全ての生命の源である太陽。太陽光を浴びる日光浴には様々な効果があることが知られており、セロトニンを増やす方法の一つとしても数えられます。どのような経緯や方法で日光浴によってセロトニンが増えるのかをご紹介します。
目次
自律神経系や体内時計が整ってセロトニンが増える
交感神経系の機能が改善する
日光浴で太陽光を浴びると、自律神経系のバランスを整える効果が期待できます。特に、交感神経系はセロトニンの働きに直結しており、太陽光は脳の覚醒と交感神経系を刺激する強いシグナルで、日光浴をすると交感神経系が刺激され、そのことによってセロトニン神経の働きが活性化してセロトニンを増やす効果があります。
体内時計も整う
人の体内時計は、地球の自転、つまり「日の出」や「日没」といった、太陽の昇降に合わせて形成されたものです。体内時計を正しく保つためには、太陽光はもっとも重要な情報であり、自律神経系は目から入る太陽光の刺激などの情報を体内時計に伝える伝達役です。
体内時計は脳内にある中枢時計と、体の末梢神経(皮膚など)にある末梢時計からなります。自律神経系は、中枢時計から末梢時計、また、末梢時計から中枢時計へと交互に情報を伝える伝達役です。
太陽光を浴びることで自律神経系のバランスが整うと、目から入る光や、食事による胃腸の働き、体温の変化といったといった末梢時計からの刺激が中枢時計により正確に伝わるようになり、体内時計を整えるのに役立ちます。
メラトニンの分泌が促される
朝に日光浴で太陽光を浴びると、交感神経系が刺激されて、セロトニン神経の働きも活性化されます。
このとき同時に体内時計もリセットされ、睡眠ホルモン『メラトニン』の分泌に予約スイッチが入ります。メラトニンの分泌は、朝日を浴びてセロトニンが分泌され始めてから、その後およそ14~16時間後に最高潮になり、その時間になると自然の眠気を催すという、言わば睡眠の時限スイッチ的な特徴をもっています。
メラトニンが十分に分泌されていると、睡眠がより深くなり、睡眠の質が向上することが分かっています。睡眠の質が向上すれば、ストレス解消や、翌朝の寝起きをよくする効果が得られるため、生活リズムが整って、翌朝起きたときにセロトニン神経が働くのに役立ち、日中のセロトニンの分泌を増やす効果が期待できます。
ストレスの改善によりセロトニンが増える
日光浴をすると、セロトニンの分泌が活性化されるだけでなく、体内時計や自律神経系が整って、睡眠が深くなったり、抗ストレス作用のあるストレスホルモン(コルチゾール)の分泌も適切に管理される様になるため、ストレスそのものを解消させる効果が期待できます。
ストレス解消の凡例として、例えば、自律神経系が乱れていると、寝付きが悪くなるなど不眠の傾向が現れますが、不眠はストレスの増加に繋がります。そのままストレスを放置してしまうとうつ病などにも繋がりますが、日光浴で自律神経系を整えておけば、不眠症状が改善して、さらに睡眠が深くなることによってストレスを解消することができます。
ストレスはセロトニン神経を衰弱させてセロトニン不足が起きる原因となりますが、日光浴でストレスが減ることで、セロトニンを増やすことができます。
腸内環境の改善によりセロトニンが増える
腸内環境が悪く下痢や便秘を繰り返していると、腸内に生息する腸内細菌が減ってしまいます。
脳内で働く神経伝達物質であるセロトニンはトリプトファンというアミノ酸から合成されますが、トリプトファンが脳内でセロトニンに合成される前に、腸内でたんぱく質をトリプトファンへと分解して吸収するのをサポートしているのが腸内細菌です。
つまり、腸内環境が悪くて腸内細菌が減ってしまうと、脳内のセロトニンも減ってしまう可能性があり、逆に言えば腸内環境が良いと脳内のセロトニンも増えやすくなると言えます。
『ストレスで胃に穴が開きそう』などというように、ストレスは腸内環境の良し悪しに大きな影響を与えます。日光浴によりストレスが改善すると、腸内環境の改善も期待できます。ストレスが改善すると、腸のぜん動運動を活性化させ、便秘や下痢の改善に繋がり、腸内環境が改善します。
また、自律神経系は内臓の働きを制御しているため、日光浴によって自律神経系が整うと、腸内環境を整えるのに役立ちます。
さらに、日光浴により合成が促進されるビタミンDにも、胃腸の機能を活性化させて、腸内環境を整える効果があることが最近明らかになってきています。
このような理由から、日光浴によりストレスの改善、自律神経系の調節、ビタミンDの合成が行われることで、腸内環境が改善すれば、脳内のセロトニンを増やす効果が期待できます。
セロトニンを増やす日光浴の仕方
▼一回あたりの時間
太陽光には有毒な紫外線が含まれているため、長時間の日光浴は、肌トラブルなどの悪影響が増える可能性もあります。夏場は一日15分程度、冬場は少し長めで20~30分程度の時間が最適です。
▼時間帯
強い覚醒効果を持つ青い光である『ブルーライト』が太陽光に多く含まれる、午前中から昼過ぎまでの時間帯が日光浴に適した時間です。また、朝起きたときに太陽光を浴びることで、体内時計のリセットをすることが出来るため、自律神経系を整える目的の場合は、起きた直後に日光浴をするのがお勧めです。
▼光の浴び方
日光浴でセロトニンを増やすには、目から入る光の強さが特に重要です。しかし太陽光を直接見ることは非常に危険ですので、ガラス越しに部屋に差し込む光やレースカーテン越しなどの光で十分です。屋外であれば、地面からの照り返しなど間接的な光で眩しすぎないように調節しながら日光浴をしましょう。
日光浴の効果はほかにも
日光浴にはセロトニンを増やす効果以外にも、様々な効果があることが分かっています。以下に日光浴の効果を簡単に紹介します。
▼ビタミンDの合成
日光浴の効果で特に大きいのがビタミンDの合成です。人の人体機能維持に欠かせない重要なビタミンであるビタミンDは太陽光によりおよそ9割、食事などにより残りの1割が合成されているとされます。
→免疫力の向上(ビタミンDには免疫作用がある)
→アレルギー改善効果
→骨の再生・強化、骨粗しょう症の予防
→コレステロールを減らす(ビタミンDの合成にコレステロールが使用されるから)
→太りにくくなる
▼その他
・乾癬予防
・ホルモンの分泌促進(エストロゲン、ソリトロール、メラトニン)
・インスリンの分泌を促し血糖値を下げる
・血圧を下げる(日光浴で血中の一酸化窒素=Nitric Oxide (NO)が増えるため)
・赤外線による体温上昇で新陳代謝がアップ
★より詳しくは『日光浴で生活習慣を改善』をご覧ください。
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