ストレスに反応するコルチゾール
日中の基礎的な分泌とは別に、何らかの脳が何らかのストレスを受けると、ストレスに反応してコルチゾールの分泌が増加します。通常、コルチゾールの分泌が問題になるとき、このストレスに反応して分泌されるコルチゾールが対象となるケースが多いかと思います。
目次
ストレスでコルチゾールが分泌される順序
人のストレスに対する反応は、HPA軸(視床下部-下垂体-副腎系、Hypothalamic-Pituitary-Adrenal Axis)というストレス応答の仕組みにより制御されています。ストレスによってコルチゾールが分泌される順序は以下の通りです。
- 脳がストレスを感じる。
- 脳の視床下部(Hypothalamic)からが副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)が分泌される
- (CRH)が脳下垂体(Pituitary)の前葉を刺激し、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が分泌される
- (ACTH)が副腎皮質(Adrenal)を刺激し、コルチゾールが分泌される
- コルチゾールによる作用(血圧上昇、血糖値上昇、糖新生促進、免疫力抑制など)が起こる
このようにして、脳がストレスを感じるとコルチゾールの分泌が増加して、心身に様々な影響が生じます。
長期的なストレスによる影響
ストレスに反応して副腎皮質からコルチゾールが分泌されると、様々な影響が生じます。特に、長期間にわたり心理的なストレスを受け続けると、様々な影響が現れる恐れがあります。
免疫力が抑制されて風邪や病気になりやすい
コルチゾールは免疫力を抑制する作用があります。
例えば、サバンナで外敵に襲われたときのように、命の危機に陥ったとき、免疫力を維持することよりも、外敵に対抗するためのエネルギーを作り出すことのほうが重要となります。
コルチゾールの免疫力の抑制作用は、本来こうした命の危機を乗り越えるための緊急避難的な働きでしたが、人間は命の危機のようなストレスを感じることは稀になり、仕事のストレスや対人関係のトラブルなど、長期間続く慢性的な心理ストレスを抱えやすくなっています。
慢性的なストレスによってコルチゾールの分泌が増えた状態が続くと、免疫力もその間継続的に抑制されることになり、風邪を引きやすくなったり、様々な病気に罹るリスクが増えてしまうのです。
炎症が抑制されて傷が治りにくくなる
怪我をした時などに体が起こす『炎症』とは免疫反応の一つでもあるため、長期的なストレスで、コルチゾールにより炎症が抑制され傷が治りにくいのも免疫力が抑制された結果として起こることの一つと言えます。記憶力や学習効果の低下
ストレスによりコルチゾールの分泌量が増加すると、不安やイライラなどの精神症状が現れやすくなるため、集中力が低下して、その分記憶力や学習効果が低下します。コルチゾールの過度の分泌は、長期的には海馬を萎縮させて認知機能そのものを傷害する可能性があり、慢性的なストレスによるコルチゾールの分泌増加が、うつ病やアルツハイマー型認知症のリスクを増加させると考えられています。
副腎疲労の原因に
強いストレスを長期間継続して受け続けると、体内時計や自律神経系の働きは乱れ、コルチゾールの分泌も過剰になってしまい、コルチゾールを分泌し続ける副腎は疲弊して、副腎疲労を起こす原因となります。