幸せホルモンと言われるオキシトシンはストレスを緩和してくれるホルモンで、コミュニケーション能力を向上させる働きがあるため、人と人との良好な関係を築く上でも欠かせないホルモンでもあります。そんなオキシトシンを増やす方法をご紹介します。

オキシトシンは非言語コミュニケーションで増える

脳内でのオキシトシンの分泌を増やすために重要な概念が、非言語コミュニケーション(ノン・バーバル・コミュニケーション)です。非言語コミュニケーションとは、身振り、手振り、ゼスチャー、目配せ、表情、視線など言葉以外の方法でコミュニケーションを行うことを言います。

オキシトシンを分泌させるためにグルーミングが有効なことが知られていますが、これも非言語コミュニケーションの一種です。

→グルーミングについて詳しくは『グルーミングでセロトニンを増やす』を御覧ください。

オキシトシンの分泌を増やすために重要なのは、単に言葉を交わすということではなく、顔と顔を合わせて、相手の表情や声色から相手の感情や機嫌などを推測して、空気を読むとか、共感するということです。言い換えれば、オキシトシンを増やすために重要なのは言葉を交わすことではなく、心を交わすことなのです。

以下でオキシトシンの増やし方として紹介する方法は、いずれも非言語コミュニケーションによる意思疎通や心の交流が根幹にあります。

スキンシップはオキシトシンを増やす

オキシトシンの特徴を象徴するがスキンシップによってオキシトシンが増えるという点です。オキシトシンは、信頼する相手、心を開いた相手とスキンシップを取ることで、脳内で分泌が活性化されます。スキンシップは、人間が行うグルーミング行為の中でも最も身近なものです。

ハグや抱擁
オキシトシンを増やすために効果的なスキンシップとは、例えば恋人や友人とのハグや抱擁です。好きな人と触れ合うことでオキシトシンが分泌され、相手との親密性をより深いものにします。ベッドで愛し合ったり、一緒に抱き合って眠るのももちろん有効です。

握手・手を握る
抱き合うのが恥ずかしかったり、人前で難しい場合は、握手や手を握り合うことも有効です。人と肌を合わせることがオキシトシンを分泌させるのに効果的なのです。また、相手の手を取り、見つめ合いながら語らえば、より効果的にオキシトシンが分泌されます。

肩もみ
信頼できる家族でも、兄弟同士や成人した親子の場合、ハグや抱擁は中々躊躇するかもしれません。そうしたとき有効なのが、肩もみやマッサージです。疲れで凝り固まった父親や母親の肩や腰を揉んでマッサージしてあげると、揉まれた方はリラックスできて気持ちいいというだけでなく、揉む方も相手に対する慈しみの気持ちが生まれ、お互いにオキシトシンが分泌されて、信頼感を増すことができます。

エステ
一人で生活している人の場合、人とスキンシップをすることが少し難しい場合があります。そんなときは、お金はかかりますが、エステやリフレクソロジーなどで、マッサージを受けると良いでしょう。プロのマッサージを受けることでも、心身がリラックスして、オキシトシンの分泌が増えることが分かっています。

行動を共にして時間を共有するとオキシトシンは増える

オキシトシンを増やす方法として、友達や家族と行動を共にして、時間や体験を共有することが挙げられます。

オキシトシンは、人との共感や協調性を高めてくれるホルモンです。誰かと一緒に過ごして、同じテレビを見たり、一緒にスポーツをしたり、趣味を共にしたり、同じ時間に同じ体験を共有することで、お互いをより深く信頼できるようになり、その人と一緒にいると、お互いオキシトシンがより多く分泌されるようになります。

おしゃべりでオキシトシンが増える

おしゃべりは一見単純ですが、特定のコミュニティの中でおしゃべりをすることは、空気を読んだり、相手を気遣ったりなど、実は高度なコミュニケーションスキルが求められる場面がたくさんあります。相手のことを考えず自分の話ばかりしていると、相手から空気が読めない人だと思われて、敬遠されやすくなります。

それが友達であれ、お隣さんであれ、近所の顔見知りであれ、学校の先生であれ、PTAの役員仲間であれ、おしゃべりする相手との距離感を適切に保つ上で、お互いがオキシトシンを分泌し合える同士かどうかということは重要です。

オキシトシンが分泌されるためには、相手をまず信頼することが必要です。そして相手を信頼するには、相手からも信頼されることが必要です。心を開いて、お互い信頼し合う間柄であれば、オキシトシンの分泌は促進され、相手とのちょうどよい距離感というのも自ずと掴めて来るのです。

自分を知ってもらいたいと思ったら、まずはその人のことを知ろうとする姿勢を自分から持ち、お互いがオキシトシンを分泌し合える間柄になることが近道です。

感動する・号泣するとオキシトシンは増える

ドラマや映画、小説、漫画、音楽など、媒体や方法はなんでも良いのですが、何かを見たり聴いたりして感動することは脳をリラックスさせて副交感神経系を優位に働かせる作用があります。

緊張してガチガチのときよりも、副交感神経系が働いて脳がリラックスしているときのほうが、オキシトシンの分泌は促進されやすくなります。

楽しい食事でオキシトシンが増える

誰かと一緒に会話をしながら、食事を楽しむことでオキシトシンの分泌を促進する効果が期待できます。

食事をしながらおしゃべりをすることは相手との信頼関係を構築する上で重要で、そうして人間関係が醸造されていけば、オキシトシンの分泌はより活発になります。一人で食事するよりも、複数で楽しく食事をするとオキシトシンを増やしやすくなります。

また、食事のときに摂取する食べ物からオキシトシンを摂取する方法について、オキシトシンは肉や魚などに含まれていますが、食事で経口摂取しても脳内には到達しません。

食べ物でオキシトシンを増やすには、オキシトシンの原材料となるアミノ酸を豊富に含んだ食品をしっかりと摂取することが有効です。

詳しくは『オキシトシンと食べ物について』や、『オキシトシンのサプリメント』をご覧ください。

一緒のベッドでスキンシップ

冒頭で紹介したように、スキンシップはオキシトシンを増やす上で重要な意味を持ちます。

中でも、親子や恋人、夫婦など信頼できる家族やパートナーと一緒のベッドでハグをしたり、触れ合ったり、キスをしたり、愛し合ったりすること、またスキンシップを取りながら眠りに就くことで、より一層相手に対する信頼感を高めて、オキシトシンの分泌を促進することが出来ます。

また、こうしてオキシトシンが充足した状態で睡眠に付くことは、良質な睡眠にも繋がるため、オキシトシンには眠りに誘う催眠効果もあるといえるのです。

詳しくは『オキシトシンと睡眠』をご覧ください。

セロトニンを増やすとオキシトシンも増やしやすい

脳内の神経伝達物質であるセロトニンは、オキシトシンと相互関係があります。セロトニン神経の一部にはオキシトシンの受容体があり、二つの物質の密接な関わりを示しています。セロトニンを増やす行為として有効な日光浴運動質の良い睡眠などは、オキシトシンを増やすのにも有効で、二つの物質が増えるプロセスには共通点が多数あります。

また、自閉症スペクトラムの治療でオキシトシンを点鼻投与すると、症状が改善することが分かっていますが、このとき同時に脳内のセロトニンの濃度も増えていることが研究によって明らかになっています。

こうしたことから、オキシトシンを増やすには、セロトニンを増やすことも重要であるといえるのです。

★次のページでは『オキシトシンを増やすとビジネス能力が上がる!』をご紹介します。

photo credit: LyndaSanchez Enamoured couple is played (license)