起立性調節障害と似た病気の特徴

起き上がるときにめまいや立ちくらみを起こす起立性調節障害(OD)は、似たような症状を起こす病気と間違われることが多く、それが治療の遅れや症状の悪化に繋がるケースもあるようです。起立性調節障害と似た病気の特徴などをご紹介します。

うつ病

うつ病は、ストレスなどによって脳の認知機能が低下することで起こる、精神的な病気です。うつ病の大きな特徴は、抑うつ、意欲の減退、不安やイライラ、集中力の低下など、主に精神的な症状が前面に出やすいという点です。

ODとの共通点
・朝起きるのが苦手
・ストレスで症状が悪化する
・女性がかかりやすい
・真面目で几帳面な性格の人がかかりやすい

ODと異なる点
・不安や抑うつなどの精神的な症状が前面に出る(ODは身体的症状が主)
・働き盛りの世代がかかりやすい(ODは思春期世代)
・症状の日内変化がない人もいる(ODは夜になると軽快)
・抗うつ剤により症状が改善することがある(ODは悪化する)
・自殺願望と希死念慮を抱く(OD単体では起こらない)

詳しくは『起立性調節障害とうつ病の違いと共通点』をご覧ください。

睡眠相後退症候群

睡眠相後退症候群(DSPS)は概日リズム、いわゆる体内時計が狂うことで起こる睡眠障害です。この病気は、不眠症のように「眠れない」わけではなく、一定の時間になると眠りにつくことができる場合が多い、慢性的な一人時差ボケのような状態が特徴です。

睡眠相後退症候群が抱える問題は、眠りにつく時間が一般的な生活リズムを送る人よりもかなり遅い時間(深夜や早朝)で、起きる時間も昼過ぎや夕方になる『遅寝遅起』の生活リズムになるため、一般的な生活リズムで社会生活を送ることが困難になる場合があるという点です。

ODとの共通点
・朝起きるのが困難
・夕方以降は体調が良くなる
・無理して早起きすると体調や生活リズムを崩しやすい
・不登校や引きこもりになりやすい

ODと異なる点
・体内時計の乱れや周期が原因となる
・過眠傾向がある

睡眠相後退症候群と起立性調節障害は症状や特徴が特に似通った病気であり、ときには併発している場合もあるため、専門家であっても、検査なしに見分けるのは困難であるとされています。

てんかん

てんかんは、脳の神経細胞の働きにより、体のけいれんや意識の喪失と言った症状が起こる病気です。

人の体は神経細胞間の電気信号のやり取りにより動いており、この細胞間の電気信号のやり取りが何らかの理由でうまく行かなくなることで、てんかんの症状が起こると考えられています。

てんかんには、原因がはっきりしない『突発性てんかん』と、事故などによる外傷や炎症、腫瘍や感染などにより起こる『症候性てんかん』があり、発症年齢は幅広いものの、80%程度は18歳までに発症するとされます。

ODとの共通点
・突然意識を失うことがある
・多くの場合子どものときに発症すること
・発作の影響が自律神経系に現れることがある(頭痛や吐き気など)

ODと異なる点
・発作に規則性がない(時と場合を問わず発作が起こる)
・外傷がきっかけで発症することがある
・抗てんかん薬で症状が改善する(薬が効かない「難治性てんかん」もある)

鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血とは、貧血を起こす原因の中でも最も症例が多い種類です。鉄欠乏性貧血は鉄不足から血中の赤血球やヘモグロビンの数が減ることで、血中の酸素濃度が低下して体中に酸素が行き届きにくくなり貧血の症状が現れます。

鉄欠乏性貧血の症状は起立性調節障害と非常に似通っていますが、原因は明確に異なりますので、検査をすればはっきりと区別可能です。

ODとの共通点
・朝起きるのがつらい
・めまいや立ちくらみを起こす
・疲れやすく、集中力が低下する
・女性が起こしやすい(月経の影響)

ODと異なる点
・あっかんべーをしたとき、下まぶたの裏が白っぽいと鉄不足の可能性がある
・鉄欠乏性貧血は酸素不足(ODは起立時の低血圧)
・鉄欠乏性貧血はヘモグロビン値が低い
隠れ鉄不足というのもあり、この場合はフェリチン値を計る

尚、鉄分不足が自律神経系の働きを乱すことで起立性調節障害を起こしたり、起立性調節障害の症状が悪化する可能性も考えられます。

詳しくは『起立性調節障害になりやすい思春期の鉄分不足』をご覧ください。

副腎疲労

副腎疲労は、ストレスなどが原因で副腎の機能低下が起こり、副腎で生成されるストレスホルモン(コルチゾール、ノルアドレナリン、アドレナリンなど)が、正常に分泌されなくなることで様々な症状が起こることを言います。

副腎疲労では起立性調節障害と同じ身体症状が現れますが、精神的にも様々な症状が現れるという点が異なります。

ODとの共通点
・身体症状はほぼ同じ
・朝起きられない
・とにかく疲れやすい
・ストレスで症状が悪化する

ODと異なる点
・精神症状も現れる(抑うつ、落ち込み、意欲減退)
・副腎疲労はストレスホルモンの枯渇(ODは自律神経系や循環器系の未発達)

副腎疲労が根本原因となって、自律神経系が乱れ、起立性調節障害の症状を起こすというケースも考えられます。

詳しくは『起立性調節障害と副腎疲労』をご覧ください。

慢性疲労症候群(CFS)

慢性疲労症候群とは、原因不明の疲労や微熱などの症状が6ヶ月以上続くという病気です。(いくつか条件や定義があります。)

この病気の特徴は、とにかく『原因不明』という点です。原因として遺伝的要因やストレス、副腎疲労、自律神経系の乱れなど様々なものが考えられるものの、特定が出来ない、または人によって原因が異なっている可能性がある病気の総称とも言えます。

ODとの共通点
・日常生活が困難なほどの疲労感や倦怠感が続く。
・睡眠相の後退
・思春期の子どもにも起こる

ODと異なる点
・症状の発生は起立を原因としない
・微熱や関節痛が起こる
・休養をとっても回復しない

血糖調節障害

血糖調節障害とは、甘いものと摂り過ぎなどのせいで、血糖値の調節機能がうまく働かなくなり、血糖値が下がりすぎてしまう低血糖状態になりやすくなってしまう症状のことを言います。

低血糖の状態は、めまいや立ちくらみ、朝起きられないなど、起立性調節障害と非常に良く似た症状が起こります。

また、血糖調節障害を起こす過程では、副腎の疲弊による副腎疲労が起こっているケースも考えられるなど、起立性調節障害とは縁深い症状です。

詳しくは『起立性調節障害と血糖調節障害』をご覧ください。

甲状腺機能異常

甲状腺は細胞の新陳代謝を活性化する甲状腺ホルモンが分泌される臓器です。

甲状腺ホルモンは、脳細胞や体細胞の成長や発育を促進させる作用があります。甲状腺の機能に異常が起こり甲状腺ホルモンの分泌が過剰になったり不足したりすると、疲労感、気力低下、気分の落ち込み、睡眠障害など様々な症状が現れることがあります。

甲状腺の病気として、甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症などがあります。

ODとの共通点
・疲れやすい
・寝付きが悪い
・集中力が低下する
・ストレスが原因で機能異常が起こることがある
・女性の発症が圧倒的に多い(男性の10~20倍。ODの場合はせいぜい2倍程度)

ODと異なる点
・甲状腺の機能異常により起こる(ODは自律神経系の異常)
・甲状腺ホルモンの分泌量などを検査することで判明する
・自己免疫疾患であるとされる

脳脊髄液減少症

脳脊髄液減少症は交通事故をはじめ、何らかの外傷後に起こる脳髄液の圧力、髄液圧が低くなることで頭痛やめまい、吐き気などの症状が現れる病気で、特に起立時に起こる場合が多いという点で、ODと症状が似ています。新しい概念の疾患で、治療法の確立や法整備が急がれています。

ODとの共通点
・起立時に頭痛やめまいなどが起こりやすい

ODと異なる点
・交通事故などによるムチ打ちなど、体への衝撃が原因となる場合が多い
・髄液が漏れ出すことが原因とされている
・男性に多い
・ブラット・パッチによる治療が行われる(効果は低い模様)

ODと原因が異なる病気

ご紹介した病気の中で、ODと症状は似ていても、原因が明確に異なる病気が幾つかあります。てんかん、鉄欠乏性貧血、甲状腺機能異常、脳脊髄液減少症の4つです。

これらの病気は、それぞれ検査を受けることによって、ODとは分けて治療を受けることが出来るかと思います。

まとめ

自律神経失調症の一種であるODは、同じく自律神経系の問題による疾患と、症状の現れ方は違っても、元を辿ると自律神経系の異常が原因となっているものが複数あります。

ご紹介した病気のうち、うつ病、睡眠相後退症候群、副腎疲労、慢性疲労症候群、血糖調節障害の5つは、ストレスや自律神経系の乱れが発症に深く関わる病気であり、現れる症状もODと非常によく似ているため、見分けることが特に困難で、間違えやすいものです。

また、ODと症状の似たこれらの病気はそれぞれが同時に併発することもよくありますし、ODの悪化からうつ病などを発症するケースも多々あります。

ODは思春期の子どもの間では10人に1人程度の割合で起こると言われる、決して珍しくない病気ですが、他の病気と混同して間違った治療を行ったり、適切な治療が行われなければ、症状が悪化していき、その結果、子どもの学校復帰が遅くなったり、後の社会的孤立や引きこもりに繋がることも考えられます。

自律神経系は、一度乱れると自分一人で治すのは難しく、治療にも長い時間と多くのお金を必要とします。治療をためらった結果、症状が悪化してさらに治りにくくなるだけでなく、社会への参加や復帰が困難になってしまいます。

何らかの異常を感じたら、また今回ご紹介したような症状が家族や子どもに現れた場合は、お早めに専門医にご相談下さい。

photo credit:Dizzy by Jo



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