セロトニンは加齢とともに減少する

記憶などを司る脳の神経細胞は、一般の体細胞とは異なり、分裂したり再生することがほとんどありません。そのため、脳の神経細胞は加齢やその他何らかの原因によって少しずつ減少してしまいます。この神経細胞の一種にセロトニン神経も含まれます。セロトニン神経の減少による影響などをご紹介します。

セロトニン減少による年齢への影響

加齢によりセロトニン神経が減少すると、神経間で情報伝達をする物質セロトニンそのものも減少します。セロトニンは、交感神経系を刺激する働きをしているため、セロトニンの減少は交感神経系の働きを弱くする恐れがあります。

特に加齢によるセロトニン神経とセロトニンの減少には、以下のような影響が現れやすくなります。

背筋が曲がる
セロトニンが担っている『抗重力筋』への作用が、セロトニン減少により損なわれるため、加齢によって背筋は曲がりやすくなります。背筋が曲がる原因は、骨密度の低下なども当てはまります。

顔が垂れる
顔の表情筋も、セロトニンによって支えられている抗重力筋の一種です。年をとると顔の肉が垂れてきて、いわゆる『ブルドッグ顔』になりやすくなります。

記憶力の低下
セロトニンをはじめとした、脳内の神経細胞が担う、記憶や情報の伝達、蓄積が神経細胞が減少することによって衰えてしまいます。加齢によって記憶力、理解力、集中力、また物事への興味や関心なども失われやすくなります。

セロトニンの減少は老化につながる

背筋が曲がる、顔が垂れる、記憶力が悪くなる、と言うのは、老化現象に他なりません。つまり、セロトニンの減少が進むと、人は老化は進みやすくなるのです。

日本は世界一の長寿国であり、元気なお年寄りがたくさんいますが、一人ひとりを見比べると、同じ年齢でもかなり顔つきや背筋の伸びが違うことがわかります。こうした、見た目に現れる老化の進行には、セロトニンの減少度合いが影響している可能性があるのです。

加齢でメラトニンも減る

加齢によるセロトニンの減少は、セロトニンから合成される睡眠ホルモン『メラトニン』の減少も引き起こします。一般的に歳を取ると、病気を患ったり風邪を引きやすく、また早寝早起きになる傾向がありますが、これはメラトニンが減少した影響であると言えます。

シワが増える
メラトニンには強力な抗酸化作用があり、体内に発生した『活性酸素』などフリーラジカルを除去してくれています。これらの物質は細胞を老化させる物質として知られており、メラトニンが減少すると、活性酸素などの老化物質が発生しやすくなるため、顔や皮膚のシミやシワが増えやすくなります。

体臭の変化,加齢臭の発生
加齢によりメラトニンなどの抗酸化作用を持つ物質が減ると、体臭にも変化が現れます。40歳前後になると臭い出す加齢臭は、加齢によってある種の皮脂の酸化が増えることで発生する体臭の俗称です。

免疫力が落ちる
メラトニンにはリンパ球などの免疫細胞を刺激する作用があり、免疫力を増強・維持する力を持ちます。メラトニンが減少すると、こうした免疫作用が損なわれやすくなるため、病気や風邪にかかりやすくなります。

眠りが浅くなる
年を取ると、朝とても早い時間に起きて、夜は日が沈む頃には眠ってしまいという人が増えます。こうした早寝早起き、または体内時計の前進は、メラトニンの分泌量が低下していることが原因であると考えられています。

メラトニンには強い催眠作用がありますが、加齢によりメラトニンの分泌量が減少すると、睡眠を維持することが難しくなるのです。

尚、年を取ると、運動量が落ちるため、エネルギーの消費が減り、睡眠の必要性自体が低下するということも言われています。

セロトニンの減少を防ぐには

一般的に人は加齢と共に運動量や活動量が下がっていきます。生活における活動量の低下は、加齢によるセロトニンの減少に拍車をかけます。

物を噛まなくなると歯が抜けやすいように、脳や体を動かさなければセロトニン神経はどんどん衰えていくのです。加齢によるセロトニンの減少を防ぐには、以下のような対策が有効です。

太陽光を浴びる
セロトニン神経は太陽光を浴びることで活性化し、セロトニンの分泌も盛んになります。朝起きて日光浴をすることでセロトニン神経が活性化されます。但し、太陽光の浴び過ぎは、紫外線によって皮膚がダメージを受けて、シワやシミを増やす可能性もあるため、一日15分~30分程度が最適な時間です。

軽いリズム運動
セロトニン神経は、一定のリズムを刻む運動(呼吸や脈拍などのような)によって活性化されます。セロトニン神経を活性化させるリズム運動とは、ウオーキングや水泳、踏み台昇降運動、スクワットなど、比較的運動強度が低いものでも有効です。

腹式呼吸
普段意識をせずに行う呼吸は、胸式呼吸と呼ばれ、横隔膜を動かして行う呼吸です。腹式呼吸とは、腹筋の力を使って意識的に行う呼吸法で、これもリズム運動の一種です。また、腹式呼吸は禅の修練にも使われるように、心を無にして、ストレスケアも同時に行うことができ、負担も少ないので誰でも試すことが出来ます。

物をよく噛む
ものを噛む、という行為もリズム運動の一種です。顎の筋肉はセロトニンが作用する抗重力筋の一部であり、意識して咀嚼することで、セロトニン神経を刺激することが出来ます。スルメのように固くて噛みごたえのあるものや、ガムなどを噛む癖を付けると良いでしょう。

腸内環境を整える
人の腸と脳は『脳腸相関』といわれるほど、互いに影響し合う間柄で、腸内環境が悪いと、脳にストレスが掛かりやすく、セロトニン神経が不活性化する原因となります。

また、セロトニンの原材料である必須アミノ酸『トリプトファン』は、食べ物から吸収したものが腸内で分解されることで、脳に供給されるため、腸内環境が悪く、消化・吸収がうまくいかないと、原材料であるトリプトファンの供給も減少して、これもセロトニンが減少する原因の一つになってしまうのです。

その他にもセロトニンを増やす方法はこちらからご覧いただけます。

神経新生

年を取ると神経細胞は減る一方であると考えられてきましたが、ある条件下では神経細胞が増えることがあることが分かっています。

これは『神経新生』や『神経発生』などと言われ、運動や学習、ものを食べる(咀嚼)ことが神経新生を活性化させることに有効であるとされ、逆にストレスや睡眠不足は神経新生を滞らせる原因、つまり神経細胞が減って、老化を促進させてしまう原因になるといいます。

神経新生については、まだまだ研究段階ですが、神経新生のメカニズムが解明されていけば、加齢によって神経細胞が減少することで発生するとされている、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症など、また、うつ病やPTSDのように強いストレスで害された神経細胞の回復など、様々な病気の治療へ役立つ可能性があります。

photo credit: Thomas Hawk Old Before Your Time (license)


参考文献
厚生労働省 e-ヘルスネット – セロトニン
国際生命情報科学会誌 – セロトニン神経活性化の臨床的評価:脳波α2成分の発現
NCBI – PMID:1752859
NCBI – PMID:25108244
Wikipedia – セロトニン