ストレスを受けると体内で活性酸素の発生が増加すると言われています。ストレスで活性酸素が増加する仕組みは、脳や体がストレスに対応するための様々な仕組みが働き、その分活動エネルギーが増加し、酸素消費量が増加するためです。

ストレスでコルチゾールが分泌される

脳や体がストレスを受けると、脳の『視床下部』から副腎に対して『コルチゾール』というストレスホルモンが分泌されるように司令が届きます。

コルチゾールが分泌されると、発汗の増加、脈拍や血圧の上昇、脂肪分解など様々な「ストレス反応」が起こるため、体のエネルギー消費量(酸素や糖の消費)はストレスを受ける前よりも増加する事になります。

エネルギー消費量が増えれば、その分多くの酸素が必要になるため、呼吸も早くなり、体内に取り込まれる酸素も増え、酸素消費量が増加します。

体内に取り込まれた酸素のうち、2~3%程度は活性酸素になると言われており、取り込まれる酸素の量が増えれば増えるほど、発生する活性酸素の量も増加します。

ストレスに対抗するためにコルチゾールの分泌量が増えると、体のエネルギー消費が上がり、酸素消費量が増加してしまい、活性酸素は増えてしまうのです。

ストレスで血糖値が上昇する

ストレスホルモンであるコルチゾールには、血糖値を上昇させる作用があります。ストレスに効率的に対抗するには、脳や筋肉にエネルギー源である「糖質(ブドウ糖)」をたくさん供給する必要があるためです。

SODの働きが低下

血糖値が上昇すると、本来は活性酸素を除去する「SOD」という酵素と、血中の糖質が結合してしまいます。糖質とSODが結合してしまうとSODによる抗酸化作用が低下してしまい、その結果活性酸素が増加してしまうのです。

ビタミンCの働きが低下

血糖値が上昇すると、血中の主要な抗酸化物質であるビタミンCの働きが阻害されます。血中に溢れた糖質は、本来ビタミンCが結合するべき「グルコーストランスポーター」という輸送体に結合してしまうため、細胞内にビタミンCが入り込めず、細胞内で発生した活性酸素を除去することが出来なくなり、抗酸化作用が低下してしまうのです。

ストレスによりコルチゾールが増えると血糖値も上昇して、血中のSODと糖質が結びつき、体の持つ抗酸化力が低下して活性酸素が増加してしまうのです。

活性酸素はインスリン分泌細胞を攻撃

血糖値の上昇により増加した活性酸素は、インスリンを分泌している膵臓のランゲルハンス島にあるインスリン分泌細胞を攻撃して破壊してしまいます。インスリン分泌細胞の働きが低下するとインスリンを分泌する力が低下するため、体が血糖値を下げる力が損なわれ、糖尿病を患いやすくなります。

ストレスによる活性酸素の増加は、糖尿病にもつながるのです。

ストレスで交感神経系が興奮する

脳や体がストレスを受けると、自律神経系のうち交感神経系が刺激を受けて興奮します。交感神経系を興奮する司令を出すのも、コルチゾールの分泌を司令したのと同じ「視床下部」です。

交感神経系が興奮すると、神経伝達物質であるノルアドレナリンや、コルチゾールと同じくストレスホルモンの一種であるアドレナリンの分泌が促進されます。

交感神経系の興奮は、筋肉の収縮力をアップ、血管拡張、消化器官の機能を制限、血糖値上昇、呼吸数の上昇、脈拍上昇、血圧上昇、気道拡大、瞳孔散大、精神覚醒、痛覚の遮断など、様々な作用を精神や肉体に及ぼします。

つまり、ストレスにより交感神経系が興奮することで、コルチゾールが分泌されたときと同じように、脳や体のエネルギー消費量が増加するのです。

交感神経系の興奮でエネルギー消費が増加し、酸素消費量が増え、活性酸素の発生が増加するというわけです。

ストレスで睡眠の質が低下する

ストレスによって交感神経系が興奮した状態が続くと、自律神経系の働きに乱れが生じやすくなり、もう一方の副交感神経系が働きにくくなってしまうため、夜眠りにつくべき時間になっても、脳が興奮してしまい中々眠りにつけなかったり、眠りが浅くなってしまうなど、睡眠の質の低下を引き起こしてしまう場合があります。

本来、睡眠中は、『メラトニン』や『成長ホルモン』をはじめとした様々なホルモンが分泌され、日中に活性酸素によって傷ついた体を修復したり、体内に残った活性酸素を除去する時間でもあります。

睡眠の質が低下すると、メラトニンや成長ホルモンなどの分泌量が低下してしまい、睡眠中に体内の活性酸素が除去されずに残ってしまうため、活性酸素を増やしてしまうことに繋がるのです。

ストレスで活性酸素が増加すると

ストレスによって活性酸素が増加すると、血管が老化していき動脈硬化を起こしたり、皮膚が酸化して加齢臭が発生したり、脂肪が溜まりやすくなって肥満や生活習慣病を起こしたりと、私達の体には様々な悪影響が生じます。

  • 血管の老化
  • 肌の老化(シミやシワが増える)
  • 抜け毛
  • 肥満
  • 加齢臭
  • 生活習慣病
  • ガン

こうした影響は一例にすぎず、活性酸素の増加は人の体に発生する疾患のうち、およそ9割にも関わっているとされるほど、増えれば増えるほど人類の生命を脅かす存在です。

ストレスによる活性酸素の増加を防ぐには

仕事、貧困、人間関係、家庭、学校。ストレス社会とも称される現代社会では、ストレスから完全に逃れる術は残念ながらありません。

ストレスを受ければ受けるほど、体内で発生する活性酸素は増加して私達の体は錆びていってしまいます。

受けたストレスはそのままにせず解消する、溜めすぎないと言った対策と、体の持つ抗酸化力を高める対策が有効です。