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めまいや立ちくらみなど、起立性調節障害の症状が起こる原因は、自律神経系の働きに乱れが生じることだとされています。起立性調節障害の原因となる自律神経系ですが、実は自律神経系は日々の食事によっても乱れてしまうことがあります。起立性調節障害を起こす原因となる食事についてご紹介します。

偏った栄養バランスが自律神経系を乱す

人は、食事によって体に必要な栄養素を体内に取り込んでいます。脳や心臓、筋肉、血管、ありとあらゆる細胞の材料も食事によって取り込まれます。

自律神経系を形成する神経細胞もまた、食事によって摂取された栄養素によって合成されます。従って、ダイエットや好き嫌い、病気、その他何らかの理由によって、食事から摂取する栄養素が偏ると、自律神経系の働きに乱れが生じて、自律神経失調症や起立性調節障害を起こしやすくなります。

バランス良い食事が重要

炭水化物、たんぱく質、脂質の三大栄養素と、ビタミン・ミネラルなどを含めた5大栄養素をバランス良く摂取することが食事の基本で、自律神経系だけでなく、体の健康にとっても重要です。

細胞を構成する物質の割合は、人の場合、[水66%、たんぱく質16%、脂質13%、炭水化物0.4%、無機質4.4%]となっており、水分を除くと、たんぱく質と脂質が細胞を構成する物質のほとんどを占めています。

自律神経系を形作る神経細胞の材料となる物質は様々なものがありますが、各栄養素のバランスの良い食事さえしていれば、極端に不足することはあり得ません。『バランスの良い食事が体に良い』ということは誰もが知るところです。

ところが、食物が余るほど溢れている現代社会では、栄養バランスなど気にせずとも好きなものだけ食べて生活することが出来るため、意識して食事の献立を考えないと、誰しもが知らず知らずのうちに栄養バランスに偏りが生じてしまうことがあるのです。

過不足すると起立性調節障害を起こしやすい栄養素

好き嫌いや、偏食、ダイエットなどにより、栄養バランスが偏ることで、中には過剰摂取になってしまう栄養素や、極端に不足してしまう栄養素があります。

そうした栄養素のうち、過不足によって自律神経系を乱したり、起立性調節障害を起こしやすい栄養素は、鉄分糖分塩分です。

「鉄分」不足は起立性調節障害を悪化させる

鉄分は体内への吸収率が悪く、元々不足しやすい栄養素の一つです。

鉄分は、血液中の酸素運搬役である『ヘモグロビン』の主原料であるため、不足すると血中の酸素濃度が薄くなって、全身の細胞に酸素が不足して、貧血や低血圧、めまい、立ちくらみと言った、起立性調節障害の諸症状と同じような症状が起こります。

また、鉄分の不足そのものは起立性調節障害とは異なりますが、起立性調節障害を起こしやすい思春期の子どもたちに鉄分が不足すると、めまいや貧血などの起立性調節障害の症状が、鉄分不足との相乗効果で重症化しやすいのです。

思春期の子ども、とりわけ女子は生理が始まることで鉄分不足が起こりやすいため、食事によって、また場合によってはサプリメントなどを利用して、上手に鉄分を補給してあげたいところです。

「糖分」の摂り過ぎは血糖調節障害に

糖分の摂り過ぎは、最終的に『血糖調節障害』という血糖値が慢性的に低くなる状態を招きやすくなります。これは血糖値を上昇させるために働いている臓器が、糖分の過剰摂取によって酷使された結果起こる症状です。

血糖調節障害は、めまいや立ちくらみ、貧血や低血圧など、起立性調節障害と非常によく似た症状が起こります。糖分を過剰摂取してしまう原因は、子どもに対する『食育』が不徹底であることが原因の一つとして考えられます。

日本人全体の砂糖の摂取量は減っている
戦後日本の貧しい時期、甘い食物は贅沢品で、子どもにとっては甘いお菓子が何よりのごちそうでした。ところが、経済の高度成長により豊かになり、食物があふれる現代では、砂糖の摂取量は年々減少し、代わりにたんぱく質や脂肪などが多くなる、いわゆる『食の欧米化』が進んでいます。

一部では摂り過ぎている場合も
最近の健康志向も相まって、日本人全体としては、砂糖の摂取量は減少しているものの、少数ではあっても、子どもが好きなもの、子どもが食べたいものだけを与えているというケースがあります。子どもが欲しがる食物は、苦いものや辛いものよりも、甘いお菓子やジュースです。

そうした極端な食生活で育った子どもは糖分の過剰摂取に陥りやすく、血糖調節障害を起こしやすいことが考えられます。

加工食品の増加も一因
また、食事を材料から自分で調理するのではなく、レトルト品や買ってきた惣菜、冷凍食品などで済ませてしまうケースも増えています。

こうした食品の全てが悪いわけではありませんが、出来合えのものに頼りすぎた結果、味覚が発達せず、甘いものが好きで、苦いものや辛いものが嫌い、といった幼稚な味覚のまま思春期を迎えてしまう子どもが増えているのです。

しかも、人工的に栄養添加されるなどして、見かけ上は栄養バランスが取れているような食品も多く、意図せずとも糖分を過剰摂取してしまうこともあります。

こうして小さい頃からの糖分の過剰摂取は、未発達な子どもの臓器に大きく影響を与え、血糖調節障害を起こしやすくなり、そうした中で副腎が疲弊して副腎疲労を起こし、次に自律神経系が乱れ、終いには起立性調節障害に至る、という図式が成り立っているのです。

「塩分」不足で血圧低下

体の健康を心がける上で、塩分を控えた食事は欠かせません。日本の伝統的な和食は、味噌、漬物、梅干しなど、塩分が多く、高血圧症を始めとした生活習慣病の原因になるとされています。

昨今、塩分が親の敵のように問題視されるようになった理由は、端的に言えば塩分を摂り過ぎると『血圧を上がる』ためです。体内の塩分濃度は、常に一定に保たれる必要があるため、食事で塩分を多く取ると、その分体は水分を溜め込んで、塩分濃度を低くしようとします。

体が抱える水分量が増えると、その分血液中の水分量が増え、つまり血液の量も増えることになります。流れる血液量が増えれば、その分血圧が上がるため、結果として塩分を多く摂取すると血圧が慢性的に上がって、高血圧症などを起こす、と言われています。

そして、味覚が未発達な子どもの中には、酸っぱいもの、苦い食物やしょっぱい食物が苦手な子どもが多く、結果として塩分を好まない傾向があります。また、家庭での食生活における減塩が徹底しているために、塩分の摂取が少ない場合もあります。

起立性調節障害では塩分が必要な場合も
通常では塩分不足ということは問題になりませんが、起立性調節障害の場合、何よりも血圧が低いことが症状を発症してしまう大きな原因で、『塩分不足』が症状の発症に一役買ってしまう場合があるのです。

快適な住環境によって塩分不足に
また、起立性調節障害の子どもは塩分が苦手な傾向に有ると言われていますが、塩分を欲しがらない理由の一つは、塩分を必要としないような住環境で過ごしてきた、ということも推測できます。

年間を通してあまり温度差や湿度の変化がなく、快適で汗をあまりかかない住環境。一見理想的な住環境ですが、こうした環境で育った子どもは、汗腺が発達せず、汗をかくことで塩分を体外へ排出することができませんから、食事で新たに塩分を摂取する必要性が減るため、塩分を好まない傾向が現れることが考えられます。

食欲が低下している
起立性調節障害では、自律神経系の働きが乱れることによって、食欲が減退してしまうことがあります。食欲低下によって、食事の量が減ると、塩分の摂取量そのものが減りますし、食欲がないときは味が濃いものよりも、薄くてさっぱりしたもののほうが食べやすいため、どうしても薄くてさっぱりした食事が多くなり、これも塩分の摂取量が減少する原因と言えるかもしれません。

起立性調節障害を起こしやすい子は、食が細く痩せている子どもが多いそうです。

交感神経系の発達も遅れやすい
また、温度や湿度の変化は、交感神経系への刺激となりますが、そうした環境変化が乏しい中で過ごすと、交感神経系の発達が遅れて、起立性調節障害を起こしやすい体質への育ってしまうのです。

私が小さい頃は『都会の子供はもやしっ子』とよく言われましたが、便利な都会で快適な生活をする子どもたちは、屋外を駆けまわって遊ぶ子どもたちに比べると、交感神経系の発達が遅れてしまい、起立性調節障害を起こしやすいということが確かにあるのかもしれません。

photo credit:i don’t like by francois karm