うつ病の発症原因の一つとして考えられる、強いショックやストレスによるうつ病の発症と、その発症プロセスにおいて、脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンとの関与が考えられます。

ストレスによってノルアドレナリンが活性化する

ノルアドレナリンは強い覚醒作用を持ち、身体の緊張・興奮状態を保ち、物事への注意力、判断力、集中力を高めます。
また、痛みなどを鈍化させる作用を持ちます。

ノルアドレナリンが分泌されるタイミングは、主に何らかのストレスを受けた時です。
このストレスとは、意識できるもの(恐怖とか痛みとか)でも、無意識のもの(人間関係とか仕事とか)に関わらず、脳が受けたストレスです。
現代社会型のストレスが、無意識のうちに溜まっていくストレスで、この無意識ストレスに反応してノルアドレナリンは人知れず分泌されていることがあります。

ノルアドレナリンが分泌され続けるとやがて枯渇する

現代型のストレスの特徴として、無意識のうちに受けていることが多い心理型のストレスであるということと、もう一つ、そうしたストレスを受ける環境下で、長期間(例えば学校や仕事場のように)生活するケースが多いということです。

つまり、対人関係などで無意識でストレスを受け続け、その結果、ノルアドレナリンやコルチゾールのようなストレスホルモンが分泌され続ける状況に知らないうちに陥っているということが多いのです。

ノルアドレナリンやコルチゾールはストレスへの耐性のために分泌されており、分泌され始めた当初はストレスに抗うように分泌されます。 しかし、ストレスが長期化・慢性化してくると、ノルアドレナリンが徐々に不足してきて、終いには枯渇してしまうことがあります。

ノルアドレナリンの不足からうつ病へ

ノルアドレナリンが不足すると、ノルアドレナリンの作用として享受してきた、集中力や意欲、注意力、判断力などが低下して、無気力、無関心といった、うつ病の特徴とも言えるべき症状が現れるようになります。
また、不足したノルアドレナリンをノルアドレナリン受容体は少ないノルアドレナリンを有効利用するために、感度を上昇させます。
そうすると、少しのストレスを受けただけでも過敏に反応するようになり、キレやすくなったり、すぐにくよくよしたりするようになります。

こうした無意識に受けるストレスが原因のノルアドレナリンの枯渇は、誰にでも起こる可能性があります。 言い換えれば、誰にでもうつ病を発症するリスクがあるとも言えます。

現代社会には特に多い、無意識に受ける続けるストレスによって、ノルアドレナリンやセロトニンといった脳内の神経伝達物質の働きが衰えてしまうことで、うつ病を発症する人が増えていると考えられます。

遠慮や配慮は日本人の美徳とされていますが、我慢することでストレスを余計に貯めこんでしまっている人も多いかもしれません

ただ、ノルアドレナリンは、本来は生物の生存本能と言っても良い、生きていくための意欲や動機、危険を回避する判断力を作り出す役割を担っています。
ノルアドレナリンを上手く使えば、物事への判断力や集中力が増し、スポーツや仕事でのパフォーマンスを向上させることが出来ます。

ノルアドレナリンの源はストレスですので、ストレスとも適度に上手く付き合うことが、上手に生きるヒントかも知れません。