オキシトシンがしっかりと分泌されているとき、脳はストレスに鈍感になり、交感神経系が過度に興奮することを防ぎます。同時に、副交感神経系が働きやすくなり、心身ともにリラックスした状態を作りやすくなり、ベッドに入れば気持ちのよい睡眠へと誘われます。

ストレスが睡眠を妨げる

生き物は眠っているときが最も無防備な状態であり、人間も例外ではありません。例えば、外敵など何らかの脅威によって身に危険が迫っているとき、つまり強いストレスを感じる状態で、万が一眠ってしまうと死に直結するため、脳は無意識のうちに決して眠らないよう、交感神経系を興奮させて覚醒状態を保とうとします。

現代社会では、身に危険が迫った状態を経験することは滅多にあることではありませんが、仕事、上司、人間関係、家庭不和、学校、友人関係、成績、病気などに対する、不安やイライラなど、脳を覚醒してしまうような精神的なストレスは身の回りに溢れています。

オキシトシンはストレス緩和により睡眠を深める

オキシトシンが分泌されていると、脳が感じる様々なストレスは緩和されて脳の興奮が和らぎます。心が安心してリラックスした状態を生じやすくなることで、催眠作用を発揮します。

オキシトシンが分泌されやすい環境を整えることは、(オキシトシンの基本的な効果として)単に対人コミュニケーションを深めたり、空気を読めるようになるということだけでなく、多くの日本人が問題を抱えている睡眠の質を向上させる上でも、非常に重要な要素の一つであると言えます。

メラトニンの分泌も促進されやすくなる

オキシトシンと睡眠の関係を探ると、オキシトシンが脳内で働くセロトニンや睡眠ホルモン『メラトニン』と密接な関わりがあることがわかります。

オキシトシンとセロトニンは相互関係があり、オキシトシンの分泌が促進されることでセロトニン神経も活性化します。セロトニン神経が活性化すると、セロトニンから合成されるメラトニンの量も増えるて、寝付きが良くなったり、良質な睡眠を得られやすくなるのです。

誰かと一緒に寝ると安心できる

眠りの効果を高めるオキシトシンを分泌する簡単な方法は、「誰かと一緒に寝ること」です。

眠るときに恋人や夫婦のように、お互い信頼し合う親しい間柄の人と一緒のベッドで肌を寄せ合って眠ると、充足感や安心感を得やすく、オキシトシンの分泌が促進されて、日中に仕事や学校で受けたストレスが緩和されて、安眠へとつながります。

一緒に寝ると逆効果の場合も

恋人や夫婦であっても、オキシトシンを分泌する効果が得にくく、逆効果になるパターンもあります。

恋人や夫婦の仲が冷え切っていたり、パートナー自体がストレスの元である場合、また、パートナーのいびきや歯ぎしり、寝言、口臭、寝相の悪さなどで、日頃から自身の眠りが脅かされていると感じる場合は、一緒のベッドで寝ることそのものがストレスになる可能性があり、かえってオキシトシンが分泌されにくくなり、睡眠の質も悪くなってしまう恐れがあります。

状態を改善出来ない場合は、思い切って寝るときはベッドを別にするのも一つの解決策です。寝る直前までに語り合ったり、触れ合ったりして一緒に過ごせば、オキシトシンの分泌には効果があります。

一人で寝る場合は?

誰かと一緒に寝るよりも一人のほうが落ち着くと感じる人は案外多くいますし、一人暮らしや様々な事情で、いつでも誰かと一緒に寝ることが出来ないという人も多いかと思います。

独りで眠る場合、信頼できる相手と一緒に安心した気持ちで眠りを迎える場合と比べると、どうしても「オキシトシンの分泌」という点では一歩譲ることになります。

独りで寝る場合にも少しでもオキシトシンを増やしたいという人は、など、愛するペットを抱いたり、そばで触れながら眠る、愛着のある人形抱き枕を抱いて眠る、などすると、多少はオキシトシンの分泌を促進させる効果が期待できるかと思います。

一人の場合でも、オキシトシンが足りなくならないよう、睡眠前以外の日常生活の中でオキシトシンを増やすことを心がけると良いでしょう。

★次のページでは『オキシトシンを増やす食べ物と食事の仕方』をご紹介します。

photo credit: Lars Plougmann Best friends (license)