コルチゾールの分泌条件

コルチゾールが分泌される条件は、大きく二つに分けることができます。一つは「生活リズム」、もう一つは「ストレス」です。いずれの場合もコルチゾール自体の基本的な作用は同じですが、分泌されるタイミングや条件、分泌量などが違うため、及ぼす影響も異なってきます。

生活リズムに合わせて分泌されているコルチゾールの働き

生活リズムに合わせたコルチゾールの分泌は、朝起きて、昼間に学校に行ったり仕事をして、夜眠るといった、日常の生活リズムに応じて、自然と一定量が基礎的に分泌されるという性質があります。

こうしたコルチゾールの基礎的な分泌は、日中の起きている間に血糖値を維持して脳の覚醒状態を保つことが主とした作用です。

一般的にコルチゾールの分泌は、朝の起床時から昼前までが高く、夜眠りにつく前が最も少なくなります。起床時にコルチゾールの分泌量が高くなるのは、朝の起床時に脳を素早く覚醒させて、いち早く体が動けるようにするためです。また夜間の就寝中は、睡眠効率を上げるため、コルチゾールの分泌は抑制されます。

メラトニンとコルチゾールの関係

コルチゾールの分泌は、同じく交感神経系を刺激して覚醒を維持する作用があるノルアドレナリンやセロトニンの働きとも同調しており、また睡眠ホルモンであるメラトニンとは相反する存在であると言えます。

コルチゾールが分泌されている日中はメラトニンの分泌量は少なく、眠気が抑えられます。夜間になりメラトニンの分泌量が増加してくると、コルチゾールの分泌は抑制されていき、脳の覚醒レベルは低下して睡眠へと向かいます。

コルチゾールは体内時計と同調して分泌される

コルチゾールの基礎分泌量は、体内時計や自律神経系の働きと同調しており、一般的にコルチゾールは一日のうち、朝(起床直前から起床後一時間程度の間)に特に多く分泌されます。これは、起床と共に交感神経系を刺激して、血圧を上昇させることで、体が素早く活動出来るようにさせるためと考えられます。

起床後、コルチゾールの分泌量は日中の活動が活発な時間帯は高値をキープし、夕方から夜になるにつれて分泌量は下がっていき、就寝前に最低値になる、一定のサイクルを刻みます。

ところが、不規則な生活を続けると、自律神経系のバランスに乱れが生じて、コルチゾールの分泌サイクルも乱れて、朝の起床時や日中に交感神経系が興奮せずに、いつまでたっても目が覚めず眠たかったり、日中ぼーっとしてしまうような症状が現れることもあります。

睡眠中のエネルギー産生に寄与

人間の体は睡眠中でも活動しており、常にエネルギーを消費し続けます。睡眠中は肝臓に蓄えられたグリコーゲンや、体内の脂肪などを分解して、エネルギー源にしています。睡眠中の脂肪分解を促進し、エネルギー産生を担うのが、成長ホルモンやコルチゾールです。

睡眠中のコルチゾールの分泌は基本的に抑制されていますが、明け方近くになり、だんだん睡眠が浅くなってくるにつれて、レム睡眠のときに交感神経系が徐々に刺激され、そのときコルチゾールが分泌されはじめます。

入眠直後の深い睡眠とされるノンレム睡眠時は成長ホルモンがエネルギー産生を担い、起床間近の浅い睡眠とされるレム睡眠時はコルチゾールが、それぞれ体のエネルギー消費(血糖値の維持)を支えるために脂肪を分解するために分泌されます。

睡眠中のダイエット効果

睡眠中のコルチゾールの分泌は、糖新生を促進して脂肪の分解や栄養素の代謝を行うことから、睡眠中のダイエットにも効果のあるホルモンであると言われています。

ただし、睡眠中のダイエット効果を狙うにはいくつか注意が必要です。

睡眠直前の食事は要注意

睡眠直前に食事をすると、血液中にはエネルギーとなるブドウ糖が十分に残っているため、睡眠中にに脂肪の分解を行う必要性が減り、糖新生による脂肪の分解量は少なくなってダイエットの効果は薄くなります。また、脂肪が十分に分解されないということは、分解されなかった脂肪は体に吸収されて、逆に太って体重が増える原因にもなります。

寝ている間のコルチゾールによる脂肪分解を促すには、夕食と就寝時間は数時間空けたほうが良いでしょう。快眠するには、就寝の2~3時間前までに夕食を済ませると良いとされます。

食事と食事の時間を空けすぎると逆効果

夕食の時間が早すぎる場合などで、次の朝ご飯を食べるまでの間に時間が空きすぎると、体内に蓄えていた血糖や、コルチゾールによる糖新生で作られた血糖だけでは血糖値を維持することが難しくなり、朝起きた時に血糖値が下がり、低血糖を起こしてしまう可能性があります。低血糖になると、頭痛やめまいを起こしたり、意識レベルが低下することがあります。

また、血糖値がひどく下がったあとに食事を取ると、血糖値はその分急上昇するため、血糖値の乱高下によって肥満を引き起こす可能性もありますし、そうした生活習慣は糖尿病を起こすきっかけにもなります。

寝る直前にご飯を食べるのもよくありませんが、極端に早く夕食を食べすぎるのも良くないのです。夕方など早くに食事をとった日などは、就寝の数時間前に、軽く何か口にすると良いでしょう。

DHEAとの関係

コルチゾール同様に副腎から分泌されるDHEAというホルモンも、コルチゾール同様の分泌リズム(朝多く、寝る前に少ない)を持ちます。DHEAはコルチゾールによる体の酸化や免疫力の低下を抑制してくれる作用があり、アンチエイジングの観点から重要なホルモンです。