以前は好きだったことも最近は興味が涌かない。仕事中ボーっとしてしまい集中できない。こうした症状が起こる原因には、脳内のセロトニンが不足している可能性があります。

セロトニンとは

セロトニンは脳内で働いている神経伝達物質のひとつで、ノルアドレナリンやドーパミンと並んで、心身の健康に大きな影響を持つ物質です。

セロトニンは脳の様々な中枢機能、睡眠、食欲、性欲、情動、記憶、学習などに作用を持つため、セロトニンが不足すると、こうした中枢機能の機能低下が起こる可能性があるのです。

セロトニンが不足したときの症状

セロトニンが不足したとき、徐々に感情や性格に変化を及ぼすことがあります。

以前は好きだったことに興味が持てなくなった、ぼーっとしてしまう、やる気が出ない、イライラする、怒りやすくなった、すぐ悲しくなる、などの変化は、セロトニン不足の兆候です。

セロトニンが不足する原因

ストレス
現代人にとって、セロトニンが不足する最も大きな原因はストレスです。特に人間関係のストレスが深刻で、学校、会社、家庭、どこに行ってもストレスが満ち溢れていて、私達はストレスから逃れて生活することが出来ません。

持続的にストレスに晒され続けると、脳内にあるセロトニン神経がだんだん衰弱していき、セロトニンを合成する力も衰えていって、いつしかセロトニンが不足してしまうのです。

生活リズムの乱れ
セロトニンは体内時計自律神経系の働きと合致して分泌される性質があるため、人が本来もつ体内時計である、朝起きて夜眠る生活から外れた、不規則な生活リズムで生活をおくると、セロトニンの分泌リズムも乱れやすくなり、セロトニン神経が働きにくくなっていきます。

睡眠不足
セロトニンは睡眠時には分泌が止まりますが、睡眠によってストレスが解消されるため、しっかりと睡眠を取っていれば、翌朝もセロトニンの分泌が正常に行われやすくなります。

ところが睡眠が不足すると、ストレスが溜まりやすくなり、朝起きてもセロトニンが分泌されにくく、起きるのがつらい、ベッドから出れない、と言ったことにつながります。

食事の乱れ
セロトニンの材料はトリプトファンという必須アミノ酸で、トリプトファンは体内では合成することが出来ない物質なので、食事から摂取する必要があります。

食生活が乱れていると、栄養バランスが偏って、セロトニンの材料となるトリプトファンが不足してしまう場合があるのです。

トリプトファンは肉や魚などの、動物性タンパク質や豆や穀類など、植物性タンパク質に含まれる物質です。普通の栄養バランスで食事を取っていれば、まず不足することはありませんが、ダイエットや、好き嫌い、極端な偏食などを繰り返すと不足する可能性があります。

特に女性はダイエットのために肉や炭水化物の摂取を嫌がる傾向にありますので、ダイエット時は栄養バランスに注意が必要です。

セロトニン不足が続くと、うつ病や不眠症に

セロトニンの不足が起こるような生活を続けると、やがてうつ病や不眠症などの精神疾患を引き起こすことになります。

うつ病は、脳内の神経細胞の働きに障害が現れることで発症すると考えられており、障害が起こる原因のひとつとして考えられているのがセロトニンの不足です。

また、不眠症は、セロトニンによって合成される睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌減少で起こりやすくなります。セロトニンが不足すればその分メラトニンの分泌も減少して不眠症が起こります。

その他にも、セロトニンの不足によって起こる病気は、自律神経失調症や様々な生活習慣病など数え切れません。

セロトニン神経を鍛える

セロトニン不足を防ぐ最も良い方法は、ストレスから完全に遠ざかることです。しかし、現代社会でストレスを完全に無くすことは現実的には不可能です。

従って、私達がすべきことは、日頃からセロトニンが不足しないようにセロトニン神経を鍛え上げることです。セロトニン神経を鍛えるのは、いくつかのコツがあり、誰でも実践することが出来ます。詳しくは『セロトニンを増やす方法』をご覧ください。

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参考文献
厚生労働省 e-ヘルスネット – セロトニン
国際生命情報科学会誌 – セロトニン神経活性化の臨床的評価:脳波α2成分の発現
NCBI – PMID:1752859
NCBI – PMID:25108244
Wikipedia – セロトニン