アドレナリンとノルアドレナリンの働きの違い
ノルアドレナリンとアドレナリンの働きは、生成される場所(器官)、作用する場所によって異なります。また、両者の最も特徴的な違いは『精神作用の有無』です。ノルアドレナリンは脳内で分泌されると、イライラや不安などの精神作用が生じる一方、アドレナリンはほとんど脳内で分泌されないため、精神作用は限定的です。
生成される場所の違い
ノルアドレナリンは主に中枢神経系の青斑核(せいはんかく)という場所で多く生成され、その他交感神経系の抹消や副腎髄質でも分泌されます。
一方、ノルアドレナリンからアドレナリンを合成するには、『フェニルエタノールアミン-N-メチルトランスフェラーゼ(PNMT)』という酵素が必要で、これがある場所でしかアドレナリンは合成されません。PNMTはほとんどが副腎髄質に分布し、残り少しが脳内の中枢神経系にも一部存在します。
そのため、アドレナリンは副腎髄質でほとんどが合成されます。(一部脳内でも合成されます。)尚、ノルアドレナリンやアドレナリンが分泌される、副腎髄質での両物質の分泌比率は[アドレナリン17:ノルアドレナリン3]とされます。
作用する場所の違い
ノルアドレナリンは脳の中枢系での働きが主で、怒りやイライラ、やる気などの情動や感情に強い影響を与えます。脳がストレスを感知するとノルアドレナリンが放出され、副腎髄質でアドレナリンの分泌を促進して交感神経系を刺激します。
同時に、ノルアドレナリンは副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)を分泌させて、副腎皮質でのコルチゾールの分泌も促進します。つまりストレスホルモンの分泌はノルアドレナリンが起点となっているという見方もできます。
一方、アドレナリンは中枢系ではわずかしか分泌されず、主に副腎髄質で分泌されるため、肉体(血管や筋肉など末梢神経)への作用は強力ですが、副腎髄質で分泌されたアドレナリンは血液脳関門(BBB)を通過することができないため、脳の精神への作用は限定的です。
精神作用の有無による違い
アドレナリンとノルアドレナリンの最も大きな違いは、脳の精神への作用の大きさです。アドレナリンは血圧上昇など交感神経系へ強い作用を持ちますが、脳の中枢神経系へ直接入ることができないため、副腎髄質で合成されたアドレナリンの精神作用はありません。
一方、脳内で直接合成されたノルアドレナリンは、怒りやイライラ、やる気や恐怖心などの感情を生み出します。
また、こうしたノルアドレナリンの精神作用は、ノルアドレナリンが不足するとうつ病や不眠症、また双極性障害などの精神疾患に関わることが考えられます。