人と人との交わりやふれあいを示す言葉であるグルーミングには、ストレスを緩和させて、セロトニンを増やす効果があることがわかっています。ストレスの多い現代社会において、グルーミングは効果的にセロトニンを増やす方法として注目されています。

グルーミングとは

言葉としてのグルーミング(英:grooming)は、毛繕いや身繕いのような身だしなみを整えることを意味します。動物におけるグルーミングは、猫の毛繕い猿のノミ取りに代表される、自己または他の個体に対して行う特定の行動や習性のことです。

動物の行うグルーミングには、汚れや寄生虫を取り除くなどの健康や衛生機能を向上させる効果があるほか、集団における社会性(群れの結束など)を向上させる効果もあることがわかっています。

例えば清潔好きで知られる猫が、お互いに毛繕いをし合うのも、毛繕いで相手をキレイにすることで結果的に自分もキレイになるからです。また、毛繕いをし合うような間柄の相手にはお互いに害意が低くなることから、お互いの警戒心が薄くなることで、リラックスすることに繋がり、緊張やストレスが緩和されるのです。

グルーミング行為の例

グルーミングには恋人や家族など、誰かと共同で行うグルーミングと一人でも行えるセルフグルーミングがあります。

誰かと一緒に行うグルーミングの例
体を撫でる
肩揉み/マッサージ/エステ/スパ
子どもの身繕いや髪を梳く
耳掻き
ハグ/抱擁/体を密着させる
握手
添い寝
会話/コミュニケーション
セルフグルーミングの例
髪の毛や髭の手入れ/ブラッシング(セルフグルーミング)
バタフライハグ(セルフグルーミング)

グルーミングでセロトニンが増える理由

動物は本来、自分以外の個体に対する警戒心を持っているため、他と向き合うことにはストレスを感じます。それは人間であっても同じことで、他人との触れ合い、会話などを通じて、相手に対する共感や居心地の良さが増すと同時に、相手への警戒心は薄れれば、ストレスが解消されるのです。

こうして、グルーミングすることによってセロトニンが増えるのは、グルーミングにストレス解消効果があるからです。

セロトニンを増やすグルーミングの種類

グルーミングの効果は肌の触れ合いによって高められます。また、誰かと親しく会話をすることでもグルーミング効果を得られます。

スキンシップによるグルーミング

セロトニンを増やすためのグルーミングは、特に肌と肌のふれあいが重要です。お互いの体温、呼吸、表情などが伝わり合うことで、グルーミング効果が得られます。

  • 肌の触れ合い、ボディタッチ
  • ハグ、膝枕
  • 握手、手をつなぐ
  • 子どもの耳掃除や爪切り、髪を櫛でとかす
  • 指圧、肩もみ、エステ、マッサージ
  • ペットに触れる
  • 人形やぬいぐるみを抱く

スキンシップで重要なことは肌のふれあいを通して、「リラックスする」ということです。リラックスすることでストレスが緩和されて、セロトニンが分泌されやすくなります。

不快な触れ合いはNG
したがって、同じ肌のふれあいでも、ケンカのような攻撃的な意図を持った触れ合いや、真夏の満員電車のように、知らないベトベトの他人に触れられる不快感を覚えるような触れ合いでは、逆にコルチゾールアドレナリンなどが分泌されてストレスが増える可能性もあります。

もっとも効果的なスキンシップは、恋人や家族など、信頼の出来る相手とのスキンシップです。ソファやベッドの中で、身体を寄せ合ったりハグするなどして触れ合うことで高いグルーミング効果が期待できます。

独り身の人もご安心下さい。エステやマッサージのような、プロのマッサージ師にマッサージをしてもらうだけでも、リラックスしてセロトニンを増やす効果が期待できます。また、人とのふれあいができない場合でもペットや動物と触れ合うことでもグルーミングの効果を得ることは可能です。

さらに、犬や猫にも触れない、という人でも愛着のある人形やぬいぐるみを触ったり抱いたりすることでも、グルーミングの効果は得られるといいます。

グルーミングで重要な事は、何かに触れることで癒やしを得て、ストレスが緩和されるということです。動物や人形は物を言わず、真の意味では心は通じ合いませんが、本人が(ある意味錯覚ですが)分かり合ったような気になることで一定のグルーミング効果が得られるのです。

会話によるグルーミング

気心の知れた間柄で、顔と顔を合わせて会話をすることは効果的なグルーミングに当たります。

  • 女子会でおしゃべり
  • 銭湯や温泉での裸の付き合い
  • 主婦たちの井戸端会議
  • 仕事終わりの飲みニケーション
  • 晩ごはんでの家族の団らん

相手の表情や声色、話し方などから相手の気持ちを推測しながら会話をすることで、相手への警戒心や恐怖心が薄れ、逆に相手に心を開いて共感することで、ドーパミンやセロトニンの分泌が促進されます。

グルーミングはオキシトシンも増やす

グルーミングやスキンシップは、セロトニンの合成を促進するだけでなく、愛情ホルモンとして知られる、『オキシトシン』の分泌も促進すると言われています。オキシトシンは人との共感性や協調性、相手への信頼などを高めてくれる物質です。

オキシトシンを増やすのもグルーミング
オキシトシンは、セロトニンとほとんど同じ方法で増やすことが出来るとされており、なかでも人との触れ合い、グルーミングがオキシトシンを増やすのに有効だとされています。共感性や協調性を高めてくれるのと同時に、一度心を開いた相手、例えば恋人や家族などと一緒にいる場合、会話やグルーミングを重ねることで、さらにオキシトシンが分泌されやすくなります。

つまり、信頼している相手と一緒にいると、オキシトシンを分泌する効果が高まるのです。

パソコンやネットは効果薄

人間関係が希薄化した現代において、顔と顔を合わせて会話をする機会は減少し、逆にパソコンやスマホなどの電子機器によって、電話やチャット、メールのような間接的な会話が増えました。

間接的な会話の場合、特にパソコン上でのチャットのような場合、文字情報として相手の言葉を理解することができますが、相手がどんな顔で、どんな気持ちで、どんなときに、その言葉を発しているのか、という情報は伝わりにくいため、グルーミングの効果は薄くなってしまい、セロトニンやオキシトシンを増やす効果も期待できません。

学校や会社など、ただでさえ人間関係でストレスが多い現代社会ですが、パソコンやスマホの発達は、人間関係をさらに希薄化させ、社会的なストレスを増やす原因になっていると言えます。

photo credit: Olive Baboon aka Anubis Baboon (license)