人は、睡眠中にも脳や体の生命維持のためにエネルギーを消費しています。脳や体のエネルギーは、主に肝臓で代謝されています。睡眠中に肝臓でのエネルギー代謝を促進するのが、成長ホルモンコルチゾールといったホルモンです。

睡眠中のエネルギー代謝を促進

人の脳や体の細胞のエネルギー源となるのは主にブドウ糖です。ブドウ糖は食事に含まれる炭水化物や糖質が代謝されて作り出され、血中から体内を巡って消費されます。しかし睡眠中は、食事による新たなブドウ糖の補給をすることができません。

睡眠中に血中のブドウ糖が不足して血糖値が低下した場合は、肝臓や筋肉に蓄えられているグリコーゲンをブドウ糖に変換し、また、ときには脂肪細胞から脂質を分解してケトン体に変換し、脳や体に供給します。

睡眠中の血糖値の維持

こうした睡眠中の成長ホルモンとコルチゾールの働きは、言い換えると睡眠中の血糖値の維持をしているとも言えます。ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源であり、睡眠中に血糖値が下がりすぎて低血糖状態になると、脳がダメージを受けて、最悪の場合は意識消失から死に至ります。

睡眠中でも低血糖を起こさずいられるのは、この2つのホルモンが働いて血糖を維持してくれているおかげなのです。

尚、糖尿病を患うと睡眠中に低血糖を起こすことがあります。

睡眠リズムと同調して分泌

人の睡眠は、俗に深い睡眠と言われるノンレム睡眠と、浅い眠りと言われるレム睡眠が一定のリズムで繰り返すことで成立しています。成長ホルモンとコルチゾールの分泌は、こうした睡眠リズムと同調する性質を持っています。

深い眠りのときには成長ホルモンが、浅い眠りのときにはコルチゾールがそれぞれ分泌されて、肝臓によるエネルギー代謝をサポートしているのです。

また、深い眠りと浅い眠りは、それぞれ出現頻度に偏りがあり、深い眠りは睡眠の前半(寝入りばな)、浅い眠りは睡眠の後半(朝方)にそれぞれ多く出現します。そのため、睡眠前半は成長ホルモンが、後半はコルチゾールが、主にエネルギー代謝を促進していることになります。

睡眠中のエネルギー消費量

睡眠中に自然に消費されるエネルギーの消費量をご紹介します。睡眠中の一般的なエネルギー消費量は1分間で体重1kg辺り0.017kcalと言われています。これを例示すると以下のようになります。

▼体重1kgあたりの1時間エネルギー消費量は、
0.017[kcal]x60[min]=1.02[kcal/h]
となります。

▼体重60kgの人の場合、
1.02[kcal/h]x60=61.2[kcal/h]
睡眠1時間で61.2kcal消費することになります。

▼仮に一晩で7時間睡眠をすると、
61.2[kcal]x7=428.4[kcal]
一晩寝ているだけで428.4kcalを消費しているということになるのです。体重がさらに増えれば消費量は上がります。
※同じ体重でも、筋肉量、骨量、体脂肪率、年齢や性別、体調によっても代謝量は異なりますので、上の数値は参考値として考えて下さい。

睡眠直前に食事をすると太る理由

ところで、睡眠前に食事をすると、睡眠中にも血中にブドウ糖が十分残るため、そのぶん成長ホルモンやコルチゾールによる代謝促進が行われなくなり、基礎代謝量が落ちることになります。つまりエネルギーが消費されにくくなるため太りやすくなります。

食べてすぐ眠ると牛になる」と言われるのはこのためです。

夕方5時に夕食を食べて次の朝まで食事を取らないような、極端に食事と食事の時間を空け過ぎても、血糖値が下がりすぎてよくありません。睡眠前の食事は、就寝時間のおよそ3時間前までに済ませることが、血糖値的にも胃や腸での消化吸収的にも適していると考えられています 。

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