睡眠不足は抜け毛が増える原因だということはよく言われることです。では、具体的に何故睡眠不足が抜け毛の原因となるのか、その大きな3つの要素、『ストレスの蓄積』、『腸内環境の悪化』、『ホルモン分泌の減少』をご紹介します。

睡眠不足の症状と抜け毛の関係

睡眠不足は集中力の低下、やる気や意欲の減退、疲れやすくなる、など様々な症状が起こることが知られています。そうした睡眠不足の影響のうち、髪の毛の抜け毛に関わるものをピックアップしてご紹介します。

ストレスの蓄積

睡眠には優れた『ストレス解消効果』があります。逆に言えば、睡眠が不足すると、日頃のストレスが十分に解消されず、次第に蓄積していってしまうのです。

ストレスの蓄積は目に見えないながらも、着実に頭皮を蝕みます。人はストレスを受けると、自律神経系のうち交感神経系がストレスに反応して興奮します。交感神経系の興奮によって、血圧は上昇して血流は悪くなるため、頭皮などの末端組織には血液が循環しにくくなって、毛髪細胞が酸素不足や栄養不足を起こして抜け毛の原因となります。

またストレスは体内に活性酸素を増やします。活性酸素が増えすぎると、体が錆びていき、血管の老化が進んで血流が悪くなります。

このように、睡眠不足によりストレスが蓄積すると、一日のうちで交感神経系が興奮する時間が相対的に増えるため、血圧が常に高い状態、つまり抜け毛を起こしやすい状態に陥ってしまうのです。

腸内環境の悪化

人の腸内には、無数の腸内細菌が生息しています。実はこの腸内細菌と毛髪には深い関係があります。

髪の毛の主成分は『ケラチン』というたんぱく質の一種です。髪の毛はケラチン以外にもビタミン類、ミネラル類など様々な栄養素が元になって構成されます。こうした栄養素を体内に吸収しているのは、小腸や大腸です。そして、小腸や大腸でたんぱく質などの栄養素を分解してくれるのが腸内細菌なのです。

腸内環境が悪化すると、栄養素を分解してくれる腸内細菌が減少してしまいます。そして、腸内環境が悪化する原因の一つが睡眠不足なのです。

睡眠不足によって腸内環境が悪化すると、食事で摂取した栄養素を体内に吸収する力が衰えてしまい、抜け毛が増えるだけでなく、肌や骨、筋肉、脳細胞など、様々な部位に悪影響が生じる恐れもあります。

ホルモンの分泌が減る

睡眠不足によって、髪の毛に関わる2つのホルモンの分泌が減る可能性があります。

メラトニン
メラトニンは睡眠ホルモンとして知られていますが、同時に強い抗酸化作用を持っています。抗酸化作用とは、活性酸素や一酸化炭素のような、フリーラジカルと呼ばれる物質を分解・除去して、細胞を正常に保つ作用のことで、平たく言うと『細胞が錆びるの防ぐ作用』のことです。

『細胞の錆び』とは即ち老化であり、細胞が老化すれば、抜け毛が促進されます。加齢とともに睡眠時間は減少することは有名ですが、同時にメラトニンの分泌も、20歳をピークにして加齢とともに減少していることも明らかになっています。

また、メラトニンは免疫機能を向上させる作用があり、NK細胞などの免疫細胞の働きを強めることが分かっています。免疫機能が正常に保たれていれば、風邪や病気になりにくい体でいることができます。

睡眠不足でメラトニンの分泌が減ると、免疫機能が衰えて、風邪を引きやすくなったり、様々な病気への抵抗力が下がります。病気などになると、体中で様々な細胞が損なわれるため、それらの細胞の修復や再生が急務となります。

ところが、毛髪そのものは生命維持のためには、あまり重要ではない部位であるため、睡眠不足により免疫力が低下して、しょっちゅう風邪を引いたりしていると、毛髪の再生や発毛よりも、病気で損傷した部位の再生が優先されるため、結果的に毛髪が育ちにくく、髪の毛が薄くなってしまうのです。

このように、睡眠不足でメラトニンの分泌が減ると、抗酸化作用免疫機能が損なわれ、抜け毛が増える原因となってしまうのです。

成長ホルモン不足
寝ている間に髪の毛は育つ」とよく言われますが、これはまさに成長ホルモンのおかげです。

成長ホルモンは人のあらゆる細胞や体組織の再生・修復を担うホルモンです。一日のうち、成長ホルモンが最も分泌されるのは、夜の寝ている間です。つまり、睡眠が不足すると、その分成長ホルモンの分泌するチャンスが減ってしまうため、毛髪細胞の生成・修復が滞って髪の毛が育たない、という結果になるのです。

抜け毛を防ぐ睡眠のゴールデンタイム?

成長ホルモンと育毛の関係を表す言葉として、よく『夜の22時から2時までの4時間が睡眠のゴールデンタイム』という言葉が使われますが、これは「ウソ」と言うか誤りです。正しくは、『入眠後の3時間』これが成長ホルモンが最も多く分泌される時間帯です。

詳しくは『睡眠のゴールデンタイムのウソと真実』をご覧ください

人によって生活リズムは違いますので、無理に夜22時に眠る必要はありません。日本の夜の22時はブラジルの人にとっては朝の10時ですが、フサフサの人も大勢います。

ただし、入眠後に成長ホルモンをたくさん出すには、ただ眠れば良いわけではありません。これもよく言われることですが、『睡眠には質が重要』なのです。入眠後の3時間に、どれだけ深い眠りが出来るか、これが髪の毛を育む成長ホルモンをドバドバ出す秘訣です。

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