うつ病の原因―グルタミン酸仮説

うつ病は、原因が完全には特定されていない疾病です。 うつ病のほかにも、多くの精神疾病も同様に原因が特定されていません。人間の脳の働きは複雑なため、原因を特定するのは容易ではないのです。

うつ病に関する仮説

原因は特定されていないものの、様々な研究が行われ続けており、いくつか原因として有力な仮説があります。現在原因として有名なのはモノアミン仮説というものです。

モノアミン仮説とは、簡単にいえば「神経伝達物質のうち、モノアミン系に属するセロトニンノルアドレナリンドーパミンが不足したり働きが弱まることがうつ病発症の原因である」という仮説です。

しかし、モノアミン仮説にはいくつかの矛盾点も指摘されており、モノアミン仮説以外の新しい仮説も提唱されています。

グルタミン酸仮説

うつ病の原因の新しい仮説の一つに『グルタミン酸仮説』というものがあります。グルタミン酸はアミノ酸の一種で体内で神経伝達物質としても機能します。神経伝達物質としては、グルタミン酸受容体を介して働き、興奮性の神経伝達物質としてはたらきます。

ストレスによって脳内でのグルタミン酸の放出が高まり、グルタミン酸系の神経伝達が増えると、脳の組織構造に変化が現れ、その結果、シナプスの減少や海馬などの脳容積の減少が起きることが推測されています。

うつ病のグルタミン酸仮説では、グルタミン酸の神経伝達に機能不全が起こっていると言うのが論拠となります。グルタミン酸系の神経伝達は認知機能に関与しており、その他にも気分や不安と言った感情に関与する脳領域においても、グルタミン酸が使用されています。

うつ病では、そうした感情に関与している脳領域が、ストレスによるグルタミン酸の放出増加等による影響から起こる機能不全(シナプスの減少など)によって、障害されていると考えられます。

このようなうつ病の発症メカニズムにおける治療には、グルタミン酸の機能不全の解消や改善が必要とされます。

抗うつ剤SSRIのグルタミン酸作動ニューロンへの作用

SSRIを投与すると、セロトニンなどのモノアミン系の作動ニューロンに作用するだけでなく、間接的にグルタミン酸の作動ニューロンにも作用していることがわかりました。

つまり、SSRIなどモノアミン系に作用する抗うつ剤の効果は、結果としてグルタミン酸系にも作用していたため、治療効果があったと考えられますが、間接的な作用しか無いため、うつ病の初期治療においてSSRIを使用することで寛解に至るのはそのうちのおよそ3割程度であると言われています。

グルタミン酸が様々な疾患へ関与している可能性

うつ病の他にも、神経伝達物質としてのグルタミン酸は様々な疾患に関与している可能性が指摘されています。

グルタミン酸の関与が疑われる主な疾患
てんかん,統合失調症,自閉症,強迫性障害,うつ病,アルツハイマー病,ALS,緑内障,片頭痛

うつ病や統合失調症などの精神疾患の一部は、「グルタミン酸トランスポーター機能異常症候群」というグルタミン酸トランスポーターの機能の異常が原因であると考えられています。



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