便を構成するのは7~8割が水分で、それより多いと軟便になり下痢になり、少ないと硬便になり便秘になりやすいことが分かっています。
便秘や下痢は腸内フローラを悪化させる原因となり、また腸内環境の悪化が便秘や下痢を招いている場合もあります。
つまり便秘や下痢を防ぐには、腸内環境を整える必要があるのです。

便秘とは

現代の日本人のうち、男性の25%、女性の50%が便秘に悩んでいるとされています。
便秘は慢性化すると様々な疾病の原因となる可能性があります。
近年の日本人女性のガンでの死亡率No.1は大腸がんで、便秘は大腸がんの原因の一つとされます。

良好な排便は1日1回で、それ以下の頻度になると便秘気味であると言えます。
また、排便までの時間が経てば経つほど、便の水分が腸壁から吸収されるため硬い便になり、さらに排便されにくくなる悪循環が生まれてしまいます。

便秘を解消するには、食物繊維を多く摂ることが重要です。
食物繊維は、良好な腸内環境を形成してくれる腸内細菌の善玉菌の餌になり、良好な排便を促します。
また、ヨーグルトなどの乳酸菌飲料も積極的に摂ると良いでしょう。

ただし、腸内環境は人によって違うため、乳酸菌飲料も人によって合うものが異なるので、色々試してみる必要があります。
ヨーグルトなどは2週間程度の期間を1クールとして1つの製品を試してみましょう。

若い女性の間でよく行われる食事制限ダイエットでは、善玉菌の材料になる食物繊維が不足して、便が作られにくくなるため便秘になりやすくなります。

便秘による悪影響

アトピー性皮膚炎や花粉症などになりやすくなる

便秘による腸内環境の悪化は、腸が担っている腸管免疫の機能を低下させてしまいます。つまり、免疫力が低下します。免疫力の低下は、風邪などを引きやすくなるだけでなく、近年日本人の間で急増している、アトピー性皮膚炎や花粉症のような、アレルギー症状を引き起こす原因にもなります。

腸の腐敗を招く

便秘は腸内に便が溜まった状態です。

便秘になると、腸内細菌の悪玉菌が増殖して、腸内を腐敗させます。
また、悪玉菌は発がん物質、アンモニア、硫化水素などの有害物質を発生させます。

大腸がんの原因にも

便秘による人体への悪影響の一つは、こうした悪玉菌によって発生した腐敗物質や有毒物質などが、長い間腸内に留まってしまうことによる健康への影響です。
便秘が原因で発生する重大な疾病の一つに、日本人の間で増え続けている大腸がんがあります。

体臭や口臭の悪化

さらに、悪玉菌が発生させる有害物質は、腸内環境を悪化させて、腸壁の持つバリア機能『腸壁バリア』を損なわせてしまいます。 すると、腸壁から有害物質が体内に吸収され、血中に放出され全身に周り、体臭や口臭を悪化させる原因になったり、肌荒れなどの皮膚トラブル、更には生活習慣病の原因にもなります。
また、そうした有毒物質を解毒するために肝臓が長期間酷使され続けると、肝機能障害を起こしやすくなります。

便秘の原因

食生活の変化
戦前と現代の日本人の食生活を比較すると、現代の日本人はいわゆる食の欧米化によって、動物性のタンパク質の摂取が増え、食物繊維の摂取が減っていることが明らかになっています。
こうした食生活の変化は、日本人の便通事情にも大きな影響を与えています
食物繊維は善玉菌のエサであり、動物性蛋白質は悪玉菌のエサです。
善玉菌は腸内環境を整えるのに対し、悪玉菌は腸内環境を悪化させます。
つまり、食の欧米化により、腸内環境を悪化させる悪玉菌を発生させやすい動物性蛋白質の摂取が増え、逆に腸内環境を整えてくれる善玉菌のエサになる食物繊維の摂取は減少してしまっているのです。
生活習慣の乱れ
自律神経系のうち、副交感神経系は胃腸などの消化器官の活動を活発にします。
副交感神経が優勢になるのは、食後や眠る前など、心身がリラックスする時間帯です。
自律神経の働きは、生活のオンとオフを規則正しく取ることで最適に保ちやすくなります。
規則正しい生活とは、例えば朝は同じ時間に起きて、朝食を食べ、トイレに入って排便してから仕事に行き、仕事から帰って食事をして、いつも同じ時間に就寝するような生活です。
ところが、生活リズムが不規則になりやすい現代では、規則正しい生活を送ることは困難です。
生活リズムが乱れると、自律神経系も乱れやすくなって、胃腸の働きも衰えてしまい、正常に排便しにくくなってしまうことがあります。
自律神経が乱れることで起こる症状や疾病の総称を自律神経失調症と言います。
ストレス
ストレスは腸内環境に大きな影響を与える要因です。
脳がストレスを感じると、腸内ではノルアドレナリンが放出し、これが大腸菌など悪玉菌の増殖と、病原性の増加に影響を与えることが分かっています。また、ストレスに反応して放出されるノルアドレナリンコルチゾールといったストレスホルモンは交感神経系を興奮させ、逆に副交感神経系の働きを抑制するため、胃腸などの消化器官の働きは抑制されて排便も抑制されます。
ストレスが慢性的なものになればなるほど、副交感神経系の働きは抑制されるため、便秘や下痢になりやすくなります。
ストレスが原因で起こる便秘や下痢などの排便障害はIBS(過敏性腸症候群)と呼ばれ、ストレスを多く抱える現代人の間で急増している病気です。
腸内のセロトニンの異常
腸内に存在するセロトニンは、腸のぜん動運動に関与しています。
ストレスなど、何らかの理由から、セロトニンの働きに異常があると、ぜん動運動にも異常が出て便秘や下痢になることがあります。

女性が便秘になりやすい原因

便秘をする割合は、男性が25%で女性が50%とされており、女性のほうが圧倒的に多いのですが、それには幾つか原因があります。

女性ホルモンの影響
女性の場合、特に月経前に便秘になりやすい人が多いといいます。 これは、月経前になると女性ホルモンであるエストロゲンプロゲステロンの分泌量が変化して、自律神経の働きを抑制して、腸のぜん動運動が弱くなるためであるとされています。
また、ホルモンバランスは精神状態にも影響を与えるため、ホルモンバランスの乱れが原因で、イライラしたりストレスが溜まると便秘になりやすくなります。
筋力が弱い
男性と比べると、女性はどうしても腹筋や横隔膜の筋肉が劣ってしまいます。 便を輩出する際には、腸でぜん動運動という筋肉の収縮が起こりますが、腸自体には筋肉はついておらず、ぜん動運動は腸の周囲の筋肉によって行われるため、筋力が弱いと便を排出する力が弱くなってしまうのです。

便秘解消法

  • 朝起きたらコップ1杯の水を飲む
    胃腸が水に反応して動き、便意が促されます。
  • 食事回数は一日3食
    食事回数が多いほうが腸への刺激が増え、腸の働きを良くします。
  • 乳酸菌飲料を摂取する
    ヨーグルトなどの乳酸菌飲料や納豆や漬物、チーズ(ナチュラルチーズ)などの発酵食品を積極的に摂取することで、善玉菌を増やすことができます。
  • 食物繊維を摂取する
    食物繊維は腸内細菌のエサとなり、便の材料。
    食物繊維には不溶性(豆類、野菜類)と水溶性(果物類、きのこ類、海藻類)の二種類があり、バランスよく取ることが重要です。
  • オリゴ糖やグルコン酸(はちみつ)を摂取する
  • 肉などの動物性タンパク質を控える
    肉や脂肪など、消化に悪く腐敗する食物は悪玉菌の大好物です。
    ただし、脂肪分やタンパク質は体組織を構成する物質でもあり、全く不要というわけではありませんので、適度に摂取することが望ましいです。
  • 適度な運動
    お腹まわりの筋肉が衰えると、腸のぜん動運動の力が弱くなって便秘しやすい。
    適度に運動して筋肉を刺激することが必要です。
    適度な運動はストレスの解消にも効果的です。
  • ストレスの発散
    ストレスは自律神経の乱れや交感神経の興奮を招き、腸の働きが悪くなる主要因です。

photo credit :Emergency Brake