女性の生理周期で発生するPMSの症状は、人によって大きく異なり、症状を殆ど感じないという人もいれば、一度症状が起こると、起き上がることもままならないほど重症化する人もいます。PMSの症状が悪化する原因の一つとして考えられるのがセロトニンの不足です。

PMSの原因

PMSが起こる主な原因は、女性ホルモンプロゲステロンエストロゲン)の分泌バランスの変化で、特に排卵日後にプロゲステロンの分泌量が急増することが要因ではないかと考えられています。

PMSの症状や発生期間が人によって大きく違う原因は、そもそも人それぞれ体質によりホルモンの分泌バランスが異なるという点と、生活環境や生活習慣などから受けるストレスの量や種類が違うことなどが考えられます。

セロトニンの不足でPMSは悪化する

PMSの発生原因は人によって異なるものの、PMSが発生するときに起こるイライラ、無気力、不安などと言った精神症状は、脳内でセロトニンが不足することで起こりやすくなると考えられます。

また、腹痛や腰痛、乳房の張りなど、いわゆる生理痛の痛みも、セロトニンが不足すると痛みに弱くなることから悪化しやすくなります。

セロトニンは本来、脳内で働くドーパミンノルアドレナリンなど、様々な神経伝達物質のバランスを保つ働きをしているため、セロトニンが不足すると他の神経伝達物質の暴走により、イライラや不安などネガティブな感情が高まりやすくなる他、セロトニンによる精神安定の作用が損なわれることで、PMSの症状が悪化してしまうことが考えられます。

PMSでセロトニンが不足する原因

PMSが起こるときにセロトニンが不足してしまう大きな原因は、ストレスです。

脳がストレスを受けると、ストレスに対抗するために副腎でコルチゾールというストレスホルモンが生成されます。コルチゾールは、脳内で働くセロトニン神経の働きを抑制してしまい、セロトニン神経からセロトニンの分泌が不足しやすくなります。

女性は元々セロトニンが不足しやすい
女性は男性に比べると、脳内でセロトニンを合成する能力が50%ほど低いと言われており、元々セロトニン不足を起こしやすいのです。そこにストレスや生理周期のホルモンバランスの乱れなどが相乗的に重なることで、さらなるセロトニン不足とPMSの症状悪化につながってしまうのです。

社会構造の変化でストレスが増加
現代社会は、女性の社会進出や家族の核家族化など、社会構造が以前と大きく変化してきており、女性がこれまでよりも活躍しやすい状況になりつつある反面、仕事や家庭、地域、学校など様々な場面でストレスに遭遇する機会が増えており、また、社会全体でも睡眠時間が年々減少するなど、女性の誰もがPMSの症状が悪化しやすい状況にあるのです。

セロトニン不足で同時に起こりやすい不眠

PMSの症状のひとつに不眠や睡眠に関するトラブルがあります。こうした睡眠に関係する症状もセロトニンの不足が関係していることが考えられます。

夜眠るとき、人が眠たくなる理由のひとつに睡眠ホルモンである『メラトニン』が分泌されることが挙げられます。実は、メラトニンは、脳内でセロトニンから合成されるホルモンで、セロトニンが不足しているとメラトニンも不足しやすく、これがPMSが睡眠を妨げる原因となってしまうのです。

また、メラトニン不足によって睡眠が妨げられると、その分ストレスが溜まりやすくなるため、さらにストレス蓄積→セロトニン不足→メラトニン不足→PMS悪化という負のスパイラルが起こりやすいのです。

ストレスでホルモンバランスも乱れやすくなる

ストレスによって分泌が増加するコルチゾールは、『ステロイドホルモン』という種類のホルモンに分類されますが、実は、女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンもコルチゾールと同じステロイドホルモンです。

これらのステロイドホルモンは、原材料を同じくしており、肝臓で合成されるこれステロイドが主原料です。PMS発生時に、何らかのストレスを受けると、コルチゾールの分泌が活発になり、コレステロールの消費が激しくなると、エストロゲンやプロゲステロンに必要なコレステロールが不足してしまうことがあり、これもPMSを悪化させる原因の一つである、『ホルモンバランスの乱れ』にもつながっているのです。

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参考文献
厚生労働省 e-ヘルスネット – セロトニン
国際生命情報科学会誌 – セロトニン神経活性化の臨床的評価:脳波α2成分の発現
NCBI – PMID:1752859
NCBI – PMID:25108244
Wikipedia – セロトニン