起立性調節障害は、自律神経系や循環器系の未成熟な思春期の子どもが発症しやすい病気で、心身の成長や時間の経過と共に、多くの場合で成人する頃には症状が改善されると言われていますが、大人になっても起立性調節障害の症状に悩まされ続けている人も沢山いるのです。

大人になっても起立性調節障害が改善しない原因

思春期に起こる起立性調節障害の原因は、大きく分けて『自律神経系の働きの乱れ』と、『血管など循環器系の未発達』が挙げられます。

思春期の子どもの場合、急速に体が成長していく過程で、一部の機能の発達が体の成長に追いつかないことが、起立性調節障害の症状として現れるのです。

大人で起立性調節障害の症状が残っている人の多くは、自律神経系の働きが、引き続き乱れてしまっていることが考えられます。そして、子供の頃から続く自律神経系の働き乱れは、長年の生活の中で慢性化した頑固なもので、治療が非常に難しいのが特徴です。

自律神経系が乱れる原因

ストレス
ストレスは自律神経系の働きが乱れる大きな要因です。特に思春期の頃に何らかのストレス経験(いじめや学校、家庭での悩みなど)をした子どもが、そのストレスを心のなかに抱えたまま成長すると、大人になってもそのストレスがまるでトラウマのように付き纏い続けて、心身のバランスを崩す大きな原因になることもあります。

副腎疲労
長期間に渡ってストレスが続くと、ストレスに対抗するために分泌されている、ストレスホルモンを消費し続けます。代表的なストレスホルモンであるコルチゾールやアドレナリンは、副腎から分泌されていますが、ストレスホルモンの分泌量が過剰に増え続けると、副腎が疲弊してストレスホルモンを分泌させる機能が低下してしまう、『副腎疲労』という状態に陥る場合があります。

ストレスホルモンは、自律神経系のうち、交感神経系を興奮させるホルモンであるため、副腎疲労を起こしてストレスホルモンの分泌量が減ると、交感神経系が十分に興奮することができなくなり、自律神経系の働きが乱れる原因となるのです。

生活習慣の乱れ
思春期に起立性調節障害を発症する子どもの中には、そのときの生活習慣に何らかの問題を抱えている場合もあります。

昼夜逆転の生活、夜更かしや睡眠時間の不足、朝ごはんを食べない、不登校、運動習慣がない、外で遊ばない、家庭での会話が少ない、など、子どもの発育に相応しくない生活習慣が、言わば常態化してしまうと、それが自律神経系の働きに影響を与えるばかりでなく、そうした生活習慣から大人になっても抜け出せなくなることが、起立性調節障害の症状が大人になっても残ってしまう原因になってしまうのです。

運動不足
児童にとっての運動習慣の形成は、その後の自律神経系の発達に貢献します。正常な自律神経系は昼間に交感神経系が優位に働き、夜には副交感神経系が優位になります。

起立性調節障害の場合は、特に交感神経系の働きが弱いことで、脳の覚醒や血液の循環が悪くなることが多いため、運動によって交感神経系を刺激することが、症状そのものの治療にも役立つのですが、症状が重い場合などで、運動を常に忌避してきた人の場合、大人になっても交感神経系への刺激が十分に行えないことで起立性調節障害の症状が継続してしまうことが考えられます。

太陽光を浴びていない
太陽光は交感神経系を刺激するシグナルです。

朝起きたときに太陽光を目の網膜が感じることで、その刺激が脳へ到達し、交感神経系が刺激されて脳が覚醒する、というのが、自然な目覚めですが、起立性調節障害の場合、朝起きることができないため、太陽光を浴びるという習慣が無いことが多く、これが症状を悪化させる原因の一つにもなっているのです。

実際、起立性調節障害をはじめ、自律神経失調症や自律神経系の働きの乱れが原因と考えられる病気では、太陽光を浴びる日光浴を治療の一環として取り入れたり、太陽光を模した眩しい光を当てる『高照度光療法』も効果的な治療法の一つです。

セロトニン不足
セロトニンは、脳内で働く神経伝達物質の一種で、交感神経系と連動して、脳の覚醒や血管の拡縮に作用しています。その他にも、精神安定やストレス緩和など、情動の制御にも作用します。

実は、自律神経系が乱れる原因として挙げた、ストレス、生活習慣の乱れ、運動不足、太陽光を浴びない、と言った要素はいずれも、同時にセロトニンの不足を招くものでもあります。

セロトニンが不足すると交感神経系への刺激も弱くなり、それが血管の拡縮などへの影響となって、起立性調節障害の症状悪化に繋がっている可能性があります。

また、セロトニンの不足は、やる気の喪失、抑うつ、無気力、気分の落ち込みと言った精神症状にも現れ、起立性調節障害の改善努力や、社会との繋がりを持つ努力などの気力を奪い、社会からの脱落や途絶、大人の引きこもりを助長してしまうのです。

大人になってから起立性調節障害だと自覚する人も多い

意外なことに、自分が起立性調節障害だと気付かずにそのまま成長してきた人もたくさんいます。

これは症状が比較的軽いため、日常生活は辛いけど、なんとか頑張って朝起きたり、夜眠ったりすることが出来てきたという人たちが多く、病気であるという認識は無く、「朝が苦手なだけ」、「自分は低血圧」、「甘えてるだけ」、「体力がない」などと、誤った解釈をしてしまっているためです。

こうした軽い症状の人たちが、自分が起立性調節障害であるということに気づいた、知ったというきっかけになるのが、大人になってから突然、症状が悪化sしたときです。

大人になってからの症状の悪化は、生活環境の変化によってもたらされます。それまでののんびりとした学生生活と異なり、成人後、社会に出て仕事を始めると、初めて感じる仕事のプレッシャーやストレスが、心身に重くのしかかります。

そうしたストレスが自律神経系の働きの乱れを悪化させることで、それまではなんとかやって来れた、起立性調節障害の症状が一気に悪化して、突然『朝体が動かない』『疲れているのに夜眠れない』と言った症状に直面することがあるのです。

また、就職先によっては夜勤やシフト制の勤務形態の場合もあり、こうした生活リズムの変化も、自律神経系の働きが乱れる大きなきっかけとなります。

太陽光が起立性調節障害改善の第一歩

自律神経系の乱れからくる起立性調節障害の症状は、ストレスや生活習慣、生活リズムなどが原因の根本にあることが多く、症状を改善するには、根本にある生活習慣の乱れなどを根気よく少しずつ改善していくしかありません。

特に、起立性調節障害の人が苦手なのが、普通の人のように『朝起きて夜眠る』ということです。この当たり前のような生活習慣を送ること自体が困難であることが、起立性調節障害という病気の難しいところでもあります。

生活習慣を改善する第一歩となるのは、起立性調節障害の人が特に苦手な『朝に太陽光を浴びる』という習慣を作ることです。

太陽光は起立性調節障害で弱りがちな、交感神経系への刺激が特に強く、習慣化することで確実に交感神経系のトレーニングになります。また、朝交感神経系を刺激することで、乱れがちな体内時計の働きを調節する効果も期待できるため、自律神経系の働きが改善して、夜の寝付きの悪さや眠りが浅いのを改善する効果も同時に期待できます。

また、太陽光を浴びると言っても、特に起き上がったり、外に出たりする必要はありません。カーテンを開けて部屋の中に太陽光が入るようにしましょう。

太陽光が浴びれない人は光目覚ましを

夜勤やシフト制の仕事の人、部屋に太陽が当たりにくい人など、何らかの理由で朝太陽光を浴びられない人は、決まった時間になると光を発してくれる光目覚ましがお勧めです。

光目覚ましは、朝日に似た強力な光を時間になると自動的に照射して、自然に目が覚める手助けをしてくれるため、起立性調節障害によって起こる自律神経系の働きの乱れを改善することも期待できるのです。

また、ベッド近くに置くだけで良いため、腰が重くなりがちな通院治療とは異なり、自宅にいながら、またベッドに寝転がったままでも手軽に試すことができます。

詳しくは『光目覚まし時計』をご覧ください。

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