育ち盛りの小学生ですが、日本スポーツ振興センターの調査によると、小学生のおよそ7割~8割の子どもが、朝スッキリと目覚めることができていないそうです。朝の目覚めは、登校後の学習や運動のパフォーマンスにも影響が生じます。小学生の起床時間や朝起きてからの過ごし方などをまとめました。


調査データ

小学生の起床時間や睡眠時間など、睡眠を取り巻く客観的なデータとして、日本スポーツ振興センターによる「平成22年度 児童生徒の食生活実態調査」によると、以下のような調査結果が示されています。

起床時間
6:01~6:30、6:31~7:00 にピークとなり、7:00 までに60%以上が起床しているようです。

就寝時間
21:31~22:00 がピークとなり、約 50%の児童が 22:00 までに寝ているが、約 20%以上が 22:31以降に寝ているようです。

睡眠時間
8 時間半~9時間がピークであり、男子 81.6%、女子 80.5%が 8 時間以上睡眠時間をとっているようです。

朝すっきりと目がさめるか
男子:スッキリ目覚めた:26%、少し眠かった:54.6%、中々起きられなかった:19.5%
女子:スッキリ目覚めた:21.3%、少し眠かった:60.7%、中々起きられなかった:18%

実は、小学生の男子の約74%、女子の約79%が朝スッキリと目覚められていないというのが現状です。このような結果が示される背景には、起床時間だけでなく就寝時間、睡眠時間の長さに社会全体で何らかの問題が潜んでいるのではないかと考えられます。

小学生の起床時間のモデルケース

学校に通学する小学生の平日の朝の起床時間は、学校の始業時間の1時間20分前ぐらいに起床』すればよいかと思われます。
*時間の内訳:着替え(5分)、食事(15分)、トイレ(10分)、学校の用意(10分)、通学(30分)、授業の準備(10分)

学校が8時20分開始だとすると、朝7時に起床するのが最適です。学校と家が近く、通学時間が短い場合はもう少しゆっくり出来るかもしれません。

小学生が朝起きたら必ずするべき3つのこと

  • 朝食を食べる
  • トイレに行く
  • 朝日を浴びる

朝食は必ず摂る

年々朝食を抜く子どもが増えていますが、朝食の摂取の有無は日中の脳と身体の働きに大きく影響を与えますので、必ず摂取しましょう。

血糖値が下がりすぎる
通常、夜ご飯を食べたあと眠りにつくと、朝起きるまでは栄養の補給は一切ありません。この間、夜ご飯で摂取したものは全て消化されて、朝起きる頃にはお腹は空っぽです。

脳や身体のエネルギーとなるブドウ糖も肝臓に一定量蓄えられているもの、眠っている間に使い切り、朝になると血糖値が下がり始めてしまいます。そのまま朝食を摂らず血糖値が下がった状態のまま、学校で授業を受ける場合、血糖値が下がり続け、気力や集中力の低下、めまい、イライラなどを起こして、授業への集中力が減ってしまい、成績にも影響が生じます。

体育などで運動をする場合も、血糖値が低い状態では交感神経系を興奮させるエネルギーが不足して、運動能力も低下してしまいます。

昼食で血糖値が急上昇
朝食を抜いた場合、昼に学校の給食でようやく栄養補給ができますが、給食をとった後に今度は血糖値が急上昇してしまいます。学校の給食は栄養バランスを考慮されたバランス良い食事ではありますが、毎日のように血糖値の急上昇を体験すると、子どもであっても『糖尿病』の予備群になる可能性があります。

また、血糖値が急激に上がると、今度は眠気が襲ってきて、午後の授業は眠たくて聞いていられない状態になるかもしれません。

朝食を取ることは体温を上げる効果もあります。近年は子どもの低体温化が進んでおり、平熱が36度未満の子供が増えていますが、これは朝食を食べないことも影響があると言われています。慢性的な低体温は、自律神経系の乱れに繋がり、集中力の低下、免疫力の低下、疲れやすい、身体の成長が遅れる、イライラしてキレやすいなど、様々な悪影響が生じる恐れがあります。

子どもがこのような状態で一日を過ごすことを避けるためにも、朝食は少ない量でも良いですから、栄養バランスの良いものを必ず食べるように習慣づけしましょう。

トイレに行く習慣

朝食をしっかり取ると、腸のぜん動運動が起こり、便意を催します。毎朝決まった時間に排便する習慣を付けることで、健康な腸内環境を育むことが出来ます。

腸は様々な栄養を分解・吸収する重要な臓器ですから、腸の健康を保つことは、健やかな心身の成長を助けるだけでなく、ストレスの解消や集中力の増加、また免疫力を向上させてびょうきになりにくい身体作り、アレルギーに強い体などを育むために重要です。

逆に腸内環境の悪化は、腸の担う様々な作用や恩恵が十分に受けられず、心身の発育にも悪影響が生じる可能性もあります。

朝忙しくトイレに行く暇がないのであれば、起床時間そのものを見直してゆとりを作りましょう。

太陽光を浴びる

一日を能動的に過ごすには、朝の太陽の光を浴びることが非常に重要です。太陽光には脳を覚醒する強い作用があり、朝起きてから太陽光を浴びることで、脳が活性化して、授業中の集中力を高める効果があります。

また、太陽光を浴びると体内時計がリセットされ、自律神経系も正常に切り替わります。朝起きて体内時計がリセットされると、脳を覚醒させる作用を持つ神経伝達物質『セロトニン』の分泌が活性化し、事業中の眠気を防ぎ、集中力を高めて、学習効果を向上させます。

また、セロトニンは夜の睡眠ホルモン『メラトニン』の分泌にも良い影響を与え、質の良い睡眠を取りやすく、心身の成長に大いに貢献します。

小学生の体内時計はまだまだ不安定ですが、この時期に規則正しい生活習慣を身につけ、体内時計も安定して機能するようにしておくと、その後成長期を迎えたときに、自律神経系の働きが乱れて起立性調節障害を起こすような不安が減ります。

朝起きたらカーテンを開けて、太陽光が家の中に入るようにしましょう。太陽光は直接浴びる必要は無く、窓やレースカーテン越しでも家の中に差し込んだ光を感じることが出来れば十分です。時間の余裕があれば、ベランダなどに出て、頭に太陽光が当たるようにして10分程度過ごすと良いでしょう。(太陽光は直接見てはいけません。)

小学生の睡眠で気をつけること

睡眠時間
睡眠には、心身の疲れを取るだけでなく、成長ホルモンが分泌されて体の成長が促進されます。また、脳内では記憶の整理が行われて、勉強して学んだことを定着させる効果などがあります。

覚えることが多く、育ち盛りの小学生の場合、少なくとも10時間程度は睡眠時間を確保することが重要です。朝7時に起きるとしたら、夜9時には寝付かせるようにしましょう。

夜遅いの食事は控える
夜の食事が遅く、就寝時間の直前になってしまうと、寝付きが悪くなったり、寝ている間も胃や腸が動いて、睡眠の質を悪くする恐れがあります。睡眠の質が悪くなると、子どもの成長に欠かせない成長ホルモンの分泌量が減ってしまう可能性があります。

食物の消化には時間がかかりますので、夜の食事は、就寝前の3時間、少なくとも2時間前までには済ませるようにしましょう。

夜9時に就寝するとしたら、6時~7時に食事を済ませるのが良いでしょう。

寝る前のテレビやゲームは厳禁
夜眠る前のテレビ鑑賞やゲームでの遊びには注意が必要です。電子機器からはブルーライトという、青色の光が出ており、この光には強力な覚醒作用があります。夜眠る前にブルーライトを浴びると、脳が覚醒してしまい、寝付きを悪くしたり、睡眠の質を悪くするような悪影響が生じる恐れがあるのです。

夜眠りにつく前は、室内の明りは暖色系の間接照明などに切り替え、就寝の少なくとも1時間前にはテレビやゲームなどの電子機器の使用は止めるようにすると良いでしょう。

  • 朝食は欠かさないようにする。甘いものばかりは避け、栄養バランスよく。サンドイッチなどでまとめて。→体温上昇と、脳の覚醒促進。授業の集中力アップ。
  • 起床時間を出来るだけ「固定」する→体内時計を育むため。夜の就寝時間の固定化にも繋がる。(メラトニンの分泌)。これを怠ると、成長期を迎えたとき自律神経系や体内時計が乱れやすくなる。
  • 朝起きたらカーテンを開けて太陽光を浴びること。部屋を出来るだけ明るくする。→交感神経系が刺激され、体内時計がリセットされる。脳の覚醒も促され、授業の集中力もアップする。

子どもの睡眠時間が足りないと感じる場合

小学生の場合、低学年なら10時間、高学年でも9時間程度は睡眠時間を確保したいところです。しかし最近は小学生と言えど、毎日が過密スケジュール。宿題に塾、部活などをして過ごすと、就寝時間は遅くなりがちで、睡眠時間がどんどん削られてしまいます。

育ち盛りの子どもにとって、睡眠は脳や体が成長するために必要不可欠。睡眠時間が減るとその分心身の成長にも悪影響が生じる可能性があります。

夜遅くまで起きている子どもを見ていると、少しでも睡眠時間を確保するために、朝はゆっくり寝かせてあげたいところですが、学校に行くギリギリまで寝ていてゆとりが無い朝を過ごす生活をしていると、朝起きてから必ずすべき、食事、トイレ、日光浴が疎かになり、学校での授業中のパフォーマンスが落ちてしまいます。

学校での授業や友達との時間は子どもにとって最も大切にすべき時間です。睡眠時間が短い場合、朝の起床時間を遅くするのではなく、夜の就寝時間を少しでも早くするように工夫しましょう。

何より、子どもにとっての睡眠とは、脳や体を成長させるための大変貴重な時間ですから、睡眠時間を削ってまで勉強や運動をさせるというのは、その子の成長や将来にとって、必ずしも良い結果を招くとは言い難いのです。

勉強や部活の時間が詰め込み過ぎになっているようであれば、少しゆとりを持ったスケジュールに組み直しましょう。

子どもの寝付きが悪いと感じたら

いくら言っても、中々寝付いてくれない子どもがいます。中にはベッドに入って寝ようとしているにも関わらず、眠れない子どももいます。子どもの寝付きが悪い原因のひとつとして考えられるのが、先にも取り上げた睡眠ホルモン、メラトニンの分泌不足です。

メラトニンは夜眠るべき時間になると、本来は自然と分泌量が急増して、自然に眠たくなるようにしてくれる物質ですが、何らかの理由でメラトニンの分泌そのものが少なくなってしまうと、寝付きが悪くなってしまうことがあります。

一般的なメラトニンの分泌量は、大人よりも子どものほうが多いため、子どもは夜になると大人よりも早く、そして長い時間睡眠を取ることが自然ですが、メラトニンの分泌が減少していると、寝付けない、眠りが浅い、そして朝起きられない、起きるのが辛い、という子どもになってしまいます。

思春期を迎える子どもの場合、気を付けなくてはならない起立性調節障害という症状があります。これは、めまいや立ちくらみ、貧血、低血圧、そして朝が苦手、と言った症状が特徴的な、思春期を迎える小学生高学年から高校生頃の子どもに見られる身体症状です。

お子さんの寝付きが悪い場合で、めまいや立ちくらみなどの症状も併発している場合は、起立性調節障害を起こしている場合や自律神経系のバランスが乱れていることがありますので、専門医に相談して下さい。

休日の起床時間

休日は何時まで寝かせておいて良いのか?

日頃睡眠時間が不足していると、休日はどうしてもいつもよりも起床時間が遅くなりがち、中には昼過ぎまで寝ているという子どももいます。しかし、いわゆる『休日の寝貯め』はあまりおすすめできません。

おすすめできない理由は、休日に普段よりも起きる時間が遅くなると、その日の夜の寝付きが悪くなる可能性があることと、これがきっかけで体内時計が乱れて、生活リズムを壊す場合があるためです。

メラトニンの分泌が乱れる
人は朝起きたときに体内時計がリセットされ、自律神経系が働き出します。同時に、夜眠るときに分泌される睡眠ホルモン『メラトニン』の分泌時間がセットされます。メラトニンは、体内時計の影響を受けて、起床後から数えて13~15時間後に分泌量が最大になるようにセットされます。

普段よりも遅く起きるということは、体内時計のリセット時間も普段よりも遅くなるため、その分その日の夜にメラトニンが分泌される時間が遅くなる可能性があり、そのせいで夜の寝付きが悪くなる恐れがあるのです。

ただ、これが一日だけで終わるのであれば、さほど影響はないと言えます。つまり、例え休日に遅くまで寝ていたために、その日の夜の寝付きが悪くなったとしても、次の日からまた普通に寝起きが出来るのであれば、それはそれで影響が少なく済みます。

しかし、成長過程の小学生の場合、体内時計がまだまだ未発達な場合があり、たった一日の起床時間のズレが、体内時計の乱れを起こす原因となり、その後の数日に渡って、もしくはもっと長期に渡って影響を及ぼす場合があるのです。特に夏休みのように長期の休暇は注意が必要です。夏休みの間、毎日お昼まで寝ているような生活を続けると、体内時計が大幅に乱れてしまう恐れがあります。

こうした休日の寝貯めによって体内時計が乱れるのを防ぐには、平日よりも長く眠る場合は、『平日の睡眠時間+2時間以内』に抑えると良いでしょう。

photo credit: Rise ‘N Shine(license)