起立性調節障害になりやすい思春期の鉄分不足

自律神経系の働きの乱れによって、思春期の子どもや中高生の間で起こる起立性調節障害は、鉄分不足によって症状が悪化したり、発症する可能性を高まってしまいます。鉄分不足が起立性調節障害を招く理由などをご紹介します。

思春期に起こりやすい鉄分不足

鉄分は不足すると貧血を起こす物質として広く知られています。特に思春期を迎えた女子は鉄分不足になりやすく、それが女子が男子よりも起立性調節障害を起こしやすい原因の一つとして考えられています。

鉄分の働き

体内での鉄分の働きを簡単におさらいします。

ヘモグロビンの材料
鉄分は、血液中で酸素を運ぶ役割を担っている『ヘモグロビン』の材料です。血中のヘモグロビンの量が減ると、その分血中の酸素が少なくなるため、脳や筋肉が酸欠を起こして、体力の低下、めまいや立ちくらみ、貧血、低血圧、低体温、疲労、息切れなど、まさに起立性調節障害の症状を起こしやすくなります。

神経伝達物質の材料
鉄分は、脳内で働くセロトニンドーパミンノルアドレナリンといった、交感神経系の働きに深く関与する神経伝達物質の合成に必要な栄養素でもあります。

セロトニンやノルアドレナリンの不足は、交感神経系の働きが減弱する原因となるため、鉄分が極端に不足することで交感神経系の働きが弱くなり、起立性調節障害を起こす可能性が高まります。また、ドーパミンの不足は、意欲の減退を招くため、学習意欲や学校に登校するという意欲も損なわれる可能性があります。

筋力低下を招く
鉄分は、血中の酸素を筋肉細胞内へと運ぶの『ミオグロビン』という色素成分の材料としても働きます。鉄分不足は、ミオグロビンの不足に繋がり、細胞へ酸素が行き届かなくなりやすくなり、筋力の低下を起こしやすくなります。起立性調節障害を起こす原因の一つとして、下半身の筋力が不足していることが挙げられています。

女子は鉄分が不足しやすい

生理が始まる思春期以降の女子は出血で血液が失われる際に一緒に鉄分も失われてしまうため、特に鉄分が不足しやすい傾向にあります。男子よりも女子のほうが起立性調節障害を起こしやすい理由の一つに、生理によって鉄分不足しやすいという点が挙げられます。

また、単なる生理による一時的な貧血だと思っていたら、実は慢性的な鉄分不足で起立性調節障害に陥っている、ということも考えられます。めまいや立ちくらみの他、気分の落ち込みのような症状が長く続く場合は、一度病院で起立性調節障害に関する診察を受けてみたほうが良いでしょう。

鉄分の吸収を妨げる食品にも注意

鉄分は他の物質と結合しやすい物質です。鉄分と結合しやすい物質を含む食品を多く摂取することで、鉄分の吸収率が下がり、さらに鉄不足を起こす可能性があります。

鉄分の吸収を妨げる食品には以下のようなものがあります。

お茶・コーヒー・赤ワイン(タンニン)/ほうれん草・小松菜(シュウ酸)/食物繊維/大豆・玄米(フィチン酸)/カルシウム/リン酸(加工食品に多く含まれる)

これらの食品や物質は摂取してはいけないわけではなく、偏食や過剰摂取に気をつけて、栄養バランス良く食べれば問題ありません。また、食べ方を工夫すれば問題ない食材もあります。例えばほうれん草に含まれるシュウ酸は、茹でて洗えば問題ありません。

学校の健康診断だけでは逃されやすい隠れ鉄不足

体内の鉄分は、働き方や場所によって、『機能鉄』と『貯蔵鉄』という呼び方で分けられます。

機能鉄の不足は判明しやすい
機能鉄とはヘモグロビンやミオグロビンのように、生命維持に必要不可欠な酸素を運ぶ機能を担っている鉄のことで、一般的な健康診断では、これらの量が測定されますので、血液検査をすれば不足しているかが分かります。

貯蔵鉄は不足が判明しにくい
もう一方の貯蔵鉄は機能鉄の量を一定に保つ役割を担っており、肝臓や脾臓に蓄えられていますが、一般的な検査では、貯蔵鉄の量は測定されません。検査で機能鉄の量に異常が無い状態でも、実は貯蔵鉄が不足しているために、それが貧血や倦怠感、日中の眠気、イライラなどの原因となっていることがあります。

貯蔵鉄の減少は一般的な検査では表面化しにくいため、この貯蔵鉄が不足した状態を『隠れ鉄不足』と呼びます。起立性調節障害の症状を抑えるには、鉄分が充足しているかどうかの目安として、一般検査では見つかりにくい貯蔵鉄の不足を調べることも重要なのです。貯蔵鉄の量を知るには、内科や婦人科で『フェリチン』という物質の量を採血して調べてもらえばわかります。

photo credit:Dizzy! by Lukas Benc