双極性障害

双極性障害(英:Bipolar disorder)とは、躁状態(気分が高揚して興奮した状態)とうつ状態(気分が落ち込み、意欲が低下した状態)を不定期に繰り返す、かつては『躁うつ病』と呼ばれていた精神疾患です。国内での罹患率は低いものの、遺伝的要因が高いことと、再発することが多いため、継続的な予防が必要とされる疾患です。

双極性障害の症状

双極性双極性障害は、気分が高揚しがちな躁状態(または軽躁状態)と、気分が落ち込むうつ状態が、いずれの症状も現れない寛解期を挟んで、不定期なサイクルで繰り返すと言う特徴があります。躁状態とうつ状態のサイクルは、平均すると数年間になるとされます。

躁状態(そうじょうたい)
気分が病的に高揚していて、いわゆるハイテンションになった状態です。しばしば睡眠さえ取らずに活発に活動し、楽しいことに熱中してしまいます。また、高圧的で落ち着きがなく、不機嫌や怒りっぽくなり、一度怒りだすと手がつけられないほど激昂してしまうことがあります。
冷静な判断力が失われ、過度でありえないほどの浪費をしてしまうことがあります。他人への攻撃性が増すため、時に、仕事や家庭での人間関係にトラブルや支障を来たすことがあります。
こうした状態が一週間以上続く場合は、躁状態の疑いが高くなるとされます。主にI型に当てはまります。
軽躁状態(けいそうじょうたい)
躁状態と同様の症状が現れるものの、躁状態よりも症状が比較的軽く、仕事や家庭での人間関係を破滅させるほどではない状態で、周囲も気づかない程度の事もあります。症状が4日間以上続くと軽躁状態であるとされます。
併病するケースが多く、摂食障害や不安障害、アルコールや薬物などへの依存症状、パーソナリティ障害やパニック障害などと合併しやすいとされます。主にII型が該当します。
うつ状態
うつ病のうつ状態と見分けが一見付きにくく、専門家でも区別が困難なことがあります。うつ病と異なる特徴として、非定型うつ病で現れやすい過眠や過食の症状や、統合失調症でみられる幻聴や妄想と言った症状が現れることが多い傾向にあります。抗うつ剤の効果が少なく、抗うつ剤を使用すると症状が急速交代型へと悪化する恐れがあります。
寛解
寛解とは、病状が一時的に回復して安定した状態をいいます。いわゆる完治や根治とは異なり、病気自体が治癒した状態ではなく、病状が現れていない状態です。双極性障害は、いわゆる完治が非常に難しい病気で、一度寛解となっても、その後治療を中断してしまうと、再び躁状態やうつ状態が現れる可能性が高くなります。

双極性障害の種類

双極性障害は主に異なる特徴を持った2種類に分類されます。

I型
躁状態が強く、躁状態とうつ状態が混ざって出現する混合状態が生じる場合もあります。躁状態とうつ状態が不定期で繰り返すが、その間隔が数年程度と、比較的長いのが特徴です。
II型
躁状態があまり強く現れず、抑うつ症状が強く出やすいため、うつ病と間違われることも多いです。躁状態とうつ状態が転じる間隔がI型よりも短く、特定の季節になると反転し易いという特徴があります。
その他
急速交代型
急速交代型は、年間4回以上という比較的短時間で、躁状態とうつ状態の病相が転換する型です。双極性障害を持つ人のうち、男性よりも女性に現れやすいとされます。抗うつ剤を用いた治療によって、急速交代型になりやすいとも言われています。
I型、II型の分類に当てはまらない、双極スペクトラムというタイプもあります。

双極性障害の発病要因

双極性障害の発病の原因ははっきりと解明されておらず様々な仮説が存在します。

仮説の一つにはうつ病の原因の仮説としても有名な、脳内の神経伝達物質であるセロトニンドーパミンノルアドレナリンなどの働きが、何らかの原因で乱れることで症状が発生するとする、モノアミン仮説があります。

うつ病などストレスが主因となるいわゆるこころの病気とは異なり、その人が持つ、脳や遺伝子の要因が強く関係して発症する精神疾患であると考えられています。幼児期のネグレクトなどの、過去のトラウマやストレスなどが発症要因になるという指摘もあります。

性格や気質の傾向は、社交的で明るく気配りができる循環気質の人や、几帳面な執着気質の人が罹患しやすいと言う報告がありますが、明確な傾向は不明です。

双極性障害の治療

薬物療法が中心で、気分安定薬や向精神薬が用いられる。完治が難しい病気であるため、継続して薬を服用する必要があるが、継続することで多くの場合は病状は改善され、時間経過とともに安定するとされています。その他にも、規則正しい生活を送ることや、対人関係のストレスなどへの対処を適切に行う事も治療の一環となります。

薬物治療と平行して、病気の性質や向き合い方、薬の作用や副作用を理解することを目的として、「心理教育」と言われる病態を理解するための心理療法が用いられる事があります。特に、長期間継続して薬を服用する意志を持つためには、病気への理解が欠かせません。

双極性障害の問題

双極性障害の症状のうち、躁状態は人間関係など社会的なトラブルを抱えやすいが、病気だと認識されにくいため、対人関係の問題が深刻化したり破綻に至るケースが見受けられます。

双極性障害は、現代の医学では完治が非常に難しく、治療を中断すると再発する可能性が非常に高いため、継続して治療薬を服用し続ける必要があるが、寛解期になると服用をやめてしまう人が多く、そのことが再発しやすい原因にもなっていると考えられます。

双極性障害に関する研究

双極性障害は、脳や遺伝子の要因が強く関係して発症すると考えられていますが、双極性障害を起こすような原因遺伝子は発見されていません。

また、双極性障害は発症率がうつ病などに比べて低く、日本での生涯有病率はおよそ0.2%程度とされます。双極性障害は、他の精神疾患との見分けを付けることも困難なため、双極性障害であっても、別の精神疾患として診断されてしまうケースが多いようです。

双極性障害の人の血液を調べた研究では、双極性障害の人の細胞内ではカルシウム濃度が高くなりやすいことが報告されています。

ミトコンドリアや小胞体から放出されるカルシウムは、細胞のアポトーシス(プログラムされた細胞死)に関わりがあるとされています。また、双極性障害の治療に用いられる気分安定薬であるリチウムには、神経細胞のアポトーシスを防ぎ、細胞を保護する効果がある「Bcl2遺伝子群」を活性化させることが分かっており、アポトーシスと双極性障害の病態との関係が推測されています。

アミノ酸の一種であるキヌレニンと言う物質についての研究では、うつ病や統合失調症、双極性障害の患者の体内で、キヌレニンが著しく増加することが確認されており、キヌレニンと精神疾患との関わりに関する研究が行われています。

双極性障害とうつ病との違い

  • うつ病には、男女で女性が2倍の発症率があるのに対し、双極性障害では男女差は殆ど無い。
  • うつ病はストレスなどが原因になることが多いとされるが、双極性障害は脳や遺伝子の要因が強いと推測される。
  • 治療法においては、うつ病はうつ症状を治療するために抗うつ剤での治療が中心になるのに対し、双極性障害では気分安定薬や抗精神薬が処方される。

photo credit :Munir Hamdan



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