起立性調節障害では、「朝起きるのが苦手」「夜中々寝付けない」などの症状のせいで、生活リズムを崩してしまうという特徴があります。しかし、こうした病気があることはまだまだ知られておらず、怠けと誤解されやすいのが現状です。起立性調節障害を理解してもらうために、この病気で生活リズムを崩す症状が現れる理由などをご紹介します。

生活リズムが乱れやすい理由

起立性調節障害は朝起きるのが辛く、また夜の寝付きが悪くなる症状が現れやすい傾向があります。この症状のせいで、起立性調節障害では『遅寝遅起』の生活リズムになりやすい特徴があります。

自律神経系の働きの乱れが原因
こうした遅寝遅起の症状は、交感神経系と副交感神経系からなる、『自律神経系』の働きが乱れているために起こります。特に、起立性調節障害の場合は、『交感神経系』の働きが弱いことが生活リズムを乱す要因として大きいようです。

通常、交感神経系は、朝起きてから日中活動している間に優位に働くよう保たれます。ところが、起立性調節障害の場合、朝起きるべき時間になっても交感神経系が十分に興奮せず、脳や体が十分に覚醒できない状態が続いてしまうため、朝起きられないのです。

自律神経系が乱れる要因は、ストレス低体温、ホルモンバランスの乱れ(思春期に多い)、栄養不足、睡眠不足、など様々あります。

起立性調節障害の人の典型的な生活リズム

起立性調節障害の人は朝起きるのが苦手です。しかし、午後になると体調は少し良くなって、夕方や夜には症状が改善して普通に生活することが出来る場合もあります。起立性調節障害の人が送る典型的な生活リズムをご紹介します。

朝は交感神経系が働きにくい

通常、通勤や通学のために朝7時に起きる生活習慣を送っている人の場合は、朝7時頃になると自然と、もしくは目覚まし時計などの音の刺激などで、交感神経系のスイッチが入って脳が覚醒し、起床することが出来ます。

しかし、起立性調節障害の場合は交感神経系の働きが弱いため、朝起きるべき時間になって、目覚まし時計が鳴り響いても、親が怒鳴って起こしても、交感神経系のスイッチが入りません。ぼんやりと声や音は聞こえていても、脳が十分に覚醒せず、半分眠ったままの状態なのです。

夕方になると交感神経系のスイッチON

起立性調節障害のもう一つの特徴として、夜寝付きが悪いという症状がありますが、その前段階として、『夕方になると元気が出てくる』場合が多々あります。

朝や午前中に働きが弱かった交感神経系が、午後や夕方になるとようやくエンジンがかかってきて、脳や体が覚醒した状態になるためです。起立性調節障害の場合、午後や夕方が普通の人の朝の体の状態に近いと言えます。

午前中よりも交感神経系の働きが良くなるため、起立したときのめまいや立ちくらみと言った症状も軽くなったり、起こりにくくなるなど、夕方になると起立性調節障害の症状も改善する場合が多いです。(人によって症状の現れ方は異なります。)

夜になると交感神経系が最高潮

朝7時ぐらいに起きる人であれば眠たくなる夜11時ごろ。普通はこの時間になると交感神経系の働きは弱くなり、代わりに副交感神経系が優位に働き出します。しかし、起立性調節障害の場合、この時間になっても交感神経系の働きが弱くならず、脳の覚醒が保たれた状態、普通の人の感覚で言うと夕方くらいの状態にあります。

そのため、次の日の学校や会社のことを考えれば、ベッドに入って眠りにつかなくてはならない時間になっても眠たくならず、ベッドの中で数時間羊を数え続けることになるのです。

こうして、朝は起きずに夜は遅くまで起きているという生活リズムになってしまうため、起立性調節障害はどうしても『怠け』や『甘え』と誤解されてしまいがちなのです。

しかし、こうした生活リズムになってしまうのは、多くの場合で本人が意図したものではなく、体の機能障害によるれっきとした病気の症状なのです。

また、起立性調節障害の症状が現れる根底には常にストレスが関わっています。起立性調節障害を発症する子どもは、家庭内や学校、生活の中で何らかのストレスを抱えている可能性もあります。

生活リズムを改善させるべきか

起立性調節障害は症状が軽い場合、努力をして早寝早起きの生活習慣を身に付ければ、なんとかその生活を送ることが可能です。

しかし、症状が重たい場合、いくら努力をしても、本人の意志に関わらず、例えば生活の中の小さなストレスなど、ほんの少しのきっかけで、生活リズムがすぐに乱れてしまいます。また、症状が重たい人にとっては、普通の人と同じような、早寝早起きの生活を送ろうと努力すること自体が苦痛でさえあります。

中学や高校に通う子どもたちにとって、早寝早起きが出来ないということは、遅刻や欠席になりやすく、常に学業や進学に対する不安が付きまといます。

しかし、仮に自分の子どもが起立性調節障害の症状に苦しんでいるとき、それでも無理矢理にでも普通の人と同じように朝起こして、学校に行かせることが、果たして本人のために本当に良いことなのか、これは家族でよく考えていかなくてはいけない問題です。

勉強や進学の面だけで言えば、今はフリースクールやインターネットを通した通信教育なども発達してきており、その気さえあればいつでもどこでも勉強することが可能ですし、通信教育でも高卒の資格は取れますので、大学の進学も可能です。

人と同じ生活リズムを送れないことは、症状に苦しむ本人が一番つらい思いをしているところですので、無理強いせず、色々な選択肢を考慮してみると良いでしょう。

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