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甲状腺ホルモン(英:Thyroid hormone) は、甲状腺から分泌される、エネルギー産生に関与するホルモンです。このホルモンの代表的な働きは、『細胞の新陳代謝を活性化すること』により『生物の活動をコントロールすること』です。私達が生活する上でのエネルギーを生み出す、非常に重要な役割を果たしているホルモンです。

甲状腺ホルモンの特徴

甲状腺は喉仏(のどぼとけ)のした辺りにある、蝶が羽を広げたような形をしている臓器です。甲状腺ホルモンはチロシン(アミノ酸)や、ヨウ素(ミネラル)によって合成されるホルモンです。

甲状腺ホルモンにはサイロキシン(T4)と、トリヨードサイロニン(T3)の2種類があり、甲状腺では主にT4が合成され、肝臓や腎臓でT3に変換されます。ホルモンとしての働きは主にT3が担います

甲状腺ホルモンの合成経路
甲状腺ホルモンの分泌を促進するのは、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)で、甲状腺刺激ホルモンは甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)により分泌が促進されるという、なんとも回りくどくややこしい性質があります。

(1)脳視床下部|甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)

(2)脳下垂体|甲状腺刺激ホルモン(TSH

(3)甲状腺|甲状腺ホルモン(T4,T3)

(4)肝臓・腎臓|甲状腺ホルモン(T4がT3に変換される)

甲状腺ホルモンの効果

甲状腺ホルモンの効果は、全身の細胞の新陳代謝を活性化させることにあり、その影響も全身に及びます。

  • 細胞の新陳代謝を活性化させる
  • 脳細胞や体細胞の成長や発育を促進させる
  • 基礎代謝量を向上させる
  • 交感神経系を刺激して脈拍を速める。
  • 脂肪燃焼の促進
  • 美肌

甲状腺ホルモンが不足すると

甲状腺ホルモンが不足すると以下のような症状が現れやすくなります。

甲状腺ホルモンの不足による主な症状
疲れやすい(細胞の新陳代謝が低下するため)/気力低下/体重増加・肥満/新陳代謝低下/筋力低下/眠気、過眠/気分の落ち込み・抑うつ/肌荒れ、シワ・シミ増加/皮膚の乾燥/脈拍低下/体温低下・低体温/発汗低下/首(甲状腺)の腫れ

甲状腺ホルモンが不足する原因

海産物を摂取することが多い日本人の場合、甲状腺ホルモンの原料となるヨウ素(昆布など海藻類に多く含まれる物質)が摂取不足になるケースは少ないため、甲状腺ホルモンが不足する原因は、『慢性甲状腺炎』や甲状腺の機能低下を起こす『甲状腺機能低下症』である可能性が高いと考えられます。また、甲状腺の疾患は、男性よりも女性が発症する割合が高く、発症比率は[男性1:女性10]程度とされます。

甲状腺ホルモンが過剰だと

甲状腺ホルモンの分泌が過剰になると以下のような症状が現れるやすくなります。

甲状腺ホルモンの過剰時の主な症状
疲れやすい(細胞の過活動により)/息切れしやすい/体温上昇(微熱)/発汗増加/頻脈・脈拍増加/寝付きが悪い、眠りが浅い/食欲の増加/(多くの場合)体重の減少/(稀に)体重の増加/手足の震え/抜け毛が増える/喉の渇き/イライラ、集中力低下/眼球突出

甲状腺ホルモンが過剰になる原因

甲状腺ホルモンの過剰分泌は、甲状腺の機能が異常に活発になる『甲状腺機能亢進症』によって引き起こされます。自己免疫疾患の一種であるバセドウ病も、甲状腺機能亢進症を引き起こす代表的な疾患です。甲状腺機能亢進症は男性よりも女性が罹患しやすい疾患で、特に20~30代の若い女性が発症する割合が多いのが特徴です。

ストレスと甲状腺ホルモン

ストレスが甲状腺ホルモンの分泌バランスに影響を与えることが様々な研究で示唆されています。今のところ、ストレスが甲状腺の分泌バランスに異常を起こすという明確な原因は分かっていませんが、どうやら有力な原因の一つとして考えられるのが、ストレスによる免疫機能の異常です。

人の体はストレスに晒されると、免疫機能が低下することが分かっています。免疫機能は通常、ウィルスや細菌など、自分の体に害をなす有害物質だけを狙って働きますが、長期間ストレスに晒さると、免疫機能の低下だけでなく、免疫機能が自分の体を誤って攻撃する、自己免疫異常を起こすことが考えられます。

花粉症や喘息、アトピー性皮膚炎などのいわゆる『アレルギー症状』や、間接の痛みを引き起こす『リウマチ』が自己免疫異常の代表として挙げられます。

こうした自己免疫異常による、免疫細胞の攻撃が甲状腺に対して行われることがあり、これがバセドウ病や慢性甲状腺炎のような症状を引き起こすと考えられています。

繰り返しとなりますが、こうした甲状腺の疾患に繋がる、自己免疫異常を引き起こす原因の一つとして考えられているのが、ストレスなのです。

疲労と甲状腺ホルモン

甲状腺ホルモンは全身の細胞の新陳代謝を活性化させる作用があるため、甲状腺の働きが過剰にせよ低下するにせよ、異常を来たすと、細胞の新陳代謝に何らかの影響が出ます。甲状腺機能が過剰な場合も低下している場合も、共通して現れる自覚症状が『疲労』です。

過剰な場合の疲労
まず、甲状腺の機能が亢進(過剰に機能している)している場合、全身の細胞や臓器での新陳代謝が活性化しすぎて、エネルギーがじゃぶじゃぶと使われる状態が起こります。エネルギーが通常よりも大量に消費されるため、肉体は、より短時間で疲労を起こしやすくなります。

また、甲状腺ホルモンは交感神経系の働きを亢進させるため、甲状腺の機能が過剰な場合、交感神経系も通常よりも興奮した状態になるため、寝付きが悪くなったり、眠りが浅くなったりと、睡眠の質が悪くなるという症状も起こります。

御存知の通り、睡眠は疲労を回復するための最も有効な手段ですが、睡眠の質が悪くなるということは、それだけ疲労が蓄積しやすくなるため、これもまた、肉体の疲労に繋がるのです。

低下した場合の疲労
甲状腺の機能が低下した場合にも、疲労が起こります。

甲状腺ホルモンは、全身の様々な臓器や細胞の新陳代謝に関わるため、甲状腺の機能が低下して、甲状腺ホルモンの分泌が少なくなると、その分だけ全身の臓器や細胞の代謝サイクルが遅くなり、肉体の活動エネルギーを効率的に産生できなくなるため、普段よりもすぐに疲れやすくなったり、全身の倦怠感やダルさを感じやすくなるのです。

また、筋肉細胞の新陳代謝が落ちることで、筋肉量の低下が起こりやすくなり、筋肉量の低下も疲労が起こりやすい原因として考えられます。

甲状腺の代表的な疾患

  • 甲状腺機能亢進症
  • バセドウ病(自己免疫疾患)
  • クレチン症(先天性疾患)
  • 慢性甲状腺炎(自己免疫疾患)
  • 甲状腺機能低下症(女性の場合、産後一時的に罹患することもある)

photo credit: Deep Silence (license)