セロトニンは脳内の神経伝達物質で、不安や怒りなどネガティブな感情を抑えて、精神バランスを安定させる作用があります。家に引きこもると、いくつかの理由でセロトニンが不足しやすくなり、イライラ、悲しみ、抑うつなどの感情が暴走しやすくなります。

引きこもるとセロトニンが不足する理由

一日中家に引きこもり、たまに外出するときは夜中の人が寝静まった後。こうした生活を続けると、知らず知らずのうちにセロトニン神経が弱くなり、セロトニンを分泌する力が衰えてしまいます。

引きこもりでセロトニンが不足する主な理由は以下の様なものです。

運動不足
セロトニンは血圧の上昇や呼吸、咀嚼などの無意識で行う不随意運動と言われる運動をコントロールしています。また、歩行や起立状態(姿勢)の維持、顔の表情筋の維持などもセロトニンが作用します。

引きこもりが続くと、どうしても運動不足になりやすく、一日のうちでほとんど歩かない日もあります。自分の部屋で過ごすとゴロゴロと寝転がったり、姿勢が悪くなりがちです。人と面と向かって話すことも少ないため、顔の表情を変えることも少なくなります。

家の中にいてこうしてほとんど歩くことが無く、姿勢も悪く、表情の変化もない。こうした生活を送ると、セロトニン神経が使われる機会が減ってしまい、セロトニン神経は衰えていってしまうのです。

日光不足
セロトニンは日の光に反応して分泌が促進される物質です。カーテンを閉め切った部屋の中で一日中過ごし、たまに外に出るときも夜中ばかりでは、日の光を浴びる機会がほとんど無いため、セロトニンの分泌が促進されません。

また、部屋のなかでも電灯などの明かりを付けていれば問題ないのでは?と思われるかもしれませんが、人工の明かりでは太陽の光の明るさには遠く及ばず、セロトニン神経を活性化させるには至りません。

コミュニケーション不足
人は社会を築いて生活する生き物で、社会の中で行きていく上で、人との会話や触れ合いなど、コミュニケーションは欠かせません。

人と人とのコミュニケーションは動物で言うところのノミ取りや毛繕いなどの、『グルーミング』という行為に当り、こうした行為がストレスを癒やしたり、他者との間に信頼性を築いて、安心感を得ることにつながっています。

グルーミングを通じて人はセロトニンやオキシトシンと言った幸せホルモンの分泌が促進されます。ところが、部屋に閉じこもって人とのコミュニケーションを断ってしまうと、セロトニンやオキシトシンの分泌が促進されにくくなり、他人への思いやりや、気遣いなどが出来ない、貧弱な心になっていきます。

引きこもっていても、パソコン上で他者とコミュニケーションを取ることは可能ですが、チャットや掲示板への書き込みなど、人と直接話さないようなコミュニケーションのとり方では、セロトニンやオキシトシンの分泌は促進されません。

セロトニン不足を防ぐには

当然、最適解は引きこもりをやめて、外に出ることなのですが、それが出来るなら苦労はしません。少しずつ出来ることからセロトニン不足を防いでいくには、以下のようなことをお試しください。

カーテンは開ける
日中はカーテンを開けて、部屋の中に自然な太陽光が入るようにしましょう。同時に窓も開けると、換気もでき、気分転換にも適しています。

カーテンを開けると眩しすぎる場合は、レースカーテンをしておくと、光が緩和されてちょうど良い塩梅になるでしょう。日光を浴びると、セロトニン神経が活性化されるだけでなく、体内時計も整いやすくなり、引きこもると乱れがちな生活リズムを整えて、昼間に外出する一歩を踏み出しやすくなります。

また、朝になったら自然と日光が差し込むように、夜寝るときはカーテンを開けておくのも有効です。

スクワットをする
家の中でも出来る運動で、なおかつセロトニン神経を活性化することが出来るのがスクワットです。スクワットは、歩行やサイクリングなどと同じく、セロトニン神経を活性化する作用がある『リズム運動』と言われる、一定のリズムを刻む運動で、続けることでセロトニンを増やす効果が期待できます。

下階に騒音などの心配がない場合は、その場で足踏みする運動や、踏み台昇降運動などもリズム運動になり有効です。これらの運動ができない人は、食事のときにものをよく噛むように心がけてみて下さい。物を噛むこともリズム運動の一種です。

また、腹式呼吸で意識的に呼吸を整えることでも、セロトニン神経を活性化する効果が期待できます。

人と話す
引きこもりの場合でも、チャットや書き込みなどの、言葉を発しないコミュニケーションだけではなく、スカイプのようなコミュニケーションツールを使えば、他者と会話をすることが可能です。また、ペットを買っている場合は、ペットを可愛がってあげるだけでも、グルーミングの効果が期待できます。

人とのコミュニケーションは、その人との間に共通の趣味を見出したり、信頼感を得たりすることができ、そうした中でセロトニン神経も活性化されやすくなります。

セロトニンの不足を防ぐには、他にもたくさんの方法があります。詳しくは『セロトニンを増やす方法』をご覧ください。

不足しやすいのは引きこもりだけではない

運動不足や日光不足、コミュニケーション不足などによってセロトニン不足を起こすのは、引きこもりだけではありません。例えば以下のような場合でも、運動不足や日光不足など、セロトニンの不足を引き起こす条件が揃ってしまいます。

  • 夜勤で働く人
  • 車で通勤している人
  • 部屋の中でデスクワークをする人
  • 在宅ワークをする人

こうした職種の人は、日光不足や運動不足になりやすく、知らない間にセロトニンが不足していく可能性があります。小さなことで激しく苛ついたり、涙が出てくるような場合はセロトニンが不足してきたサインかもしれませんので、特に注意が必要です。

セロトニンの不足は、放置しておくと、やがてうつ病自律神経失調症不眠症、生活習慣病など様々な疾患にもつながりやすいため、自分ではなく、ご家族が引きこもりがちな場合にも、同様に注意が必要です。

セロトニン不足のチェックアプリもお試しください。

子どもの引きこもりと起立性調節障害

学校でのいじめ、悩み、ストレス、病気など、様々な理由から不登校になり、やがて引きこもりになってしまう子どもがいます。

子どもの場合でも、引きこもることでセロトニンの不足が起こり、それによってさらに内へ内へと閉じこもってしまう、負の連鎖が起こってしまい、将来社会へ出ていくのが困難になってしまう可能性もあります。

最近増えているのが、起立性調節障害によって起こる不登校と、そこから始まる引きこもりです。起立性調節障害は成長期の子どもに起こりやすい、めまいや立ちくらみなどの症状を伴う障害です。重度の場合、体を起こしていることが困難なため、学校での授業を受けることが難しくなることと、朝起きることが困難なため、不登校になりやすい障害なのです。

起立性調節障害の症状は、多くの場合、成長とともに収まっていき、成人する頃にはほとんどの場合で症状が残らないと言われています。ところが、不登校によって進学を諦めてしまうと、その後の社会との接点を見つけることが難しくなり、そのまま引きこもりになってしまうケースもあるのです。

社会へ参加する意欲も、セロトニンが充足してこそ湧いてくるものです。セロトニンが不足したままの状態では、外に飛び出す勇気も湧いてきません。何らかの事情で、引きこもりが続いてしまって場合、そこから抜け出すにはセロトニンの不足を解消することも重要になってくるのです。

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