ストレス解消や疲労回復など、優れた効果がある昼寝ですが、間違ったやり方をすると、疾病リスクの増加、肥満、頭痛の発生、睡眠の質の低下など、体に悪影響を及ぼすこともあります。昼寝の悪影響や危険性の増加は、特に30分以上の長時間の昼寝をする場合に起こりやすくなります。

長時間の昼寝で疾病リスクの上昇

例えば長時間の昼寝のリスクを伝える一例として、アルツハイマー型認知症の患者のライフスタイルを調査すると、アルツハイマー型認知症の患者の多くは1日3時間程度の長時間の昼寝をすることがわかっています。

また、長時間昼寝をとることでレム睡眠が発生すると自律神経系の働きが乱れ、血圧や心拍の上昇、発汗などを伴い、脈拍や呼吸は不規則になりやすくなります。昼寝の時間が長すぎると心疾患や循環器系の疾患、高血圧症などのリスクも増えるとも考えられています。

一方で、1日30分以内の短時間の昼寝の習慣を持つ人は、昼寝の習慣がない人に比べ、アルツハイマー型認知症の発症率が1/5程度だとされており、必ずしも昼寝が悪であるわけではなく、あくまでも長時間の昼寝には注意が必要だと言うことです。

長時間の昼寝をすると太る可能性も

昼寝をすると太るのではないかという疑問をよく耳にします。これはそもそも、「寝る前に食べると太る」という認識が拡大解釈されたものと思われます。では、昼寝をすると本当に太るのでしょうか?

結論から述べると、30分以内の昼寝なら太るとは考えにくいです。

30分以上の昼寝をすると太る理由

実は、30分以上の昼寝を取ると太る可能性があります。

なぜ、30分以上の長時間昼寝をした場合は太る可能性があるのでしょうか?まず、30分という時間の線引ですが、これは徐波睡眠(深い睡眠)が発生しない睡眠時間で区切ったもので、30分以上の昼寝では徐波睡眠が発生して深い眠りに入るからです。

眠りが浅くなる
徐波睡眠が1日に発生する回数はある程度決まっており、30分以上の昼寝で徐波睡眠が発生すると、その日の夜の睡眠時の徐波睡眠が発生する回数が減ってしまう場合があります。夜の睡眠で徐波睡眠(深い睡眠)の発生回数が減るということは、その分だけ眠りが浅くなる可能性があります。

成長ホルモンが減る
徐波睡眠が減った結果、本来は徐波睡眠時に分泌されている成長ホルモンの分泌量が減ることが考えられます。成長ホルモンは体組織の新陳代謝を促し、脂肪の分解を促進させる作用があるため、分泌量が減ると太りやすい(脂肪を溜め込みやすい)体質になる可能性があります。

昼間は成長ホルモンが出にくい
成長ホルモンは徐波睡眠の時に出るのであれば、昼寝で徐波睡眠が発生した時にも成長ホルモンが出るから変わらないじゃないか、というツッコミがありそうですが、成長ホルモンの分泌量は概日リズムと同調しており、昼間は出にくく、夜に出やすいのです。

その他にも悪影響や危険性

その他にも、いくつか昼寝をする上での注意点を以下にご紹介します。

  • 寝過ぎは睡眠慣性が生じるので逆効果(30分以内にする)
  • あくまでの夜の睡眠の補助として活用する
  • 午後3時以降は夜の眠りの質が低下する原因になる
  • 机にうつ伏せて寝ると血管が圧迫されやすくなる
  • 長時間の昼寝は頭痛の原因になる可能性がある
  • 長時間昼寝をする習慣は高血圧になりやすい傾向がある
  • 会社や学校でのあまりに激しい寝姿は周りから不信がられる

★次のページでは『昼寝で頭痛が起きるワケ』をご紹介します。

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