かつてはオヤジ臭と呼ばれ、中年男性のニオイの代名詞とも言える『加齢臭』ですが、女性にも加齢臭は発生します。女性の加齢臭は40歳前後になるとニオイが出やすくなり、さらに更年期を迎えることで悪化しやすくなります。

女性と男性の加齢臭の違い

女性にも加齢臭が発生します。

ただ、女性の加齢臭は男性よりも目立ちにくいため、男性に比べてニオイが認識されにくいだけです。加齢臭が男性特有の問題だと思われている原因一つは、男性の加齢臭が女性の加齢臭よりもニオイがキツイためです。

女性と男性の加齢臭にはいくつかの特徴の違いがあります。

  • 男性は分泌される皮脂が多いため、ニオイがきつくなりやすい
  • 女性は分泌される皮脂が少ないため、ニオイが目立たない
  • 女性は女性ホルモンの影響で皮脂が男性よりも少ない
  • 女性のほうが男性よりも体臭のケアが得意な傾向があるため加齢臭が目立ちにくい
  • 女性の化粧品には香料が入っているためニオイが目立ちにくい
  • 毎日スーツを着る男性はスーツに加齢臭のニオイが残りやすい

女性の加齢臭が発生し始めるのは40歳前後

女性の場合、加齢臭のニオイが目立ちにくいため男性よりも加齢臭が出始める時期が遅いように思われがちですが、女性の加齢臭がでやすくなる年齢は40歳前後で、加齢臭が発生し始める時期は男性と変わりません。

女性の加齢臭が本格的に悪化しやすいのは40代後半から

女性は男性に比べて体臭が少なく、40歳前後の加齢臭が発生しだす年頃でも、男女を比べると女性のほうが加齢臭は目立ちにくい傾向があります。

ところが、女性の場合、アラフォー40歳前後のあとにさらにもう一段階、加齢臭が悪化しやすい時期があります。それは閉経を境に起こる更年期です。40代後半が女性にとっての加齢臭対策の本番となるのです。

女性の加齢臭が更年期で本格化しやすい理由

女性の加齢臭が本格的に悪化しやすいのが更年期です。女性の更年期は閉経を迎える40代半ばから後半頃が多く、この時期に体に起こる様々な変調は『更年期障害』と呼ばれます。

更年期の女性の加齢臭が悪化しやすい原因として、女性ホルモンの減少とそれに伴って起こる、活性酸素や過酸化脂質の増加、抗酸化物質の減少など、加齢臭を悪化させてしまう要因が複数同時に重なって起こることが考えられます。

女性ホルモンの減少
女性の更年期に加齢臭が本格化する原因は、閉経に伴う女性ホルモンの急激な減少です。

女性に分泌されるエストロゲンやプロゲステロンと言った女性ホルモンは閉経を迎えると急激に分泌量が減少し、これが女性の加齢臭が本格的に悪化する引き金になっていると考えられます。

活性酸素が増える
女性ホルモンは、女性が妊娠に備えたり、妊娠を維持するために分泌されるホルモンで、卵子や受精卵を酸化させてしまう『活性酸素』の発生を抑制する作用があります。そのため、女性ホルモンが減ると体内で活性酸素が増えてしまうのです。

活性酸素は老化を促進する物質として知られており、シミやシワを増やすだけでなく、血管を劣化させたり、体の様々な機能を低下させてしまいます。

老化を促進させる活性酸素が体内に増えると、同時に増加するのが『過酸化脂質』です。過酸化脂質は活性酸素と中性脂肪やコレステロールが結びついてできる物質で、細胞を変質させてしまう有害物質でもあります。

過酸化脂質が増える
女性ホルモンの減少によって活性酸素が増えれば、過酸化脂質が増えやすくなります。過酸化脂質は、皮脂成分に混ざり、『ノネナール』という加齢臭のニオイの原因物質の発生を促進させてしまいます。

過酸化脂質が増えれば増えるほど、加齢臭は悪化しやすくなるのです。

抗酸化物質が減少する
人の体に自然と備わっている抗酸化作用は、男女共に40歳前後で大きく減少します。

抗酸化作用とは体を酸化から守る力で、抗酸化作用を担うのが『抗酸化物質』です。抗酸化物質は、体内で活性酸素が増えすぎるのを抑制してくれる働きをしているため、抗酸化作用が損なわれてしまうと、加齢臭悪化の恐ろしいサイクルが発生してしまうのです。

更年期を迎える

女性ホルモンが減少

抗酸化物質が減少

体内の活性酸素が増加

過酸化脂質が増加

ノネナールが増加

加齢臭が悪化

このように、加齢臭が発生する原因はいくつかありますが、女性の加齢臭が更年期に悪化しやすいのは、加齢臭の原因が複数同時に重なってしまう時期に当たるためなのです。

加齢臭の原因は皮脂成分

そもそも、加齢臭の原因は皮脂成分が酸化分解して生じる『ノネナール』という物質です。つまり、分泌される皮脂の量が多い人のほうが、発生するノネナールの量も増えやすいため、加齢臭がきつくなりやすいのです。

40歳前後のくらいまでの女性の場合、女性ホルモンの影響で皮脂量が男性よりも少ないことが、加齢臭が目立ちにくいのですが、更年期を迎え、皮脂を抑えてくれていた女性ホルモンが減少することで、加齢臭のもととなるノネナールが増えやすくなるのです。

女性の皮脂量は女性ホルモンの影響を受けて減少する

女性ホルモンのうち、エストロゲンには皮脂の分泌を抑える作用があります。また、プロゲステロンは皮脂の分泌を促進する作用があります。

30代半ばぐらいまではエストロゲンによって、皮脂の分泌量を抑えることができていますが、40歳前後になるとエストロゲンの分泌は減少してゆき、さらに更年期を迎える頃には急激に減少します。

皮脂を抑えてくれていたエストロゲンが減れば、皮脂の分泌量は増えてしまうのではないかと思うが、エストロゲンの減少と同時にプロゲステロンも減少するため、分泌される皮脂の総量は年齢とともに減少していきます。

ノネナールを生み出す皮脂成分が増加する

男性の場合でも同じですが、皮脂の分泌総量そのものは年齢とともに減少します。皮脂の分泌量が減少するのに、皮脂が原因の加齢臭は加齢によって悪化するというのは一見矛盾しているようにも思えます。

皮脂の成分には様々な種類があり、多くの皮脂成分が年齢とともに減少するのに対し、いくつかの皮脂成分は逆に年齢とともに増加する種類もあるのです。

年齢とともに増加する皮脂成分が、加齢臭の原因となるノネナールを生み出す皮脂成分は『9-ヘキサデセン酸』という皮脂成分です。

気になる加齢臭はハーモナージュ効果で対策

加齢臭対策の概念で重要なのが、発生したニオイを完全に消臭するのではなく、目立たなくすることです。

ニオイ完全に消臭しようとして、体を強くこすったり、皮脂を落としすぎたり、皮膚に強い刺激を与えると、逆に加齢臭が悪化する可能性があるためです。

ニオイには相性と言うものがあります。いい匂いのする花や、高級な香水なども、様々なニオイが組み合わさってニオイを構成しており、そのニオイ成分の中には、例えば糞便に含まれるインドールやスカトールと言った悪臭を放つ成分もごく少量含まれていることがあります。

掛け合わせの相性よっては悪臭を打ち消して良いニオイにも変えてくれるわけです。

逆に、加齢臭のニオイを気にしすぎるあまり、相性の良くない香料でニオイを誤魔化そうとすると、体臭がさらに悪化してしまう危険性もあります。

加齢臭という言葉を生み出した資生堂の加齢臭対策の一つに、「ハーモナージュ効果」という考え方があります。

ハーモナージュ効果とは、加齢臭の原因臭であるノネナールのニオイと、他の香料の良いニオイを混合させることで、加齢臭のイヤなニオイを目立たない心地よい香りを作り出すことで加齢臭のニオイケアをするというものです。

ボディソープや制汗剤などいくつか製品があるようですから、加齢臭が気になる方はぜひチェックしてみて下さい。

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