頭痛が起こる原因の一つとして、体内のセロトニンの働きが関係している可能性があります。セロトニンは脳内で働く神経伝達物質で、自律神経系との関係が深い物質です。また、痛みを抑制する働き、血管の収縮作用など、頭痛の発生に関係がある作用をいくつか持ち合わせています。

セロトニンと頭痛

頭痛の発生とセロトニンの関係を、大きく3つに分けて紹介します。

  • 脳内のセロトニンによって起こる頭痛
  • セロトニン不足によって起こる頭痛
  • 血液中のセロトニンによって起こる頭痛

脳内のセロトニンによって起こる頭痛

脳内にある視床下部には、人体の様々な中枢が集まっています。その中にセロトニンを合成するセロトニン神経があります。

セロトニン神経と、セロトニン神経から合成されるセロトニンは、呼吸や脈拍などをコントロールする自律神経系と密接な関わりを持ち、心身の活動やストレスなどに反応して、脈拍、血圧、呼吸、などを調節するために分泌される抗ストレス作用を持つ物質でもあります。

血圧上昇で頭痛が起こる場合がある
セロトニンはストレスに反応する物質であるため、心身にストレスが掛かると、働きが活発になります。

セロトニンは自律神経系のうち、交感神経系の働きと同調して働きます。ストレスによって交感神経系が興奮すると、セロトニンの働きは活性化し、血管の周囲の筋肉をを収縮させて血圧を高め、血流は制限されます。このとき、人によっては脳の血圧が高まることで頭痛を起こす場合があります。

血圧低下で頭痛が起こる場合がある
ストレスを感じる状況が過ぎると、交感神経系の興奮は収まって、副交感神経系が働き、セロトニンによる血管の収縮も緩和されて、血圧が低下、血流が改善します。血圧が上昇した状態から急激に低下したときに頭痛を感じる人もいます。

これらの頭痛は、セロトニンやセロトニン神経が、自律神経系の働きに反応して血圧の上昇や低下に作用した結果として起こるタイプの頭痛といえます。

セロトニン不足によって起こる頭痛

慢性的なストレスでセロトニン神経の働きが悪くなり、セロトニンが不足することがあります。セロトニン神経の働きが悪くなると、自律神経系の働きにも乱れが生じやすく、いわゆる『自律神経失調症』の諸症状を起こす場合があります。

自律神経失調症の症状は多岐に渡りますが、その症状の一つに頭痛があります。慢性ストレスを抱えて自律神経の働きが乱れると、交感神経系が過度に興奮した状態が続き、血圧が高い状態が続き、血流が悪化することなどが頭痛を起こす原因となると考えられます。

これはセロトニンそのものが頭痛を起こす、ということではなく、セロトニンが不足することで頭痛を起こしやすくなったり、感じやすくなる、という考え方です。

痛みに敏感になる

セロトニンは、体の痛みを抑制する働きを持っています。そのため、慢性ストレスや自律神経系の乱れなどによって、セロトニンが不足すると、『痛みの閾値』が下がり、痛みを感じやすくなります。

痛みを感じやすくなる、つまり痛みに敏感になると、今までは感じなかったような頭痛を感じやすくなったり、頭痛が悪化しやすくなることが考えられます。

血液中のセロトニンの関与によって起こる頭痛

脳内の神経細胞間で神経伝達物質として働くセロトニン以外に、血液中にもセロトニンは存在します。血液中のセロトニンの多くは血小板の中に収納されており、必要に応じて血中に放出され代謝されます。

血液中のセロトニンは血管収縮作用を持ち、交感神経系の興奮に呼応して血管の周囲の筋肉を収縮させて、血流を制限し血圧を上昇させます。

血中のセロトニンによって血管の収縮が脳内で起こることが偏頭痛の原因の一つであると考えられています。

女性が頭痛を起こしやすいワケ

男女で頭痛を起こす割合は、[男性1:女性4]と圧倒的に女性が多いことが知られています。女性が頭痛を起こしやすい理由は、女性特有の月経周期で発生するPMS(月経前症候群)、そしてセロトニンの分泌変化などが関係していると考えられます。

PMSと頭痛
女性の場合、月経周期により女性ホルモンの分泌変化が起こります。女性ホルモンの分泌変化は、自律神経系の働きにも影響を与え、自律神経系の働きが乱れてしまうことがPMSを起こしやすくなります。頭痛はPMSの主要な症状に数えられます。

女性はセロトニンが不足しやすい
女性ホルモンの分泌変化によって、セロトニンの分泌変化も起こりやすくなります。女性ホルモンの分泌の乱れは、自律神経系を乱し、自律神経系の乱れはセロトニン神経の減弱につながるためです。実際、女性は男性よりもセロトニンが不足しやすいと考えられています。

セロトニン神経が弱ることや、セロトニンが不足することは、前述のように頭痛を起こす原因になると考えられます。

セロトニンが関係する頭痛を予防するには

今回ご紹介した、セロトニンが関係していると思われる頭痛は、ストレスやストレスから来る自律神経系の乱れなどが原因となって起こります。こうした頭痛を予防するには、ストレスを防ぐことが最も重要です。

セロトニンは、ストレスを緩和させる働きも持つ物質ですから、セロトニン神経を活性化させ、セロトニンを増やすことは長期的にストレスに強い心身を作ることに役立つでしょう。

セロトニンを増やすには、『セロトニンを増やす方法』をご覧ください。


参考:日本内科学会雑誌-「セロトニンと片頭痛

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