ものを噛むという動作は、脳のセロトニン神経を刺激します。食べ物を食べるとき、沢山噛んで顎の筋肉を使うことで、セロトニン神経への刺激が増えて、セロトニンを増やす効果が期待できます。今回はものを噛むとセロトニンが増える理由などをご紹介します。
目次
顎の筋肉の働き
ものを噛むときに使われる顎の筋肉、そしゃく筋や頸筋(けいきん)は『抗重力筋』の一種です。
抗重力筋とは、地球の重力に対抗して体が無意識のうちに姿勢を維持するため使われている筋肉のことで、代表的な抗重力筋は、腹筋や背中の筋肉、そして太ももの筋肉などです。
消化器官の入り口である口は、開いたままではウイルスや細菌などの有害な異物が入りやすくなってしまうため、こうした抗重力筋によって、無意識でも自然と閉じるようになっています、下顎を支える筋肉であるそしゃく筋や頸筋もこうした抗重力筋の一つというわけです。
口が開いたままになる悪影響はほかにも色々あります。詳しくは『鼻呼吸と口呼吸』をご覧ください。
抗重力筋とセロトニン
口が自然と閉じるように働く抗重力筋は、セロトニンによって働きが制御されています。そのため、セロトニンが不足すると抗重力筋の働きも悪くなって、猫背になったり口が開いたままになりやすいのです。逆に、日頃からセロトニン神経を刺激して、セロトニンを増やしておけば、姿勢も良くなり、口呼吸も直せるかも知れません。
ものを噛んでセロトニンを増やす
セロトニンを増やす方法は幾つかありますが、今回ご紹介している『ものを噛む』という行為もその一つです。
ものを噛むときに使われる顎のそしゃく筋や頸筋などの抗重力筋は、セロトニンによって制御されていますので、顎の筋肉を積極的に使って脳のセロトニン神経に刺激を送ることで、セロトニン神経が鍛えられて活性化され、セロトニンが増える効果が期待できるのです。
固いものをしっかり噛む
最近は食品の調理技術や加工技術が進み、骨や皮のような固いものは取り除かれた状態で口にすることが出来るようになりました。固いものを食べなくなった結果、ものを噛むという行為自体も以前よりも必要性が薄れてしまい、年々私達の咀嚼回数は減少しているといいます。
咀嚼回数が減ると、その分、顎の筋肉も衰えやすくります。また、咀嚼回数が減る分、セロトニン神経を刺激する頻度も減ってしまいます。
日頃から意識して、固いものを味わってゆっくりと咀嚼することで、セロトニン神経を刺激して、セロトニンを増やす効果が期待できます。
▼アタリメを噛む
アタリメやビーフジャーキー、おしゃぶり昆布(なんだかおつまみばかりですが)など、固くて噛みごたえのあるものを食生活の中に取り入れたり、仕事中のおやつの代わりに食べることを心がけましょう。
▼ガムやグミを噛む
ガムやグミは噛みごたえがあり、特にガムは場所を選ばず長時間噛み続けることが出来るため、顎の抗重力筋を鍛えるのにはもってこいの食べ物です。
▼両側の歯をバランス良く使う
余談ですが、ものを噛むとき、片側の歯でばかり噛むと、そしゃく筋のバランスが悪くなってしまい、最終的には体が左右いずれかに傾いてしまうこともあるため、両側の歯でバランス良く噛む習慣を付けましょう。
吸収率アップでセロトニンが増える
ものをよく噛めば噛むほど、食べ物を細かく砕けるため、胃や腸で食べ物を消化して、吸収する効率が良くなります。
セロトニンの原料となるトリプトファンは、食品に含まれるたんぱく質から合成されるアミノ酸です。したがって、食べ物の消化率が良くなればなるほど、食品からセロトニンの原料を取り出しやすくなり、吸収率が上がれば、セロトニンの原料を効率よく吸収することが出来るようになるため、よく噛むことはセロトニンの原料を増やす効果も期待できるのです。
セロトニンの原料を噛めば一石二鳥
セロトニンの原料であるトリプトファンは、食物に含まれるアミノ酸の一種です。
『たくさんものを噛む』という習慣を付けて、セロトニンを増やそうというのであれば、せっかくならトリプトファンが豊富に含まれた食材を噛んで、効率よく一石二鳥でセロトニンを増やしたいところです。
トリプトファンは、肉や魚、大豆や乳製品など、動物や植物の『たんぱく質』から合成される物質です。固くて噛みごたえのあるたんぱく質、といえば「赤身の肉(ヒレやロース)」や「砂肝」、「鶏の軟骨」など。
また、日本人には馴染みが少ないですが、メジャーリーガーの大好きな「ひまわりの種」には、かなり豊富にトリプトファンが含まれています。ひまわりの種は噛みごたえがあり、おやつなどにも適しています。
ほかには、節分の豆まきでよく使われる乾燥大豆や、おやつとしてもお馴染みのアーモンドやナッツなども噛みごたえとトリプトファン豊富を両立した食材です。
その他、トリプトファンを多く含む食材はこちらをご覧ください。
ストレス解消でセロトニンが増える
メジャーリーガーがガムやひまわりの種をかじって、リラックス効果を得たり集中力を高めているのはよく見る光景です。ものを噛むという行為にはストレス解消効果もあります。
ストレスは、セロトニン神経が減弱する最大の要因でもあります。ものを良く噛んでストレスを解消することは、結果的にセロトニン神経を保全して、まわりまわってセロトニンを増やすことにも繋がるのです。
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