感、便秘、下痢、ガスがたまる |
手 | 手のしびれ、手の痛み、手の冷え |
足 | 足のしびれ、足のひえ、足の痛み、足がふらつく |
皮膚 | 多汗、汗が出ない、冷や汗、皮膚の乾燥、皮膚のかゆみ |
泌尿器 | 頻尿、尿が出にくい、残尿管 |
筋肉・関節 | 肩こり、筋肉の痛み、関節のいたみ、関節のだるさ、力が入らない |
全身症状 | 倦怠感、疲れやすい、めまい、微熱、フラフラする、ほてり、食欲がない、眠れない、すぐ目が覚める、起きるのがつらい |
精神症状 | 不安になる、恐怖心におそわれる、イライラする、落ち込む、怒りっぽくなる、集中力がない、やる気がでない、ささいなことが気になる、記憶力や注意力が低下する、すぐ悲しくなる |
引用元:「自律神経失調症ってどんな病気?」
尚、自律神経失調症という病名は、定義や概念が曖昧で、一つの症状だけが強く現れたり、複数の症状が同時に現れたり、人によって現れる症状が大きく異なる場合があります。
調子が悪い時に、自分で「自律神経失調症」だと思い込んで片付けてしまうと、重大な病気を見落とすことにも繋がる危険がありますので、自覚症状のある場合は必ず医師の診察を受けるなどしましょう。
また、女性の場合、更年期障害から自律神経失調症の症状が起こる場合もありますので、50歳前後の女性は特に注意が必要です。
自律神経失調症の原因
自律神経失調症を発症する主な原因をご紹介します。
- ストレス
- ストレスは、自律神経系が乱れる最大の要因と言えます。自律神経系を乱してしまう、ストレスの種類等について後述します。
- 生活習慣の乱れ
- そもそも自律神経系とは、『朝起きて、夜眠る』という、典型的な人間の生活習慣と同調して働く性質があります。ところが、現代社会ではこの典型的な生活習慣というのはもはや形骸化し、夜更かしや徹夜は当たり前、朝晩逆転の生活や、不規則な就労時間など、自律神経系の働きを乱すような、生活習慣で暮らす人が少なくありません。
- 食生活の乱れ
- 医食同源と昔からいうように、食生活も自律神経系が乱れる大きな要因です。自律神経系が正常に機能する上で欠かせない、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質や、コルチゾールやメラトニン、成長ホルモンなどのホルモンは、すべて食事から得る栄養をもとに、体内で合成されます。従って、ダイエット、過食/拒食/偏食、食事の時間や量がバラバラ、など、食生活が乱れると自律神経系の働きに欠かせない物質が、不足してしまう可能性があるのです。
- 睡眠不足
- 自律神経系を乱す最大の要因であるストレスの解消手段は、睡眠や休息が最も効果的です。睡眠が不足すると、溜まったストレスを解消することが出来ず、どんどんストレスが溜まっていってしまいます。また、睡眠不足は自律神経系のうち、交感神経系が過度に刺激されやすく、自律神経系のバランスを崩す原因にもなります。
- 運動不足
- 運動もストレス解消の有効手段の一つです。運動が不足することで、ストレスが溜まりやすくなります。また、運動が不足すると、筋肉量が低下するため、基礎体温の低下、代謝量の低下、腸内環境の悪化、血行不良など、様々な要素により、自律神経系を弱らせます。
- 副腎疲労
- 人の抗ストレス反応の中核である、副腎から分泌されるストレスホルモンは、自律神経系のうち、交感神経系の働きによって分泌が促進されます。長期間ストレスを受け続けると、次第に副腎疲労が起こり、ストレスホルモンの分泌量が下がってしまい、自律神経系のバランスも崩れてしまいます。
- 腸内環境の悪化
- 人の腸内には、無数の腸内細菌が生息しており、それらの細菌が、自律神経系の働きに欠かせない栄養素の分解、酵素や補酵素の合成の他、人の腸管免疫のかなりの割合を担うなど、多岐に渡って人間の健康に関与していることが明らかになっています。腸内環境が悪化すると、そうした腸内細菌の数が減ってしまい、栄養素の不足や、免疫機能の低下など、自律神経系が弱る要因となります。
自律神経失調症の原因の一つはストレス
ストレス(興奮、緊張、不安、恐怖、暑い、寒い、臭い、痛い、など)は交感神経系が興奮する主要因です。ストレスの原因は大きく分けると以下のようなものです。
- 1.精神的なストレス
- いわゆる、一般的な概念におけるストレスのこと。仕事や学校、近所づきあい、家族etc。頭で「嫌だな」と感じること全般です。
- 2.肉体的なストレス
- 骨の歪みや筋肉の痛み、地球の重力などは肉体的なストレスになります。
- 3.科学的なストレス
- 車の排気ガスやシンナーのような化学物質のにおい、食品の添加物や、時には栄養素の偏りも科学的なストレス要因です。
- 4.環境要因のストレス
- 暑い、寒い、蒸し蒸しする、工事の騒音、隣の部屋の物音、など気温や湿度、騒音など、環境からも様々なストレスを受けています。
我々現代人は、多くのストレスに晒されています。常に何らかのストレスを受け続けるということは、常に交感神経系が興奮している状態であるということです。これはつまり、副交感神経系が弱りやすい状態で、それが自律神経の乱れに繋がります。
つまり、現代人の誰しもが自律神経系の乱れを経験していると言えるでしょう。
しかも、一つの大きなストレスだけでなく、普段は見逃しがちな、複数の小さなストレスが少しずつかかるだけでも、自律神経系の乱れに繋がる場合があります。なぜなら、いずれのストレスでも交感神経系が興奮する要因になり、そのストレスは蓄積されるからです。
ストレスと自律神経失調症の発症の関わりを例えると、次のようなイメージです。
1.ストレスとは一つのコップに蓄積する水分です。
2.異なるストレス原因でも、全てのストレスが同じコップに注がれます。
3.コップの水が溢れると自律神経失調症になるとします。 4.1つ1つから受けるストレスが些細なモノでも、異なる複数のストレスが積み重なると、コップの水は溢れてしまう場合があるのです。
つまり、我慢できるようなストレスや、見過ごしがちな小さな自覚症状であっても、小さなものが積み重なると知らず知らずのうちに自律神経失調症を発症してしまう可能性があるのです。
自律神経失調症の怖いところは、明確な自覚症状が無くとも、いつの間にか身体に変調を来たしてしまうことがあるという点です。
自律神経失調症とうつ病の違い
自律神経失調症とうつ病は、しばしば混同されることがあります。病名としては全く別ですが、それぞれ発症する一つの要因になるのがストレスであるということが共通していることや、発症した際の症状が似ている場合が多い、また同時に発症する場合が多いためです。
自律神経失調症とうつ病の違いの一つとして、
・自律神経失調症は身体的な症状が大きく現れやすい
・うつ病の場合は主な症状が精神面で現れやすい
という点があります。
また、自律神経失調症とうつ病を区別するのが困難な一番の理由として、同時に発症しているケースが多いためです。自律神経失調症に現れる身体症状と、うつ病に現れる精神的な症状は、大元の原因がストレスである場合が多く、多くの場合、精神・身体両方の症状が現れるため、厳密に区別して診断することが難しいのです。
最近はネット上でもうつ病のセルフチェックなどが簡単に出来たりしますが、これらいずれかの病気の疑いがある場合は、自己判断せず、専門医の診断を受けることをお勧め致します。
成長期の子どもが自律神経系を乱すと起こる起立性調節障害とは
成長期の子ども、特に女子に多く起こる『起立性調節障害』という病気があります。これは自律神経系の乱れ等によって、起立時に血圧がうまく調整することが出来ないために、立ちくらみやめまい、貧血、ひどいときには失神などを起こす病気です。
起立性調節障害のもう一つの特徴として、朝起きるのが苦手である、ということがあります。これは朝になると本来は働くべき交感神経系が、自律神経系が乱れてしまっているために、十分に働かず、脳や体が覚醒することが出来ず、本人の意志では起きることが出来ないために起こると言われています。また、朝起きられないために学校に通学することができず、不登校や引きこもりに繋がる、と言った点もこの病気が抱える社会的な問題のひとつです。
ほとんどのケースでは、成人をする頃には自然と症状が収まるか改善しますが、稀にその後も症状が引き続き起こることがあります。こうした病気が増えている背景には、現代社会そのものが、自律神経系を乱しやすい環境であるということが言えるのではないかと考えています。