おならとは、口から入った空気と、食物を腸内細菌が分解する過程で発生したガスなどが交じり合った気体の総称です。おならが出るのは生理現象ですので、当たり前の事なのですが、おならが異常に臭い人や、おならが頻繁にでてしまう人は何らかの病気のサインかも知れません。

おならの成分

おならの成分の7~9割は、口や鼻から入ってくる『空気』で、残りは腸内細菌等によって生成されます。

主な成分
口から入った空気の成分
窒素、酸素、二酸化炭素など。無味無臭。
体内の細菌が生成するが臭いがあまりしない成分
メタン(メタン細菌によって作られる。メタンは温室効果ガスとしても知られる。メタンは牛や羊のゲップにたくさん含まれている。)
水素
体内で細菌が生成する臭いの原因になる成分
酪酸(バターや銀杏に含まれるくさい臭い、体内で脂肪酸や食物繊維が分解される過程で生成される)
硫化水素(腐った卵のにおい)
二酸化硫黄(マッチを擦った時のにおい)
二硫化炭素
アンモニア
リン化水素
インドール(便臭)
スカトール(便臭、極低量では花の香りがして香水の原料にも)
脂肪酸

など。

良いおならと悪いおなら

おならの音や臭いで、その時の腸内環境の良し悪しをある程度計ることができるため、おならは腸の調子を見るためのバロメータでもあります。

・良いおなら
善玉菌が食物繊維などをエサにして作り出す発酵成分と空気の成分が主体のおならで、においはあまり臭くないが、空気が多く含まれているため大きな音が出やすい。『くさくないおなら』は健康な腸の証です。
・悪いおなら
悪いおならとは、シンプルに表すと『くさいおなら』のことです。臭いおならの正体は、悪玉菌がたんぱく質などをエサにして生成される有害な腐敗ガスで、インドール、スカトール、アミン、硫化水素など悪臭を放つ成分が含まれており、卵が腐ったような腐乱臭や便臭などの悪臭がします。
このような悪いおならが続くと、腸内環境は悪化に向かいやすくなります。おならに空気の含有量が少ない『すかしっぺ』もおならの臭いをさらに悪化させる原因となります。また、胃や腸、胆嚢や肝臓すい臓などに何らかの異常があると、たんぱく質や脂質の分解がうまくできず、腐敗したくさいおならになりやすいため、長期間、慢性的に異常にくさいおならが出る人は、何らかの病気の可能性も考慮する必要があります。

おならが出る原因

基本的におならは生理現象の一環で発生するものなので、止めることは出来ませんし、おならが出ること自体は腸が正常に機能している証拠です。

ただし、おならが出やすくなる原因となるものもあります。

食物
例えばさつまいもを食べると、おならが出やすくなるということが昔から言われています。その他にも、イモ類、ごぼうなどの根菜、豆類など、食物繊維を豊富に含む食物は腸内で善玉菌のエサとなり、おならの原因になります。ただし、善玉菌が作るガスはにおいが少なく、あまりくさくありません。
ところで、食物によっておならが出すぎるの防ぐには、摂取する食物繊維のバランスに気をつけると良いです。食物繊維には、不溶性食物繊維水溶性食物繊維の2種類があり、前者がおならを出しやすくする原因の食物繊維だと言われています。
不溶性と水溶性をバランスよく、およそ2:1程度の割合で摂取すると、便が程よく柔らかくなり、便秘をしにくくなって、腸内におならが溜まるのを防ぐことが出来ます。
実は、先で挙げたおならが出やすくなるという食物は、主に不溶性食物繊維が多く含まれた食品です。バランスを取るには水溶性食物繊維が多いのはワカメやひじきなどの海藻類を積極的に摂取すると良いでしょう。
呼吸
おならのもとのほとんどは口から入る空気です。通常、人は呼吸によって口から入る空気は、肺に入るため、胃や腸へは到達せず、おならの原因にはなりませんが、空気やつばを飲み込んでしまう癖などがあると、口から空気が胃や腸に供給されておならの原因になってしまいます。
咀嚼不足
食事の際の咀嚼の回数が足りず、無理やり食物を飲み込むことが多い人、また早食いの人などは、食べ物を飲み込むときに一緒に空気を飲み込みやすくなり、おならが出やすくなります。ゆっくりよく噛んで食べることは、唾液に含まれる消化酵素の分泌を促進するため、食物の消化にとっても重要で、咀嚼不足はおならの原因となるだけでなく、消化不良によって腸内環境が悪化する原因にもなります。
運動不足
腸が便やおならを肛門から排出するのに欠かせないのが、腸のぜん動運動です。
このぜん動運動は、腹筋や背筋、また腸の周りにある筋肉によって支えられており、運動不足によってこれらの筋肉が衰えると、ぜん動運動の力も衰えてしまうため、便秘になって腸内が腐敗しておならの原因となるガスが発生やすくなってしまいます。
女性が便秘をしやすいのも、男性よりも筋肉量が少ないことが原因であると考えられています。また、デスクワークで一日中座りっぱなしの人も運動不足になりやすいので、毎日の歩く歩数を増やすなど、生活の中に工夫を取り入れましょう。
他にも、運動不足は自律神経の乱れにも繋がり、これも腸内環境を悪化させて腸を腐敗させておならが出やすくなる原因と言えます。
睡眠不足
睡眠不足は自律神経系が乱れる原因の大きな一つです。
また、睡眠中は本来、成長ホルモンが分泌されて、腸の働きを担う腸壁が修復される時間でもあるのですが、睡眠時間が減ると、成長ホルモンの分泌が減り、腸壁の修復時間も減ってしまうため、腸の働きが悪くなり、腸内環境が悪化しておならの原因となるガスを悪玉菌が作りやすい環境になってしまいます。
冷え症・低体温
冷え症や低体温でおならが出やすくなるのは、体温が下がることで血行不良が起きて、腸のぜん動運動が悪くなることにあります。特に女性やお年寄りが冷え症や低体温になりやすいので、軽めの運動をする習慣やお風呂にゆっくり浸かって、体を暖めて血行を促進すると良いでしょう。
緊張や興奮
精神の緊張や興奮は交感神経系の興奮を招きます。交感神経系が興奮すると、胃腸の働きは制限されて腸内で消化不良が起こり、臭いおならが発生しやすくなります。また、緊張によって出たつばを飲み込むと、一緒に空気を飲み込んでしまいます。
ところで、腸内で働くセロトニンの異常によって生じると考えられる、過敏性腸症候群(IBS)という病気があります。これは、腸のぜん動運動に異常が生じる症状の総称で、急性の下痢や便秘の原因になります。
特に緊張やストレスが引き金になることが分かっており、満員電車でトイレを我慢できなくなる、大事な会議の前になるとお腹が痛くなる、などの症状が見受けられます。
ストレス
ストレスは、運動不足や睡眠不足、冷え症や緊張など、おならが出やすくなる多くの事柄に関係しており、ストレスを抱えているとおならが出やすくなる、とも考えられます。(逆もあり得ますが)
ストレスは、生活習慣病やガン、うつ病などの精神疾患など、多くの疾患との関わりも指摘されており、慢性的なストレスを抱えることはおならが出やすくなること以上に様々な問題を生じさせる可能性がありますので、ストレスを溜めすぎないような工夫が必要です。

おならを無理に我慢すると

人前でおならをするのは恥ずかしいので、ついつい我慢をしてしまい勝ちです。我慢しているのが『悪いおなら』の場合、それは悪玉菌が作った腐敗ガスですので、より悪玉菌を増やしてしまうなど、腸内環境を悪化させる原因となります。

また、おならが溜まりすぎると内臓が圧迫されて腹痛を起こすこともあります。

さらに長時間おならを溜めておくと、おならが収まるという経験をした人も多いのではないでしょうか。実は、我慢し続けたおならのガスは腸壁から血液中に溶け込み、皮膚や呼気から放出されます。おならをいつも我慢していると、口臭や体臭が臭くなることがありますので、我慢は禁物です。

おならと病気

おならのにおいや回数は、その人の腸内環境に左右されやすく、また、直前の食事の影響も大きく現れます。

腸内環境が悪化すると、腸の病気を発症しやすくなりますので、普段よりもおならのにおいが臭くなったと感じたり、おならの回数が異常に多くなったと感じた場合、数日で改善された場合は問題ありませんが、数週間と続く場合は要注意です。

健康な人の場合、一日におよそ5回~20回程度のおならをするそうで、それを大幅に超えて頻繁におならが出る場合や、普段とは違う異臭のするおならが何日も続く場合は、腸内環境の悪化や、腸内の病気を疑う必要があるかもしれません。

腸内環境が悪化すると、腸に便が溜まって便秘を起こしやすくなります。その結果、腸内では悪玉菌によって大量に『悪いおなら』が作られて、特に臭いおならが出やすくなります。

こうした腸内環境が悪い状態が続くと、虫垂炎、潰瘍性大腸炎、大腸憩室、腸閉塞、腸ポリープ、さらに大腸がんなど、様々な腸の病気を発症させる原因になってしまう可能性があります。

また、腸内環境の悪化は、腸壁バリアの損傷と、それに伴うリーキーガット症候群の発症を引き起こします。

おならと食品

おならのにおいや、おならの出やすさは食べる食品によって大きな影響を受けます。

  • イモ類:
    イモ類に含まれた繊維質は腸内で善玉菌のエサとなって発酵し、大量のガスを発生させておならが出やすくなる。臭いは強くない。
  • 硫黄分の多い食品:
    肉、ネギ、ニンニク、ニラ等の硫黄分を含む食品は、腸内で分解されるとインドールやスカトールといった有害物質を生成し、腸を腐敗させるため、おならの臭いが臭くなりやすい。
  • 動物性たんぱく質:
    肉や魚などの動物性たんぱく質は、腸内で悪玉菌のエサになり、腐敗ガスを発生させて臭いおならを作り出す原因となる。

おならと口臭・体臭

おならと口臭や体臭は、一見して関係が無いように思われますが、口臭や体臭の悪化の原因を辿って行くと、そこにおならが関係していることがわかります。

腸で悪玉菌が作る有害物質は、一部はおならとして肛門から体外へ排出されますが、このおならはいわゆる『悪いおなら』であり、においもくさいおならです。

そして実は、腸内で発生した有害物質は、おならとして体外に排出されるだけでなく、その多くが腸壁から血液中に放出されて、全身をめぐります。その一部は皮膚から排出されて、これが体臭悪化の一因と言えます。

また、別の一部は肺へ到達し、肺の呼気(吐く息)に含まれて、これが口臭悪化の原因となるのです。※体臭や口臭悪化の原因の一つを示した例であり、全ての原因というわけではありません。

口臭と体臭の悪化の裏には食生活の変化も

日本人はワキガなどの体臭の悩みを抱える人が比較的少ない民族だと言われています。一方、欧米人にはワキガ体質の人が多いと言われています。

国や民族、住む地域によって体臭に違いが生じる原因は、地域ごとの食文化や生活習慣であると考えられています。体臭の強い欧米人は、古くからたんぱく質や脂質を中心とした、肉中心の食生活が続いてきたため、腸内フローラもたんぱく質や脂質を好む腸内細菌、つまり腸を腐敗させて悪臭を出す原因となる、悪玉菌にとって好ましい環境になりやすくなります。

日本人の場合は、伝統的に野菜や豆を中心とした、和食が食されてきたため、体臭の原因となる悪玉菌が増えにくい、良好な腸内環境を持つ人が遺伝的に多いのです。

ところが、近年では日本でも『食の欧米化』が進み、動物性のたんぱく質や脂質を摂取する割合が格段に増え、逆に野菜や豆類などに含まれる、食物繊維(善玉菌のエサである)の摂取量は、戦前のそれと比較すると半分以下(27g→12g)にまで減ってしまいました。

こうした食生活の変化の中で、日本人の腸内環境は悪化の一途をたどっていると考えられており、時期を同じくして花粉症やアトピー性皮膚炎のようなアレルギー疾患を発症する人が激増していることも、日本人の腸内環境が年々悪化していることを物語っています。

便秘で口臭や体臭が悪化する

便秘をすると、口臭や体臭が悪化しやすくなります。便秘になると、腸内に便と一緒に悪臭が長時間留まりやすくなるため、通常よりも腸壁から悪臭が血液中に漏れ出しやすくなるためです。

こうした口臭や体臭の悩みは、腸内環境が悪く、アトピー性皮膚炎や便秘などの悩みを抱えている人が同時に陥りやすい悩みでもあります。

おならのにおいを改善するには

おならのにおいが臭いのは、端的にいうと腸内環境が悪いからです。

つまり、多くの場合、腸内環境を改善することで、おならのにおいも改善する見込みがあります。とりわけ、食生活を改善することで、殆どの場合はおならのにおいの改善が見込めます。具体的には、肉やファストフードのような脂コッテリの食事は控え、野菜や豆類、海藻類などが中心の伝統的な和食のような食事が効果的です。

より詳しい内容は、『腸内環境を整える方法』を是非ご覧ください。

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