十分な睡眠時間をとっているはずなのに、昼間の仕事中や勉強中に強い眠気が襲ってくる。そしてだるい、疲れる。こんな時は、「きっと睡眠が足りていないのだ」と思いがちです。そして、睡眠不足を解消するために週末に寝溜めしても、週明けの朝の足はやっぱり重く、また眠気が襲ってくる。そんな症状の原因は睡眠不足ではなく、鉄分不足かも知れません。

睡眠不足と間違いやすい

眠気や倦怠感、集中力の低下などは一般的な睡眠不足の症状にも当てはまり、事実、多くの現代人は睡眠が不足しているため、こうした症状が起こった時には、睡眠不足だと思い込んでしまうのです。

一方で、余り知られていませんが、鉄分が不足した場合も、睡眠不足のときと同じような、『眠気』や『疲労感』といった症状が表れることがあります。眠気は鉄分不足による脳の酸素不足が原因で、疲労や倦怠感も体内の細胞に十分な酸素が行き渡らないための筋肉など細胞の酸素不足が原因です。

こうして鉄分不足は睡眠不足と混同・誤解され、見過ごされがちです。睡眠を十分とっているにもかかわらず、疲れが取れない時や強い眠気に襲われることが多くなったら、鉄分不足の可能性も考慮しましょう。

鉄分不足で起こる疾病

鉄分の不足で起こる症状として一般的に知られているのは、貧血で、貧血の原因のおよそ8~9割は鉄欠乏性貧血であるとされています。日本では、成人の5人に1人は鉄欠乏性貧血であるとされるほど、多くの人に鉄分が不足しています。

また、ある調査の結果から、50%以上の女性はフェリチン不足(※)である可能性があることが分かっています。
※フェリチンとは鉄分が肝臓などに格納されたときの呼び名。貯蔵鉄。

鉄分不足がうつ病や不眠症の原因になることも

鉄分不足で起こるのは貧血だけではありません。

鉄分はセロトニンドーパミンと言った、神経伝達物質の合成に関与していることから、鉄分の不足は、セロトニンやドーパミンなどの合成に悪影響を与え、その結果、うつ病睡眠障害を引き起こす可能性が指摘されています。

実際、原因不明の睡眠障害に長いこと悩まされていた人が、実はフェリチンという鉄分を格納する物質が不足していた事がわかり、それを治療したところ睡眠障害が改善したということです。病気の原因とは、どこに繋がっているのかわからないものです。

★次のページでは『鉄分の増やし方』をご紹介します。

photo credit :JD Hancock