アルコール依存症とは飲酒の量や時間などを自分でコントロールすることが出来ず、家族や仕事、趣味などよりも飲酒を優先させてしまう状態で、一種の「コントロール障害」であると表現されます。
過去にはアルコール中毒アル中とも呼ばれていました。

アルコール依存症とは

アルコール依存症になるとアルコールを求める強い欲望や強迫観念を伴い、アルコールを絶つ、量を減らすなどすると離脱・禁断症状が起こります。
アルコール依存症は連続かつ多量のアルコール摂取行為を繰り返し(連続して)行う事で、幾つかの段階を経て重症化していきます。
アルコール依存症はタバコのような依存症状とは異なり、肝臓障害などの健康問題だけでなく、うつ病や不眠症といった精神障害が合併し、自殺、事故、家庭内暴力(DV)、家庭崩壊、就労困難、失業、借金など多くの社会問題にも関係しています。

近年の日本では、うつ病不眠症などの精神障害を抱える人が増加していますが、このような精神疾患の増加の影にアルコール依存症が密接に関わっていると考えられています。
日本国内のアルコール依存症の患者数は、200万人ほどいると言われており、特に女性や高齢者のアルコール依存症者の増加割合が多いといいます。

アルコール依存症の発症後は自分で飲酒量や飲酒する時間をコントロールすることは不可能に近いとされており、たとえ一定期間アルコールを絶つことができても、その後ひとたびアルコールを口にするだけで、簡単に依存状態に舞い戻ってしまいます。
以前はアル中などと呼ばれ、本人の意志が弱い、人間性の問題だ、などという本人の人格や性格が悪いからだという考え方が一般的でしたが、最近では精神疾患の一つとして医療による治療が必要であると考えられています。

アルコール依存症の原因

アルコール依存症を発症する直接の原因は、言うまでもなく多量の飲酒です。
ただし、多量の飲酒をする人が全てアルコール依存症になるわけではなく、同じ量を飲んでいても発症には幾つかの要因による個人差があります。
ビールでもワインでも、日本酒でもウイスキーでもシャンパンでも、たとえカクテルであっても、お酒はお酒ですので、度数が低くても飲み続ければ依存症になり得ます。
アルコール依存症発症は、50~60%程度は遺伝的要因であり、残りが職場や家庭など、環境要因であると考えられています。

アルコール依存症の遺伝要因としては、 肝臓でアルコールを分解・代謝する酵素の遺伝子のタイプや量が、その人の依存症へのなりやすさに影響しています。
また、環境的な要因として、幼児期の体験(虐待など)をはじめ、職場での就労状態や生活環境、不眠症などの睡眠トラブルなど様々なストレスなどがアルコールへの依存度を深め、依存症の発症に影響を及ぼします。

女性は男性よりもアルコール依存症になるスピードが早い

アルコール依存症になるまでの経過は、男性と女性で異なります。
女性は男性よりも、アルコール依存症になりやすい、依存症になるまでの期間が早い、と言われています。
一般的に女性は男性よりも肝臓が小さめで、アルコールの代謝能力が男性よりも低いこと、また女性にはエストロゲンという女性ホルモンが思春期から更年期を迎える間まで分泌され、このエストロゲンが肝臓でのアルコールの分解を阻害する要因となるなど、依存症になりやすい要因があります。

アルコールへの依存は自覚することが難しく、徐々に高まっていきます。
アルコール依存症は突然発症するわけではなく、慢性的・習慣的な飲酒を長年続けることにより徐々に重症化していきます。
男性の場合、習慣的な飲酒を開始してから重度の依存症になるまでにおよそ20~30年かかると言われているのに対し、女性の場合はその半分程度の期間でも依存症になると言われています。

アルコール依存症の症状

アルコール依存症はアルコールへの欲求・渇望を引き起こします。
アルコールへの強い欲求から、飲酒量や飲酒時間などを自分でコントロールすることが出来ず、一度飲みだしてしまうと、飲む前考えていたよりも、長く飲み続けてしまう、一杯だけ、と決めていたのに、より多く飲んでしまうなど、自分をコントロール出来ない状態になってしまいます。

多量飲酒による主な疾患・合併症
不眠症
うつ病、不安障害、パニック障害、統合失調症などの精神疾患
・呼吸困難、不整脈、心筋症
・肝臓障害(アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変など)
・脳神経障害(ウェルニッケ脳炎、コルサコフ症候群、アルコール小脳変性症、多発神経炎など)
・糖尿病

飲酒を物理的に絶つと、身体的・精神的に以下のような様々な離脱・禁断症状が現れます。

軽~中等症 自律神経症状 手のふるえ、発汗(とくに寝汗)、心悸亢進、高血圧、嘔気、嘔吐、下痢体温上昇、さむけ
精神症状 睡眠障害(入眠障害、中途覚醒、悪夢)、不安感、うつ状態、イライラ感、落ち着かない
重症   けいれん発作(強直間代発作)、一過性の幻聴、振戦せん妄(意識障害と幻覚)
アルコール依存症の人の心理的特徴
アルコール依存症の心理的特徴として、「否認と自己中心性」が挙られます。
本人がアルコールにおける問題を認めない、軽視する状況、嘘をついたり、ふてくされる、屁理屈を言うなど状態を否認と言います。
また、物事を自分の都合の良いように解釈し、他人への配慮をしないようなことを自己中心性と言います。
こうした心理的特徴は、本来その本人が持っていた性格などからくるものではなく、飲酒を継続するための口実として、依存症に陥る過程で形成される心理状態である場合が多いとされています。

アルコール依存症による不眠やうつ病の発症プロセス

昔から「酒は百薬の長」という言葉が示すように、お酒は我々の生活の中で万能の薬のように扱われ、睡眠薬の代用品としても広く利用されてきました。
その反面、「百薬の長とはいへど、万の病は酒よりこそ起れ」(徒然草〔1331頃〕一七五)という言葉もあり、万病の原因ともなり得るとされてきました。
近年増加する、うつ病不眠症などの疾患とアルコールは密接な関わりが指摘されています。

中々眠れないときに、ビールを一杯飲むとぐっすり寝れた、という経験を一度すると、その次の日もアルコールに頼るようになり、いつしかアルコールなしでは眠ることができなくなっていくことがあります。
この過程で、初期の不眠症が発生することがあると考えられます。

アルコールを摂取し続けると、人の体はアルコールに対する耐性ができるため、徐々に酔いにくい体質になっていき、最初はビール一杯で寝付けていたのに、いつか二杯、三杯と飲んでも寝付けなくなり、次第に深酒するようになってしまいます。

日常的で多量のアルコール摂取は、アルコールへの依存度を高めると共に、眠りの質を低下させてしまいます。
眠りが浅く、睡眠時間も短くなり、レム・ノンレム睡眠のリズムが不規則になってしまいます。
アルコールなしでは寝付くことができないため、さらに多量のアルコールを飲み、そのことがさらに睡眠の質を一段と悪化させる、という悪循環に陥ります。

  1. 中々眠れない
  2. 寝る前にビールを一杯飲むとよく眠れたので、毎日飲むようになる(習慣化)
  3. アルコールへの依存度と、アルコールへの耐性が増加(酔いにくくなる)
  4. 酔いにくくなってビール一杯では眠れなくなったので、飲酒量を増やす。
  5. 眠りの質が低下(眠りが浅く、時間も短くなる。)
    しかし、アルコールなしでは眠れないので量をさらに増やしてしまう。
  6. アルコールへの依存度と耐性がさらに増加。
  7. アルコールへの依存が高まり、眠る前以外でも、いつでもどこでもアルコールが飲みたくなり、毎日多量飲酒してしまうようになる。 (アルコール依存症に)
  8. さらに眠りの質が低下し、アルコールを飲んでも眠れなくなる。
    不眠症に)
  9. 以下、悪循環を続けるうちに、様々な離脱症状、またうつ病や肝臓障害といった、様々な身体疾患・精神疾患・合併症が発生し、アルコールへの依存から仕事(失業、就業困難)や日常生活(家庭不和、DVなど)にも影響が出るようになる。

アルコールの依存性はかなり強力で、離脱症状も他の依存症に比べても強力なため、依存から抜け出すのが非常に困難だと言われています。
このような悪循環に陥る前に、医師に相談し、断酒をして睡眠薬を処方してもらうなど、適切な治療を受ける必要があります。