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現代人に多い人間関係や仕事、勉強などに起因する心理的なストレス。こうしたストレスに打ち勝つには、脳内の神経伝達物質セロトニンの働きが重要となります。ストレスとセロトニンの関係についてご紹介します。

セロトニンはストレスをコントロールする

セロトニンには、ストレスによって生じるネガティブな感情にブレーキをかけて、心を安定させる働きがあります。ネガティブな感情とは、いらいら、不安、恐怖、抑うつ、怒り、衝動、攻撃性などのことで、ストレスによってこうした感情が暴走しないようコントロールしているがセロトニンです。

セロトニンは自律神経系のバランスを整える

セロトニンがストレスにより生じるネガティブな感情をコントロールする具体的な仕組みは、セロトニンと自律神経系との関係から垣間見えます。

ストレスで交感神経系が過度に興奮するのを抑制
人の脳はストレスを感じると、脳の『視床下部』が反応し、視床下部からの司令で自律神経系が刺激を受け、交感神経系や副交感神経系が興奮します。交感神経系の興奮は、ノルアドレナリンやアドレナリンの分泌を促進させ、血圧上昇、心拍数増加、瞳孔拡大、発汗、筋力増強、痛覚遮断などの身体反応と共に、脳を強く覚醒させ、集中力や攻撃性の増加、精神の高揚を引き起こします。

こうしたストレスによる脳の興奮が行き過ぎると、攻撃性が増して暴力に走ったり、強い口調で相手を罵ったり、所構わず泣き叫んだりしてしまうことがあります。

また、交感神経系の興奮は、同時にイライラ、怒り、不安、恐怖など精神的な感情の増幅にもつながります。

セロトニンは、ストレスによって交感神経系が過度に興奮するのを防ぎ、適度な興奮状態を保てるように働いているのです。

セロトニンにより睡眠の質が上がり、ストレスが解消しやすくなる

ストレスとセロトニンの両方が関係するのが『睡眠』です。

人はストレスを受けると、交感神経系が興奮して脳が覚醒してしまうため、寝付きが悪くなったり、眠りが浅くなるなど、睡眠の質が低下しやすくなります。

睡眠は、ストレスを解消する最も手軽で有効な手段であり、睡眠の質が低下することは、ストレスが解消されずに、次第に蓄積していく悪循環を生み出します。

交感神経が昂ぶるのを抑える
セロトニンは、交感神経系が過度に昂ぶるのを抑制してくれるため、セロトニンが充足していると、睡眠の質が低下するのを防ぎ、その結果ストレス解消をしやすくなるということが言えるのです。

セロトニンが睡眠に与える影響はそれだけではありません。

メラトニンの合成
セロトニンから合成される『メラトニン』は強い催眠作用を持つ睡眠ホルモンです。メラトニンは太陽が沈んで夜になると分泌されて、眠気を催す作用があります。

メラトニンの合成にはセロトニンが必要となるため、セロトニンは以下のような形で睡眠の質の向上とストレス解消に寄与しています。

セロトニン→メラトニン合成→睡眠の質向上→ストレス解消

ストレスがもたらすセロトニン不足

心の安定とストレス解消に欠かせないセロトニンですが、ストレスとセロトニンは相互に関係しており、セロトニンがストレスを解消するのと逆に、ストレスによってセロトニン不足が起きる場合があります。

慢性ストレスでセロトニンの分泌が抑制される

ストレスに対する反応は、『HPA軸(視床下部-下垂体-副腎系、Hypothalamic-Pituitary-Adrenal Axis)』の相互作用により制御されています。

ストレスを受けると脳内の視床下部が刺激され、副腎からストレスホルモン『コルチゾール』が分泌されて、血糖値の維持、脳の覚醒、血圧上昇などの働きをします。

このとき、視床下部はコルチゾールの分泌を司令するのと同時に、脳内のセロトニン神経の働きを抑制する司令を出すため、セロトニンの分泌は減少してしまうのです。

また、視床下部からの司令により、交感神経系が興奮し、カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)が分泌され、血管収縮、心拍数増加などが起こります。セロトニンはカテコールアミンの暴走を抑えるために消費されます。

一時的なストレスはさほど問題ではない
例えば、「車を運転していたら、横道から子どもが飛び出してきたが、ぶつからなかった。」というような一過性のストレスであれば、一時的なセロトニンの減少だけで済むため、慢性的なセロトニンの不足には至りません。

ただし、一過性のストレスでも、戦争や災害、性的被害など、トラウマが残るような激しいストレスを受けると、PTSDなどを発症しやすくなります。

逃れられない慢性ストレス
現代社会では、会社や学校での人間関係や、仕事や勉強のプレッシャーなど、毎日逃れることが出来ない、継続的なストレスが多いため、日々続くストレスに晒され続けて、その度セロトニン神経は酷使されていき、やがて疲労によってうまく働かなくなってしまうことがあるのです。

このように、慢性的なストレスによってセロトニン神経がうまく働かなくなると、次第に抑うつ症状が現れるようになり、原因不明の痛みを感じたり、PTSDや、パニック障害、社会不安障害などの他、うつ病不眠症を発症するようになります。

ストレスによるセロトニン不足を防ぐには

ストレスが続くとセロトニンが不足してしまいますが、それを防ぐ鍵は『オキシトシン』という物質が握っています。

オキシトシンは『幸せホルモン』や『愛情ホルモン』などと呼ばれ、人が幸せを感じたときに分泌される物質です。具体的にはグルーミングと言う人と人との触れ合いや、語り合い、理解しあったときの共感などで分泌が促進されます。

オキシトシンが多く分泌されていると、人はストレスを感じにくくなります。そしてその結果、セロトニン神経の働きが抑制されるのを防いでくれるのです。オキシトシンによるストレスの抑制は以下のような図式で成り立ちます。

オキシトシンが視床下部のストレス反応を抑制する
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ストレスに鈍くなる
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視床下部によるセロトニン神経の抑制が緩和される

まとめ

ストレスを解消するにはセロトニンの働きが欠かせません。しかし、セロトニンはストレスが続くと次第に疲弊して、その働きは損なわれてしまいます。セロトニンが不足しないようにするには、ストレスを減らす必要があるというジレンマが起こるのです。

こうしたジレンマを解消するには、オキシトシンの働きが重要です。

現代社会に生きる私達が感じるストレスの多くは、人と人との関わりの中で生じるものです。ところが、皮肉なことに、そうしたストレスを解消したり緩和してくれる(オキシトシンやセロトニンの分泌)のも、人と人との関わりの中から生まれてくるものです。

人との関わりが希薄になりつつある現代ですが、ストレスとうまく付き合っていくには、家族や友人、恋人などとの関わり方を見つめ直すことが必要なのかもしれません。それはもしかしたら、生き方そのものに関わることかもしれませんが。

photo credit: juhansonin I’m ready for my close up. (license)