思春期の子どもに起こりやすい起立性調節障害ですが、特に男子よりも女子の発症割合が高く、女子のほうが男子よりも1.5倍から2倍程度発症割合が多いことがわかっています。女性が男性よりも発症しやすい理由などをまとめました。

ホルモンバランスの影響

起立性調節障害が起こる大きな原因が、自律神経系の働きに乱れが生じることです。

思春期は特に心身の成長や変化が著しいため、体の成長に自律神経系や血管など循環器系の発育が追いつかないことで貧血、低血圧、立ちくらみ、めまいと言った起立性調節障害の代表的な症状が現れやすくなると考えられています。

思春期に起こる成長の中でも、男女で大きく異なるのがホルモンの分泌です。女性の場合、初潮を迎えると女性ホルモンの分泌が始まり、月経が起こります。

女性のホルモンバランスは月経周期の影響を受けて変化します。

ホルモンバランスの変化が女性の精神に与える影響は大きく、PMS(月経前症候群)はホルモンバランスの乱れによって起こる代表的な症状です。

PMSの症状は、イライラしたり怒りっぽい、情緒不安定など、精神的な影響が主なものですが、ホルモンバランスの乱れによる肉体的な影響として、自律神経系の働きにも乱れが生じやすくなることが、女性に起立性調節障害が起こりやすい原因の一つだと考えられます。 男性には女性のような明確なホルモン周期はありません。

また、月経による出血で鉄分が不足しやすいのも、女性が起立性調節障害を起こしやすい原因の一つであると考えられます。

詳しくは『起立性調節障害になりやすい思春期の鉄不足』をご覧ください。

女性は筋肉量が男性より少ない

思春期を迎えて体が成長するとき、男性は筋肉がついてたくましい体つきになる一方、女性の体はより大人の女性らしい丸みを帯びた体つきへの変化が生じます。

このとき、男性の場合は思春期の成長で筋肉量が増えることで、脳など立ったときに心臓よりも高い位置へ血液を送る血管のポンプ機能も強化されやすいため、女性に比べると立ちくらみや貧血などの症状が生じることが少ないのです。

一方、女性の場合は思春期になっても筋肉が付きにくいため、同じ運動をしたとしても男性よりも筋肉量が少なくなり、血液を心臓よりも高いところへ送るポンプ昨日の発育が遅れてしまいやすいのです。また、体型を気にするあまり、食事量が減って痩せてしまったり、ダイエットを試みるのも女性のほうが男性よりも多く、食事量が少ないことも筋肉量が減る一因です。

女性は体温も低くなりやすい
筋肉量が少ないということは、体温を作り出す大きなエネルギー源が少ないということになるため、どうしても体温が低くなりがちです。体温が低くなると、そのぶん交感神経系の働きも弱くなりやすいため、自律神経系の乱れを生じやすくなる原因の一つに数えられます。

女性は一般的に体温が36度未満の低体温の割合が男性よりも多いと言われています。

女性はセロトニンが男性より不足しやすい

セロトニンは、脳内で働く神経伝達物質の一つです。

セロトニンの働きの多くは、自律神経系のうち交感神経系へ関与するもので、血管の収縮、脳の覚醒などがその主な作用です。

実は脳内で合成されるセロトニンの量は、女性は男性の半分程少ないことが分かっており、女性は男性よりもセロトニンが不足しやすい体質なのです。

こうしたことは、女性がヒステリーを起こしやすい、感情的になりやすい、といったエピソードとも関わりがあると考えられます。セロトニンは精神の安定を司る物質で、不足すればその分感情が荒くなりやすいのです。

また、ストレス等によって引き起こされる腸機能の異常である、過敏性腸症候群(IBS)も女性のほうが罹患率が高いと言われていますが、IBSもセロトニンが関わると言われる代表的な病気の一つです。

まとめ

今回女性に起立性調節障害が多い原因としてご紹介した事柄は、いずれも個人差が大きく、男性でも起立性調節障害を起こす人は沢山いますし、女性が必ずしもセロトニンが不足しているわけでもありません。

ただ、こうした様々な要素が絡まり合うことで、女性のほうがより自律神経系の働きが乱れやすく、そのことで女性のほうが起立性調節障害を起こしやすくなっている、というのは事実であると言えるでしょう。

photo credit: Just a Girl (license)