タバコは、お酒と並んで庶民でも楽しめる身近な嗜好品です。一方で、タバコの持つ有害性も次々と明らかになってきました。その一つが、喫煙による抜け毛の増加です。タバコで抜け毛が増える原因をご紹介します。

血行不良

タバコに含まれるニコチンは、体内に入ると交感神経系を刺激して、血圧を上昇させ、血管が収縮して、末端細胞になればなるほど『血行不良』が起きやすくなります。タバコを吸って頭がクラクラすることがあるのは、血行不良により末端細胞が一時的な酸欠状態に陥るためです。

このようにニコチンによって血行不良が起こると、末端細胞である頭皮の毛細血管には血液が届きにくくなり、育毛に必要な酸素や栄養素が届きにくくなってしまうため、抜け毛が増える原因となるのです。

また、タバコを吸うと体内で大量に発生する一酸化炭素は、血中で酸素の運搬をしているヘモグロビンと結合し、血液中の酸素量が減少して、頭皮細胞への酸素の運搬を阻害してしまい、毛髪が酸素不足を起こして抜け毛を起こしやすくしてしまいます。

さらに、長期的な喫煙は、ニコチンや一酸化炭素の影響により、血圧を慢性的に上昇させ、血管の老化を促進させて、動脈硬化や高血圧症などを引き起こす原因ともなります。血管の老化も抜け毛が増える原因の一つです。

DHTの増加

DHT(ジヒドロテストステロン)は男性ホルモンの一種で、抜け毛を促進させる物質として知られています。タバコを吸うと、体内では男性ホルモンのテストステロンの分泌が亢進され、その結果DHTも増加することが明らかになっています。

肝機能低下

タバコに含まれるタールやニコチンは、それ単体では毒物に指定される物質で、毒性が高いことで知られています。ニコチンのような毒物や異物が体内に入ると、肝臓がそれらを分解しようと働きます。

喫煙習慣が長年になればなるほど、慢性的に肝臓に負担がかかる状態が続くことになるため、次第に肝臓が本来持つ栄養素の分解などの機能が低下していき、毛髪の発育に必要な栄養素が十分に供給されなくなってしまい、抜け毛が増えてしまう恐れがあるのです。

活性酸素の増加

タバコを吸うと体内に活性酸素が大量に増えます。活性酸素は血液に混じって体中に循環し、細胞と結びついて細胞を酸化させていきます。細胞の酸化とは一言で言うと『老化』と同義です。

タバコによって活性酸素が体内に増えると、頭皮だけでなく、全身のいたるところで細胞が酸化していき、老化が進行します。頭皮では毛根細胞が老化した結果、正常に毛髪の発育ができなくなり、抜け毛が増えやすくなります。

その他にも血管細胞の老化が進めば、頭皮への酸素供給や栄養素の供給が行われにくくなり、これも抜け毛を増やす原因となります。

ビタミン類の消費

喫煙者の方なら、タバコを吸うとビタミンが破壊される、と言うのは聞いたことがあるかもしれません。強い抗酸化作用を持つビタミンCは、タバコを吸って体内に活性酸素が増えると、細胞の酸化を防ぐために大量に消費されて、本来の必要分が不足することがあります。

他にも様々なビタミン類が喫煙によって消費されて、毛髪の発育に必要な分が不足しやすくなることが分かっています。

ビタミンの中でもビオチンは毛髪の健康維持や血行促進に欠かせません。ビタミンB2やB6は、髪の毛の生成を促す働きがあります。ビタミンEは抗酸化作用、血行促進などの作用で育毛を促します。ビタミンAは皮膚や粘膜を健康に保つ働きがあります。

こうした育毛に関わりのあるビタミン類が、喫煙によって消費されてしまうことで、抜け毛が増えてしまう可能性があるのです。

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