23115843465_979ab68a53

セロトニンは自律神経系と密接な関わりのある神経伝達物質です。セロトニンが不足すると様々な悪影響が生じることが知られていますが、その一つに免疫力の低下があります。今回はセロトニン不足で免疫力が低下する理由などをご紹介します。

腸内環境の悪化

人の腸は体外から入ってきた栄養素を体内に取り入れるために働きますが、同時に口から入ってくる細菌やウイルス、有毒物質なども腸へと到達します。

こうした人体に有害な物質が体内へと侵入するのを防ぐため、腸内には人の免疫機能のおよそ6割が集中しています。腸の免疫機能が正常に働くかどうかは、腸内環境によって左右されるため、腸内環境が悪化すると、その分腸の担っている免疫機能が低下して、全身の免疫力が低下しやすくなるのです。

セロトニン不足は腸内環境が悪化する原因となります。

セロトニンは交感神経系が適切に働くように自律神経系のバランスを取る作用があります。そのため、脳内のセロトニンが不足すると、自律神経系の働きが乱れて、交感神経系が興奮しやすくなります。

交感神経系が興奮すると胃や腸などの消化器官の働きを抑制してしまい、胃腸の消化活動が停滞してしまい、便秘や下痢を起こしやすくなったり、食べ物の栄養素を吸収する力が弱くなって、腸内環境が悪化してしまうのです。

また、人の腸内には多くのセロトニンが存在しており、腸のぜん動運動に関与しています。セロトニンの減少は腸のぜん動運動の異常にも繋がり、これも便秘や下痢を起こして腸内環境が悪化する原因ともなります。

このようにセロトニンの不足によって腸内環境が悪化すると、免疫力が低下します。

体温の低下

人は風邪を引くと熱を出します。これは免疫作用によるもので、体温が高いほうが免疫力も高く保たれます。ところが、セロトニンが不足すると、自律神経系の働きが乱れて、体温が上がりにくくなり、平熱が常時36℃未満の『低体温』になってしまうことがあります。

体温が低下すると、その分免疫力が低下します。一説には、平均体温が1℃下がると免疫力は30%以上も低下すると言われています。

また、ガンにかかるほとんどの人の体温は35℃台だとも言われており、体温が低ければその分免疫力が低下して、ガンのような重篤な病気にも罹りやすくなるとされています。

こうしてセロトニン不足によって起こる体温の低下は、免疫力を低下させます。

メラトニンの減少

脳内のセロトニンは、睡眠ホルモンである『メラトニン』の合成に必要な物質です。メラトニンはセロトニンから作られるとも言えます。

そのため、セロトニンが不足すると、その分メラトニンの分泌量も減少して、不眠症状が現れることがあります。これはセロトニン不足で抑うつ症状を抱える人が、同時に不眠症状を抱えるケースが多いことからもわかります。

睡眠中は成長ホルモンが分泌されて、体の細胞を再生、修復してくれる重要な時間です。免疫機能を担う免疫細胞も、睡眠中に再生されたり修復されています。

メラトニンが減って、不眠症状が現れれば、その分睡眠時間が減少して、成長ホルモンの分泌量も減少してしまうため、体の細胞がボロボロのまま、免疫力が低下した状態が続いてしまいます。

メラトニンの減少によって起こるのは不眠症状だけではありません。

メラトニンは、細胞の免疫力を強化する作用を持っており、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)を活性化させてくれます。また、メラトニンには強い抗酸化作用があり、体内の活性酸素や一酸化炭素など、フリーラジカルと呼ばれる物質を分解、除去する働きがあります。

NK細胞の活性化による免疫力の増強と、フリーラジカルの除去による細胞の酸化防止によって、ガンや細胞酸化によって生じる動脈硬化などの発生を、メラトニンが抑制してくれるのです。

以上のように、セロトニンが不足すると、メラトニンも不足しやすく、それによって免疫力が低下することが考えられます。

ストレス増加

セロトニンの不足で起こる免疫低下のもう一つの原因はストレスです。

セロトニンは強い抗ストレス作用を持っており、セロトニンが充足している人は、その抗ストレス作用によって、多少のストレスなら感じない、スルーできる、我慢できる、などストレスから身を守ることが出来ます。

ところが、セロトニンが不足すると、抗ストレス作用が損なわれ、ちょっとストレスを感じただけでも、異常に反応してイライラしたり、大声で喚き散らしたり、くよくよして泣き出したりと、ストレスへの耐性が失われます。

コルチゾールの増加

ストレスが増えると、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が増加します。

コルチゾールは、副腎皮質で作られるステロイドホルモンの一種で、抗炎症作用などを持ちます。コルチゾールは、ストレスに対抗する働きをする一方、本来、免疫機能のために割り振られているエネルギー消費を、ストレスに対抗するための活動エネルギーとして割り振ってしまうのです。

その結果、免疫機能の働きは抑制されて、免疫力が低下してしまいます。

コルチゾールの免疫抑制作用は、本来は一過性の短期的な作用(例えば、草原で草食動物が肉食動物から逃げるときなど)が主としたものであり、通常は長期的な影響は生じにくい(自然界では慢性的なストレス=慢性的な生命の危機は起こりにくい)のですが、現代社会ではストレスが長期化、慢性化しやすいため、コルチゾールの慢性的な分泌増加が起こりやすく、免疫力も慢性的に抑制されてしまうことがあるのです。

セロトニンによる抗ストレス作用が失われると、コルチゾールの分泌量が増加して、免疫力が低下します。特に慢性ストレスには要注意です。

まとめ

  • セロトニンの不足による免疫力の低下が起こる最も大きな原因はストレスです。
  • 慢性的なストレスを受ければ免疫力が低下して、精神・身体の疾患につながります。
  • 睡眠不足はストレスが蓄積する原因であり、免疫力が低下する原因にもなります。
  • (逆に言えば)セロトニンが充足していれば、免疫力は高く保たれ健康的になれる。
  • セロトニン不足を防ぐには、セロトニンを増やす方法を実践しましょう。

photo credit: National Institute of Arthritis and Musculoskeleta Robert A. Colbert, M.D., Ph.D. , Chief, NIAMS Pediatric Translational Research Branch (PTRB) (license)