子どもが起立性調節障害になったとき親が知っておくべきこと

思春期の子どもたちに起こりやすい起立性調節障害は、自律神経系の乱れやストレスなどが原因になって起こります。そのため、起立性調節障害には特効薬はなく、根気よく長期間かけて治療に取り組むことになります。子どもが起立性調節障害になったとき、親が知っておくべき事柄をご紹介します。

病気のことを理解すること

起立性調節障害を治す、または症状を改善する上で、最初に必要なことは、起立性調節障害のことをよく理解することです。特に、病気になった本人だけでなく、親や家族、学校の教師やときには周りの友人などにも病気に対する理解を広める必要があります。

なぜなら、起立性調節障害という病気は、見た目では病状が分からず、ただ単に病弱だとか虚弱体質だなどと誤解されて、いじめの的になる場合があるためです。

また、朝起きられないという特徴的な症状も、病気への理解がないと、ただ怠けているとか甘えていると言った誤解に通じやすいのです。

ときに病気である本人でさえ、病気のことを理解していないために、自分は怠け者だと勘違いして、そのせいで自信を失くしたり、ストレスを抱えて心を塞いでしまうこともあり、そのストレスがさらに症状を悪化させる一因にもなるのです。

起立性調節障害という病気は、自律神経系の働きの乱れや循環器系の未発達によって起こる、体の機能障害です。そして症状の発生には、少なからず何らかのストレスが関わっています。

起立性調節障害を治すのに最も重要なのは、医師ではなく、本人や家族の意志です。そのためにも、病気のことをよく理解することが治療の第一歩なのです。

重症の場合

起立性調節障害の症状は人によって重度が異なり、軽微な症状の場合は日常生活に支障がない程度ですが、重度になると通学や外出が困難になるケースもあります。

起立性調節障害の治療には特効薬がありません。体の成長に合わせて、ゆっくりと根気よく、長期間をかけて治療に取り組む必要があります。

そのため、症状が重度の場合、勉強や進学のために学校に行くことばかりを考えて無理に治療をするよりも、数年先に改善させることを目指して、本人が可能な範囲で無理のない生活を送ることを優先したほうが、本人にとっても家族にとっても心が楽になる場合もあるのではないかと思います。

これはある意味、病気になったら諦めろ、と言っているようなものですが、いくら病気になったことを悲観しても、治療には何ら効果を発揮しません。ときには現実を直視して、その中で取りうる最善・最良の選択肢を新たに模索していくという心構えも必要になるのです。

生活リズムを整える

起立性調節障害を治すには、生活リズムを整えることが重要です。起立性調節障害を発症した子どもは、自律神経系の働きが乱れているため、『生活リズムが極端に乱れやすい体質』だということを理解したほうが良いでしょう。

例え休日の一日でも、普段よりも夜更かししただけで、翌日起きられなくなり、そしてその夜は遅くまで寝付けなくなり、その後の生活リズムは大きく崩れてしまう場合があります。

規則正しい生活
起立性調節障害の場合、無理に早寝早起きをする必要はありません。

しかし、可能な範囲で出来るだけ同じ時間に起きる、同じ時間にご飯を食べる、同じ時間に学校に行く、外出する、同じ時間にお風呂に入る、と言った規則正しい生活を送り、それを体内時計に覚えさせていきます。

そうすれば、普通の人が生活する時間とはずれていても、一定のリズムで生活をすることが出来ます。

また、夜の眠る時間はあまり神経質に固定する必要はありません。朝同じ位に起きていれば、夜も大体同じくらいに寝付けるようになるはずです。眠る時間よりも、なんとか起きる時間を固定しましょう。(それが昼であっても)

軽い運動
起立性調節障害を改善していくには、二つの点から運動が最も効果的です。

一つは運動をすることで、起立性調節障害で働きが乱れてしまっている、自律神経系を整える効果が期待できるためです。運動をすると、起立性調節障害で特に弱りがちな交感神経系が優位に働く時間が増えて、交感神経系を鍛えることが出来ます。

もう一つは、運動をすることで筋肉を増加させることが出来るためです。起立性調節障害を起こしやすいのは、痩せて筋肉量の少ない子どもです。

特に、小さい頃から運動をあまりしてこなかった子どもの場合、下半身の筋肉量が少なくなりがちで、本来下半身の筋肉が担うべき、血液のポンプ機能が十分に備わっていないことが、起立性調節障害の症状である、立ちくらみやめまい、貧血などを起こす一因になっている場合があるのです。

運動はウォーキング程度の軽い運動でも良いので、下半身の筋肉を刺激出来る運動を、一日10分程度から、体調が悪い午前中は避けて、体が楽になる夕方や夜に、少しずつ様子を見ながら時間や強度を増やしていくことで、地道ではありますが、着実に筋肉量のアップが望めます。

長期的に下半身の筋肉量が増えてくれば、症状も快方に向かうはずですし、継続して何かを行うことは、子どもに自信を持たせることにも繋がります。

バランス良い食事
育ち盛りの子どもにとっての食事には、不要な栄養素というものが無いため、何の栄養素が重要ということはありません。もっとも重要なのは栄養バランスよく、適切な量をしっかりと摂ることです。

起立性調節障害の場合、食欲が減退してしまい、朝ごはんを食べれない場合が多く、また、元々好き嫌いが多い場合、アレルギーなどにより特定の栄養素が摂取できない場合などがあり、栄養バランスが偏りやすい傾向があります。(特に現代っ子はアレルギー症状を抱える子が増えています。)

栄養バランスの偏りや不足は、自律神経系を直接乱す大きな要因であり、また腸内環境が悪化する原因でもあります。

あまり知られていませんが、良好な腸内環境は自律神経系の働きに必要不可欠であり、腸内環境が悪化して悪玉菌が増加すると、自律神経系が乱れて、ときにはうつ病などの精神疾患を引き起こす場合もあったり、起立性調節障害を引き起こす原因そのものにもなると考えられています。

従って、栄養バランスの良い食事を、出来るだけ毎日同じ時間に食べることが重要です。ただし、就寝直前の食事は胃腸に負担がかかる他、睡眠の質が悪くなって自律神経系を乱す要因にもなるため、眠る前の食事は、睡眠の2~3時間前までに済ませるようにしましょう。

自律神経系のトレーニング

起立性調節障害は自律神経系の働きが乱れることで起こります。乱れた自律神経系の働きを改善するには、いくつかの方法があります。

理学療法
理学療法とは、いわゆる整体、指圧やマッサージ、お灸、鍼治療などを用いて、体をほぐしたりツボをついて血行をよくすることで自律神経系の働きを改善する治療法です。自律神経系の働きが乱れている場合、体中の血流が悪くなってしまうことが多く、理学療法を用いて血行を改善すると、起立性調節障害の症状にも効果が現れることがあります。

また、血流の悪くなる原因の一つとして、骨格の歪みなどが影響している場合があり、整体などで体が正しい位置に戻ることで血流が改善する場合もあります。

また、理学療法によるマッサージには、起立性調節障害で弱りがちなメンタルのケアにも有効です。マッサージなど、人とのふれあいは、オキシトシンというホルモンが分泌されやすくなります。

オキシトシンが分泌されることで、コミュニケーション能力を高めたり、物事への興味や感心、集中力などを高める効果も期待でき、メンタルケアとストレスへの耐性を高めることができるのです。

オキシトシンは家族や恋人など、信頼できる間柄でより多く分泌される特性があるため、親がマッサージの仕方を覚えて、子どもに施術してあげるのも有効です。

エアコンはほどほどに
夏も冬もエアコンが効いた、快適な部屋で過ごしていませんか?

快適すぎる環境は、自律神経系の働きが弱くなる原因となります。暑いときは汗をかき、寒いときは体を震わせることで自律神経系に刺激を与えることが自律神経系の発達には重要です。

小さな頃から快適な住空間で過ごしてきた現代の子どもは自律神経系の発達が遅れやすく、これが起立性調節障害を起こす原因の一つになっているとも考えられています。

起立性調節障害は暑くなればなるほど症状が重症化しやすいため、エアコンでの温度管理は必須ではあります。また熱中症対策などにもエアコンは重要ですが、くれぐれも温度を下げ過ぎないように注意しましょう。

お風呂に入ること
忙しい現代人は、大人も子どももお風呂にゆっくり浸かる機会が減っています。お風呂に浸かると、交感神経系と副交感神経系が切り替わり、また、血行促進、発汗作用など、様々な効果により自律神経系のバランスを整える作用があります。

また、湯船に浸かると、緊張をほぐしてストレスを解消する効果も得られます。

最も注目すべきなのは、起立性調節障害を起こした人が起こしやすい寝付きの悪さを、お風呂に浸かることで改善する作用があるという点です。

お風呂に入ると一時的に体温が上がり、その後時間をかけて体温が下がっていきます。人は体温が下がると眠たくなる性質があるため、就寝予定時間の2~3時間ほど前に、ゆっくりお風呂に浸かると、寝付きをよくする効果が期待できるのです。

効果的な入浴法はあまり熱すぎない38度~40度程度までのお湯に、15分~20分程度ゆっくりと浸かることです。

ただし、入浴は起立性調節障害の治療に有効な手段ではありますが、体を温めると血管が拡張するため、血流がゆっくりになり、めまいや立ちくらみを起こしやすくなるなど、起立性調節障害の症状が悪化する場合があります。

入浴中や入浴後に気分が悪くなったり吐き気を催すことがある場合は、入浴を直ちに中止してください。また、入浴中は汗をかくため、水分補給も怠らないようにしましょう。

改めて挑戦する場合は、お湯の温度を少し下げて、36~7度程度で出来るだけぬるめの湯に入りましょう。入浴時間も短めにしてみてください。

筋肉を増やす

起立性調節障害を起こす原因の一つとして、下半身の筋肉量が不足していることが挙げられます。

地球上には重力がありますから、起立状態では血液は下半身に溜まっていきます。通常は下半身の血管の周りにある筋肉が収縮することで、下半身に溜まった血液を脳や心臓など上半身へと還流させて、血液を循環させています。

起立性調節障害の場合、下半身の筋肉量が少ないために、筋肉による上半身への血液のポンプ機能が弱く、そのため脳への血流が減って、脳の酸素が不足して立ちくらみやめまいを起こしたり、心臓へ戻る血液量が少ないために頻脈を起こしたりするのです。

筋肉を増やすには、すでに先にも書いたとおり、軽い運動が効果的です。

必ずしも激しい運動をする必要はなく、自分で出来る範囲の運動を、はじめは5分程度から少しずつ時間と強度を増やしながら、長期的に継続して行うことが重要です。

また、午前中や午後早い時間に運動するのが辛い場合は、無理をせず、体調が良くなりやすい夕方や日が沈んだ夜に運動をしてみても良いでしょう。

メンタルケア

起立性調節障害を治していくには、メンタルケアが欠かせません。

起立性調節障害は何らかのストレスによって、症状が悪化したり、症状を発症したことで学校に行けなくなったり、運動が出来なくなったことがストレスになって、心を塞いでしまい、それが自律神経系をさらに見出して症状を悪化させる原因になってしまうことがあるのです。

ストレスを軽減するには、最初にも述べたとおり、本人のみならず、周囲の病気への理解が非常に重要です。病気のことが理解されず、登校を無理強いされたり、怠け者呼ばわりされてしまうと、病気が治らないだけでなく、以後の社会生活への復帰が困難になり、本格的な不登校や引きこもりに発展してしまうケースもあります。

メンタルケアは、ときにプロの手を借りることも必要です。

起立性調節障害を扱う小児科の医師はもちろん、プロのカウンセラーによる心理療法や心理セラピーと言った対話を用いた認知療法もが長期的には有効な場合があります。

ただし、病気の特殊性から、起立性調節障害のことをしっかりと理解している専門家に相談するのが良いでしょう。

処方薬を併用

残念なことに、起立性調節障害に特効薬はありません。しかし、病院で処方してもらえる幾つかの薬は、症状を一時的に抑えて改善させる効果がある場合があります。

その一方で、処方薬で副作用で頭痛、動悸、食欲不振や吐気などを催すこともありますので、薬だけに頼るのではなく、当人の生活(学校に通える状態なのか、運動をするのか)に合わせて、薬を上手に併用しつつ、生活習慣の改善、運動の励行などをしながら、根本的な体質の改善にも同時に取り組みましょう。

また、漢方薬なども効果がある場合もあるようですので、それまでの治療で効果が見られない場合は、漢方医に相談してみるのも良いでしょう。

根気よく長期的な展望が必要

起立性調節障害は成長期の体や心の機能障害で起こる症状であるため、残念ながら一朝一夕では治りません。

身体の成長が止まる成人を迎える頃になると、症状も解消、または軽減する場合がほとんどですが、それでも少なくとも数年間に渡って、この病気と向き合っていく必要があります。

そして、起立性調節障害が抱えるもう一つの問題は、発症するのが学校に通う子どもたちであるということです。

つまり、一度起立性調節障害を発症すると、症状が重症の場合は学校に通学することもままならなくなり、進級や進学、卒業することも困難になる可能性もあるため、いわゆる社会のレールからはみ出てしまうことになりかねないのです。

そのため、もしも子どもが起立性調節障害だと分かったら、子どもが病気になったことを嘆いて時間を無駄にするよりも、病気のことを深く理解する努力と、子どもの生活プランや将来設計を、再構築をする努力が必要になる場合もあり、親御さんにとっても相当の根気と意識改革が必要となります。

photo credit: Woman and young girl in kitchen with laptop and paperwork smiling (license)



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