悪玉菌とは、人の腸内に生息している腸内細菌のうち、『人体に有害な働きをする菌』の総称です。
腸内には無数の腸内細菌が生息しており、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類に大別されます。
悪玉菌が増加すると、腸内に腐敗物質や有害物質を産生し、便臭や体臭、口臭などが悪化する他、アレルギー、生活習慣病やガンなど、多くの疾患の原因にもなると言われています。

悪玉菌が増えてしまう原因

悪玉菌の増加は、腸内環境の悪化に直結します。
悪玉菌が増えてしまうのには、幾つかの原因があります。

・食生活の乱れ
悪玉菌が増える原因の一つが食生活の乱れです。
特に、欧米人のような『肉や脂が中心で野菜が少ない食生活』が悪玉菌を増やす原因となります。
肉や脂は悪玉菌の大好物で、大腸でそれらを餌に悪玉菌は大繁殖し、腸を腐敗させる有害物質を生み出します。
その他にも、アルコール、ファストフード、加工食品、精錬された砂糖や白米などの食材も要注意です。
・運動不足
運動は胃や腸の消化能力の増進に役立ちます。
運動不足になると、そうした消化器官の能力が落ちて、食物の残りカスが大腸に増え、悪玉菌の増加につながってしまいます。
・ストレス
ストレスは、自律神経の働きを乱し、胃腸など消化器官の働きを制限してしまい、消化能力が落ちる原因となります。
また、腸内細菌は脳が受けるストレスに反応して増減することがあります。
ストレスによって腸で放出される『ストレスホルモン』のノルアドレナリンなどが、大腸菌など悪玉菌の病原性を強めることが明らかになっており、腸内環境の悪化に繋がります。
・風邪
風邪などを引いて免疫力が下がると、腸内では善玉菌が減り、悪玉菌が優勢になってしまいます。
また、悪玉菌だけでなく、日和見菌が悪玉菌を味方して病原性を発揮することから、腸内環境をさらに悪化させます。
・抗生物質
感染症の場合などに処方される、細菌の殺菌に効果を発揮する抗生物質は、病原菌と一緒に腸内の在住菌も殺菌してしまいます。
つまり、抗生物質で殺菌されるのは、病原菌や悪玉菌など悪い菌だけでなく、無害な善玉菌や日和見菌なども含まれるため、抗生物質を使用すると既存の腸内フローラに大きなダメージを与えて、その後の腸内環境が大きく変化してしまう可能性があります。
また、抗生物質の乱発は、『耐性菌』という抗生物質が効きにくい種類の菌を生みだす原因となります。
耐性菌の増加は、それを保持する個人のリスクだけでなく、病院や老人ホームなどで集団感染などを引き起こすリスクの増加が、特に抗生物質の使用量が多い先進国の間で危惧されています。

悪玉菌が増える原因となる、腸内環境の悪化について詳しくは『腸内環境が悪化する原因』をご覧ください。

悪玉菌が増えると起こる悪影響

・便秘や下痢
悪玉菌が増え、腸内環境が悪化して最も早く実感するのが、便秘や下痢などの便通異常です。
悪玉菌は腸内に腐敗物質を増やし、また、悪玉菌の餌となるタンパク質や脂肪などは消化しにくく、腸内を移動するスピードが遅く、腸内に長く停滞しやすいため便秘になりやすくなります。
悪玉菌が産生する物質は、便秘などの原因となる他、腸内に滞留することで、腸を腐敗させたり、腸壁を脆くさせてリーキーガット症候群のような症状の原因となるなど、腸内環境の悪化と悪玉菌の増加はセットになっています。
・有毒物質の発生
悪玉菌はアンモニア、インドール、スカトール、アミンなどの有害物質を産生します。
これらの物質は、便の臭いを臭くする他、腸内環境が慢性的に悪化すると、腸壁から血液に漏れ出すようになり、体内に徐々に蓄積されて、生活習慣病やアレルギー疾患などの発症に繋がると言われています。
同時に、悪玉菌はニトロソアミンや二次胆汁酸といった発がん物質や発がん促進物質を産生したり、老化の原因となる活性酸素も増加させてしまいます。
・口臭、体臭、おなら、便臭が臭くなる
悪玉菌によって産生される腐敗物質は、おならや便臭が臭くなる原因となります。
また、腸内環境が悪いために慢性的な便秘などに悩んでいる人の多くは、そうした腐敗物質が腸壁から漏れて血液に流れだしてしまうことがあり、体臭や口臭が悪化してしまう原因になることもあります。
・リーキーガット症候群
リーキーガット症候群とは、腸の壁が破れたり、細胞膜が大きくなることで、本来腸壁を通過することの出来ない物質が、腸壁から漏れてしまう症状のことで、いわゆる『腸壁バリア』が損なわれた状態を指します。
このリーキーガット症候群は、近年日本人の間でも急増していると推測されており、主にアトピー性皮膚炎や花粉症など、アレルギー症状の増加との関係が指摘されている他、リウマチなど関節痛の原因にもなると考えられています。
・アレルギー症状の悪化
悪玉菌の増加は、腸の持つ免疫機能の低下につながり、そのことがアレルギー症状の悪化にも通じています。
近年、花粉症やアトピー性皮膚炎などが増加している背景には、悪玉菌の増加、つまり腸内環境の悪化が深く関係していると考えられています。
・肌トラブル、疲労や倦怠感
悪玉菌が増えることで腸内に活性酸素が大量に発生します。
活性酸素は体を老化させる物質として知られ、肌荒れやニキビ、シワなどの肌トラブルの原因となります。
また、悪玉菌が産生する有害物質や活性酸素は、疲労を感じやすくするため、悪玉菌が増加して活性酸素が増えることで、疲れやすくなったり、慢性的な倦怠感を感じやすくなります。
・うつ病
脳腸相関と言って、脳と腸は互いに深く関係していることが知られています。
例えば、脳がストレスを感じると、腸は下痢や便秘を起こします。
逆に、腸内環境が悪化して、腸内細菌が産生している物質が減ると、脳内で使用されるセロトニンドーパミンのような神経伝達物質の材料が脳に十分に届かなくなってしまい、うつ病などの精神疾患や、不眠症などの睡眠障害を引き起こす可能性があると考えられています。
詳しくは『うつ病と腸内細菌』をご覧ください。
・大腸炎や腸閉塞等の腸疾患、大腸がん
悪玉菌の産生する有害物質は便秘を起こして腸内に滞留しやすく、腸の至るところに炎症を起こしやすくします。
有毒物質や便の滞留によって起こる腸壁の炎症は、大腸炎や腸閉塞の原因となります。
過去には、慢性的な便秘によって腸閉塞を起こして死亡した例もあります。
また、腸内フローラの要でもある虫垂は、粘膜免疫を担う抗体物質を産生するなど、免疫機能上で重要な役割を果たしていますが、虫垂で悪玉菌が増殖すると虫垂炎が起こり、大事な虫垂が手術で切除されてしまうことがあります。
詳しくは『盲腸と腸内環境』をご覧ください。
さらに、悪玉菌が増加して腸内環境の悪化が慢性化すると、悪玉菌の産生する発がん促進物質などによって、大腸がんが引き起こされる危険性が増します。
実際、腸内環境の悪化が進む日本では、年々大腸がんの発生件数が増加しており、国立がん研究センターの調査による2015年の部位別のガンの統計予測では、大腸がんが男女合計で第一位になっています。
・動脈硬化、心筋梗塞、糖尿病などの生活習慣病
悪玉菌の好物である肉や脂、バターや揚げ物などに多く含まれる、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)は、動脈硬化の危険因子とされています。
つまり、悪玉菌が増えるような肉や揚げ物が中心の食生活はLDLコレステロールを増して、動脈硬化のリスクを増します。
また、動脈硬化は心筋梗塞や脳梗塞のような重篤な病気にも繋がります。

悪玉菌が増えないようにするには

・善玉菌を増やす
腸内環境を良くするには、悪玉菌に対する善玉菌を増やして上げることが近道です。
善玉菌を増やすには、ヨーグルトやチーズなど、乳酸菌ビフィズス菌を含んだ乳製品を積極的に摂取すること、納豆や漬物のような発酵食品を摂取すること、また、野菜や海藻、キノコなどに豊富に含まれる食物繊維をたくさん食べることが効果的です。
・食生活を改善する
悪玉菌が増える原因の多くは、食生活が影響しているといえます。
欧米型の多肉、多脂肪の食生活を改め、古くから日本人が食してきた食材をバランスよく摂取することが望まれます。
また、ファストフードやコンビニ食のような加工食品も悪玉菌の好物ですので、できるだけ摂取しないようにしましょう。
・適度に運動
適度に運動をすることで、腹筋や背筋、腸の周りの筋肉に刺激を与えることが出来ます。
すると、腸のぜん動運動が活発になり、便秘の予防や改善に効果的です。
尚、過度の運動は肉体への負担が大きいためお勧めしません。
散歩やサイクリングなど、比較的軽い運動を日常に取り入れましょう。
・睡眠をしっかり取る
睡眠中に分泌される成長ホルモンなどによって、腸壁のターンオーバーが促進されます。
睡眠が不足すると、腸壁の入れ替えが進まず、腸内環境が悪化してしまう要因となるため、しっかりと睡眠を取ることが重要です。
・ストレスを溜めない
ストレスは腸内環境にとって最も悪影響を与える要因の一つです。
ストレスを溜めないようにすること、運動などをして発散することが悪玉菌を増やさないようにするためには特に重要です。
・お酒の飲み過ぎに注意する
お酒を飲むと肝臓に負担をかけてしまい、食物の消化に必要な胆汁の生分泌量が低下します。
また、お酒が腸壁を炎症させ、腸内環境を悪化させます。
これらはいずれも悪玉菌が増える原因となりますので、飲酒はホドホドにしましょう。
・梅エキス
梅のエキスに含まれるクエン酸には強力な殺菌力があり、サルモネラ菌や病原性大腸菌(O-157)などの病原菌を殺菌してくれます。
・単糖類を避け、多糖類を摂取する
精製された白砂糖のような単糖類は悪玉菌の餌となって、悪玉菌が増殖しやすくなります。
砂糖の代わりに、はちみつやオリゴ糖のような、多糖類を用いると善玉菌の餌となり善玉菌を増やしてくれます。
・プチ断食を活用する
1日でもプチ断食をすることで、その間、胃腸や肝臓など、普段フル活動している臓器を休めることが出来、臓器の機能回復が見込めます。
腸の負担が減ることで、腸内に溜まった老廃物(いわゆる宿便)や食べカスの排泄が活発になることもあり、また、そうした老廃物を排泄することで、一緒に悪玉菌を減少させるなど、腸内環境の改善に役立ちます。
ただし、個人差や体調などによって悪影響のほうが大きく出ることがあるため、プチ断食をする場合は、医師や専門家に相談して、指導のもと行って下さい。

このように、悪玉菌を増やさないようにするには、日頃から運動や規則正しい生活、バランスの良い食事などを通じて、腸内環境を整えることが重要です。
さらに詳しくは、『腸内環境を整える方法』をご覧ください。