お酒好きな人なら、同時にお酒が健康に与える影響にも気を配りたいところです。飲酒習慣を長年続けると、脳内のセロトニン不足を起こすことがあります。セロトニンが不足する過程などをご紹介します。

飲酒がセロトニン不足を招く理由

飲酒によってセロトニンの不足が起きるのには以下のような原因があります。順に説明していきます。

  • ナイアシンの消費増加
  • 腸内環境の悪化
  • 睡眠の質悪化
  • ストレス蓄積

ナイアシンの消費増加

アルコールを摂取すると、肝臓がアルコールを分解するためフル稼働します。アルコールを分解するときに消費されるのがナイアシンです。ナイアシンは、セロトニンの原材料でもあるアミノ酸『トリプトファン』から合成される物質です。つまり、セロトニンとナイアシンは、原材料を共有しています

アルコールを摂取すればするほど、ナイアシンの消費が増えるため、その分脳内へと届けられるトリプトファンの量が減少してしまい、これが長期的にはセロトニン不足へと繋がります。

詳しくは『セロトニンとナイアシン』をご覧ください。

腸内環境の悪化

アルコールを飲むと、胃や腸による消化能力が低下して、腸が食物を分解する能力が低下して下痢を起こしやすくなります。特に高濃度のアルコールは、胃や腸の壁を傷つけて炎症を起こします。こうしたことが腸内環境の悪化に繋がります。

腸内環境が悪化すると、食べ物の栄養を分解する能力が低下するため、食物から得られるセロトニンの原料『トリプトファン』を分解効率が悪くなってしまうため、セロトニンが不足しやすくなります。

睡眠の質悪化

一般的に飲酒をすると、自律神経系が乱れやすくなるため、睡眠時には眠りが浅くなりやすくなります。また、長期間就寝前に飲酒をする晩酌の習慣を続けると、アルコールなしでは寝つけなくなり、寝付きが悪くなります。

睡眠の質の悪化は、脳にストレスを蓄積させることに繋がります。セロトニンはストレスに対抗する作用がありますが、長期間ストレスに晒され続けると、セロトニン神経が弱っていき、次第にセロトニンを分泌する能力が低下してしまうのです。

セロトニンの減少は、セロトニンによって合成される睡眠ホルモン『メラトニン』の分泌減少にもつながり、さらに睡眠の質を悪化させる悪循環に陥ります。

ストレスの蓄積

アルコールはストレス解消に良い、と思われがちです。確かに、お酒を飲みながら人と談笑したりするのはストレスの解消には効果的です。

しかし、アルコールは非常に依存性の強い物質です。

飲酒が習慣化すると、ストレスが無くてもお酒を飲みたいと思うようになり、いつしかストレスを解消することではなく、飲酒をすることが目的になっていることがあります。

こうした状態はアルコール依存症の典型的な初期症状で、仕事中などでアルコールが飲めないとそれ自体がストレスになり、四六時中、お酒のことしか考えられなくなってしまいます。

一人で毎晩お酒を飲むようになると危険信号です。

飲酒習慣の精神的な影響

長期的な飲酒習慣は、前述のように『アルコール依存症』へと繋がります。アルコール依存症は、アルコールへの強い欲求を引き起こし、飲酒量や飲酒時間を自分でコントロール出来ない状態です。

アルコール依存症では、睡眠の質の悪化や脳内のセロトニン神経の減弱によって、『うつ病』を同時に発症しやすくなります。

アルコール依存症は、長期的な飲酒習慣を続ければ誰でもなり得る依存症ですが、特に女性は要注意です。アルコール依存症は男性よりも女性が罹りやすいとされる疾患なのです。これは肝臓の大きさが女性のほうが小さいのと、女性は脳内でセロトニンを合成する力が男性の半分ほどしか無い、というのが理由のようです。

アルコールによるセロトニン不足を防ぐには

私もお酒は大好きで、飲酒でセロトニンが減ってしまうのは困ります。どうすればそれを防ぐことが出来るのか、何か楽な抜け道は無いものか、長年探していますが、一般的に言われる方法以外、これと言って新しい方策は見つかっていません。

アルコールによるセロトニン不足を防ぐには、以下の3つです。

1.飲みすぎない
飲酒は適量に抑えて飲み過ぎ無いようにする。

2.休肝日を作る
毎晩お酒を飲み続けると、肝機能が著しく低下するので、週に2,3日はお酒を飲まない休肝日を作りましょう。

3.寝酒をしない
眠れないので眠るためにお酒を飲む人がいますが、これは非常に危険です。アルコールを飲むと確かに眠れるような気がしますが、アルコールによる眠りは、眠りというよりも気絶に近い状態で、睡眠の質が悪く、脳や体も十分に休まらないため、ストレスが溜まりやすくなります。

現時点でお酒を飲まないと眠れないのであれば、できるだけ早めに医師の診断を受けて下さい。

4.運動をする 運動はストレスの解消に最適です。また、セロトニンを増やす効果も期待できます。お酒を飲む代わりに、軽い運動をする習慣をつければ、健康にもとても良いでしょう。尚、お酒を飲みながら運動をしてはいけません。

セロトニンを増やす方法は色々とありますので、飲酒によるセロトニン不足を予防する意味でも、是非実践してみて下さい。

個人的には、お酒を飲んでも肝臓が壊れたり太ったりと、体に影響が出ないような方法が無いものか、これからも探求していきたいと思います。

photo credit: jev55 Grasp (license)


参考文献
厚生労働省 e-ヘルスネット – セロトニン
国際生命情報科学会誌 – セロトニン神経活性化の臨床的評価:脳波α2成分の発現
NCBI – PMID:1752859
NCBI – PMID:25108244
Wikipedia – セロトニン