ストレスで起立性調節障害が悪化する

自律神経系の不調により起こる起立性調節障害は、ストレスによって症状がさらに悪化すると言われています。その原因は、ストレスが自律神経系にさらなる乱れを起こすためです。成長期を迎える子ども達が起立性調節障害を起こしやすいのは、成長期特有のストレスも大いに関係していると考えられます。

ストレスは自律神経系を乱す

自律神経系にとって好ましい状態は、交感神経系と副交感神経系のバランスが取れた状態です。

肉体的(痛い、疲れた、苦しい)にせよ精神的(恐い、悲しい、イライラ)にせよ、ストレスは主に交感神経系への刺激となり、交感神経系を興奮させます。ストレスが増えれば増えるほど、交感神経系が興奮することになります。

ストレスで交感神経系が優位になる
交感神経系が過度に興奮すると、それまで保たれていた交感神経系と副交感神経系のバランスが乱れ、交感神経系が常に優位に働く、自律神経系のバランスが崩れた状態になります。

交感神経系は、心身の興奮を司る神経系ですから、ストレスによって交感神経系が常に興奮した状態とは、いつもイライラしている、怒りっぽく攻撃的、やる気や意欲にあふれる、何かにのめり込む(依存)、興奮して眠れない、などの状況に陥りやすくなります。

交感神経系は徐々疲弊する
全速力で走り続ければ息が続かなくなるのと同じく、ストレスによって昂ぶった交感神経系も、やがては疲弊してしまいます。

交感神経系が疲弊する原因は、人がストレスを受けたときに分泌されるストレスホルモンによるものです。コルチゾールアドレナリンノルアドレナリンといったストレスホルモンは、脳がストレスを感じると分泌が促進され、脳や体をストレスから守ります。

ストレスが長く続くと、こうしたストレスホルモンを産生する副腎という臓器や、脳の中枢がオーバーワークに陥ると、副腎疲労脳疲労を起こして機能しなくなり、ストレスホルモンの生産能力が低下してしまいます。また、同じようなことがストレスホルモンの原料が底を尽きる形でも起こります。

こうしてストレスホルモンが減少すると、ストレスに抗う交感神経系の興奮が失われていき、精神的には意欲の喪失、無気力、抑うつ、悲しい、すぐ落ち込むと言った症状が現れやすくなります。

肉体的には脳が覚醒せず常にぼーっとしている、朝起きられない、体が重たい、疲れやすい、倦怠感などの症状が現れます。

このようにストレスによって、当初は優位だった交感神経系は、ストレスが続くことによって疲弊し、機能を失っていくのです。この交感神経系の機能が失われた状態は、まさに起立性調節障害によって体に起こる諸症状と合致します。

起立性調節障害では、特に朝や午前中に交感神経系の働きが弱いために起きるのが辛く、急に起き上がるとめまいや立ちくらみと言った症状が現れるのです。

ストレスの種類

一言でストレスとはいっても、ストレスには非常に多くの種類があり、また例えば『重力』のように、普段は自覚出来ない無意識に体が感じているストレスも多くあります。

肉体的なストレス

物理的なストレス
暑さや寒さ、気圧変化、湿気、乾燥、重力

肉体ストレス
体の炎症、痛み、怪我、かゆみ

環境ストレス
光、騒音、チリや埃、ハウスダスト

運動ストレス
疲労の蓄積、活性酸素の増加

異物ストレス
細菌、ウイルス、花粉、ダニ

睡眠のストレス
睡眠不足、睡眠の質が悪い、眠りが浅い、寝付きが悪い、不眠

精神的なストレス

仕事のストレス
パワハラ、セクハラ、上司、左遷、昇進、夜勤、職責、残業

学校のストレス
いじめ(肉体ストレスを伴う場合も)、先生の不理解、進級、クラス替え、入学、転校(自分だけでなく、仲の良い友達が転校した場合も)、成績不振

家庭のストレス
結婚、離婚、家庭不和、DV、別居、同居、引越し

人間関係のストレス
近所付き合い、ママ友、友人、隣人、嫁姑

死別や喪失のストレス
近親者との死別や別れ、友人の喪失など

無意識のストレスには特に注意を

こうした肉体的、精神的な様々なストレスは、起立性調節障害を発症させたり、病状を悪化させる原因のひとつとして考えられます。特に自覚できるストレスが複数ある場合は、ストレスの原因から遠ざかる方法を模索しましょう。

注意しなくてはならないのが、普段意識することがない、無意識化で生じている、重力や気温の変化、気候の変動等によって生じているストレスの存在です。

無意識に受けているストレスは、その存在自体に気が付きにくく、そもそも対処することも出来ませんが、体はそうしたことでもストレスを受けている、ということを認識する必要があるのです。

例えば、起立性調節障害は春先から夏にかけて、暑くなる季節に症状が悪化することが知られています。こうした気候変動のように、無意識でも起こってしまう体の変調の存在にも気をつけたいところです。

副交感神経系が優位になりすぎてもダメ

ストレスによって交感神経系が優位になってやがて疲弊することで起立性調節障害の症状が現れやすくなるのと同じことが、副交感神経系が優位になりすぎても起こります。

副交感神経系が優位になりすぎる原因
交感神経系と副交感神経系は、昼夜交互に優位になる、波のような繰り返しによって成り立っています。交感神経系は、言わば昼間のストレスフルな生活を耐えぬくために働く神経系です。

ところが、現代社会では昔ほどストレスが掛からない部分があります。それは子どもの生活環境や遊び場所です。

最近の住まいは高気密でエアコン完備。夏でも冬でも、部屋の中にいれば寒暖差が少なく、寒さや暑さによって交感神経系が刺激される機会が減って、昼間でもリラックスして副交感神経系が常に効いている状態が続いてしまうことがあります。

特に小さいこどもの頃から、外で遊ばずに成長した現代の子どもたちは、交感神経系への刺激が少なく、交感神経系が未成熟な代わりに、脳はリラックスすることばかり覚えて、副交感神経系ばかり働いてしまっている場合があるのです。

こうして牙の抜けたライオンの如く、交感神経系の興奮を知らずに温室で育った現代の子どもたちは、思春期で一変する環境によって起こる『ストレス』に抗う術を持たず、起立性調節障害を起こしやすくなってしまうのです。

まとめ

  • 自律神経系はバランスが重要。どちらに傾いてもバランスを欠くと大きく乱れて起立性調節障害を起こす原因となる。
  • ストレスで交感神経系が興奮し続けるとやがて疲弊して機能低下を招く。
  • 小さい頃からストレスを受けずリラックスし過ぎると、思春期のストレスに耐えられずに起立性調節障害を起こしやすくなる。

photo credit: Angst / Anxiety (license)



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