ドーパミンは快感、やる気、学習能力、運動機能や記憶力といった働きを司る「報酬系」と言われる神経伝達物質です。ドーパミンは、ストレスホルモンとして知られる、「ノルアドレナリン」や「アドレナリン」の前駆体でもあります。ドーパミンは「セロトニン」、「ノルアドレナリン」と並んで、体内で特に重要な役割を果たしている三大神経伝達物質と言われています。

ドーパミンの効果と働き

ドーパミンは、生存するための意欲(ご飯を食べたり仕事をしたり)や、過去の記憶や経験から学習する能力といった、生物が生きる上で必要不可欠な機能を担っています。ドーパミンの基本的な作用は、

  1. 何らかの行動をしたときに、ドーパミンが分泌されることによって、脳に快感を与える
  2. 脳は一度経験した快感を記憶し、再びその快感を得るための意欲(モチベーション)を生じさせる
  3. さらに効率よく快感を得るために学習し、その行動の精度を向上させようとする

といった流れで働きます。

ドーパミンの主な効果と働き
快感を与える/意欲を向上させる/物事への執着を生む/動機付け/モチベーションアップ/学習能力の向上/記憶力の向上/集中力の向上/疲労感の減少/抗ストレス作用/運動機能の制御

ドーパミンは快感から意欲を生み出す

何かに成功したり褒められたり感動したりすると、「気持ちいい」「嬉しい」と言った感情とともに、ドーパミンが分泌されて快感を得ることが出来ることから、その快感という報酬を繰り返し得ようとする意欲が生まれます。

ドーパミンは快感という報酬から意欲を作るホルモンであり、時間を忘れて好きなことを勉強したり、ゲームに没頭したり、より良い記録を目指して努力したり出来るのは、物事を達成したときにドーパミンが快感という報酬を与えてくれるおかげなのです。

ドーパミンと学習効果

ドーパミンには、過去に快感を得ることが出来た経験を記憶する作用もあります。快感の有無から、経験したことを好き嫌いのような形で区別して記憶し、好きなことはより積極的に、嫌いなことは回避するように、次回以降の行動に反映しているのです。これは言わば経験や行動を学習しているということです。

「好きこそものの上手なれ」ということわざがあるように、好きなことをするときはドーパミンが分泌されて、積極的に取り組むことが出来るため、学習やスポーツにおいて、好きな教科の得点や運動の成績は伸び、逆に苦手な教科や運動は、やる気が起きず苦手であり続ける傾向があります。

学習の得手不得手が学習意欲に関わることからも、勉強やスポーツなどの学習効果にもドーパミンが関わっていると言えます。

尚、苦手な教科や運動であっても、努力や訓練を重ねると、その経験の中から「やりがい」という報酬を得て、ドーパミンを放出することが出来るようになることが分かっており、苦手なことでも努力は無駄ではないと言えます。

ストレスとドーパミン

ドーパミンは「快感」から意欲を生み出す神経伝達物質で、「不快感」であるストレスとは対極の関係にあり、ストレスを打ち消してくれる性質を持っています。

ストレスを感じた時、ノルアドレナリンやコルチゾールといったストレスホルモンが分泌されます。ストレスはドーパミンのほか、脳内で分泌されている神経伝達物質やホルモンの分泌を抑制し、心身に悪影響を生じさせます。

逆に、ドーパミンの効果がストレスに打ち勝つような状況では、ストレスの悪影響は生じにくくなります。つまり、生活の中でドーパミンをうまく分泌させることができれば、ストレスを感じることの少ない生活を送れるというわけです。

ドーパミンと依存症

ドーパミンの分泌には快感を伴うため、ある意味で依存性や中毒性があります。人はドーパミンが分泌された過去の経験を記憶して、それを繰り返し行いたいという強い衝動が生まれます。

衝動は、それが行えなくなるとストレスになります。代表的な例として、タバコを吸うとドーパミンが分泌されて、吸わずに時間が経過するとイライラ(ストレス)する、というのがあります。つまり、ドーパミンが分泌された時はストレスが減るものの、ドーパミンが分泌できないことがストレスになることがあるのです。

さらに、そうした衝動が強いと依存症にもなり得ます。

タバコやアルコール、ギャンブルを始めとした「○○依存症」と言われる症状の多くは、ドーパミンの分泌とドーパミンへの渇望が原因であると言われています。また、ドーパミンが暴走する原因として、セロトニンなどの神経伝達物質の不足などが考えられます。

運動機能の制御

ドーパミンはアセチルコリンとともに脳内で運動機能の制御に関わっており、ドーパミンが運動の抑制、アセチルコリンが運動の促進を担っています。

運動機能に障害が現れる特徴を持つパーキンソン病では大脳基底核の中にある「線条体」という部位のドーパミンの量が不足することで、ドーパミンとアセチルコリンのバランスが崩れ、その結果、無道・固縮・振戦と言ったパーキンソン病特有の運動症状が生じると考えられています。

幻覚・妄想などの統合失調症の症状はドーパミンの過剰分泌が原因であると言われています。

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