サイクリングは、手軽にセロトニンが増やせる運動です。最近は通勤時に自転車に乗る人も増え、クロスバイクやロードバイク、マウンテンバイクなどの、スポーツ用自転車も人気です。サイクリングによってセロトニンが増える理由や、効率よくセロトニンを増やすための方法などをまとめました。

何故サイクリングでセロトニンが増えるか

サイクリング、つまり自転車を漕ぐとき、自転車のペダルをグルグルとリズム良く回すことで自転車が進みます。この『ペダルをグルグルと回す』という運動こそが、セロトニンが増える『リズム運動』の一種に該当します。

脳内にあるセロトニン神経は、呼吸や血管の収縮などの、無意識のうちに行う『不随意運動』という運動を制御しています。呼吸や血管の収縮も、一定のリズムで行われるリズム運動の一種です。

セロトニン神経はリズム運動をより多く行うことで、活性化することが明らかになっており、具体的には5分程度から可能であれば30分以上のリズム運動がセロトニン神経の活性化に有意に役立つといいます。

サイクリングで効率よくセロトニンを増やす

セロトニンを増やすことが期待できるリズム運動はいくつか種類がありますが、サイクリングはそれらの運動の中でも特にお勧めの運動の一つです。

子どもからお年寄りまで、幅広い世代で行える
自転車に乗れる人は多く、多くの世代でサイクリングはブームにもなっています。都心部でも大きな川沿いではサイクリングロードが整備されているため、自転車さえあれば誰でも気軽に、手頃に楽しめる趣味として始めることができます。

遠くに行ける
サイクリングで遠くに行くことは、見たことのない景色、通ったことのない道、入ったことのないお店など、常に多くの新しい発見をすることが出来るため、ドーパミンの分泌にも役立ち、これも健康の増進に大きく寄与します。頭のなかで地図を作り、広げていくことはワクワクして想像を掻き立てます。次はどんな発見が待っているだろう?というワクワクが新たなモチベーションを生み出すのです。

同じリズム運動として有効なウォーキングとの違いは、この「遠くに行ける」という点が大きいでしょう。あるきならせいぜい片道10km程度が限界ですが、自転車なら50kmくらいなら楽々走破可能です。活動範囲が広がれば、それだけ新しい発見も多くなり、ドーパミンの分泌は止まることを知りません。

長い時間運動しても苦にならない
同じリズム運動でも、ウォーキングやジョギングの場合、どうしても膝や腰への負担が大きく、体を痛めてしまいやすいのが難点です。そこへ行くとサイクリングは、間接や筋肉への負担が非常に少ないため、長い時間漕いでいても疲労が少なく、習慣化しやすいという利点があります。

ただし、長時間同じ姿勢で漕ぎっぱなしになると、どうしても腰や背中が痛くなることがありますので、自転車で遠出をする場合は、こまめに休憩をとってストレッチなどをして体をほぐすと良いでしょう。また、自転車を漕ぐと思いの外、汗をたくさんかきますので、水分補給もお忘れなく。

ゆっくり漕いでも問題なし
セロトニンを増やすためのリズム運動には、「激しい運動である必要がない」という特徴があります。例えばものを噛む、歩く、呼吸をする、などと言った、生活の中でごくごく当たり前に行っている程度の運動が、セロトニン神経を刺激するのです。ですから、自転車を漕ぐ場合でも、速く漕ごうとする必要がまったくないのです。

二輪の自転車の運転に自信がない人は、安定性に優れた三輪の自転車でも良いでしょうし、電動自転車でももちろん問題ありません。

抗重力筋のトレーニングにもなる
人は自転車に乗っているときは、無意識のうちにバランスを取って、自転車が倒れないように制御しています。このとき働くのが、『抗重力筋』という無意識に姿勢を制御するときに働いている筋肉です。

実は、体のバランスをとる抗重力筋も、血管の収縮するときに使われる筋肉や呼吸するときに収縮する気道の筋肉と同じくセロトニン神経が制御している筋肉の一つなのです。

自転車に乗って無意識のうちに抗重力筋を使うということは、抗重力筋のトレーニングにもなっているのです。特に、普段立ったり歩いたりしているだけでは使われにくい筋肉も、自転車に乗ることで使われるため、自転車にのることはセロトニン神経の活性化には好都合なのです。

日光浴にもなる
屋外を走るサイクリングでは太陽の下を走ることになります。太陽光はセロトニン神経を刺激するもっとも大きな要素ですので、昼間の太陽光が出ているときにサイクリングをすることで、日光浴によるセロトニンを増やす効果も相乗効果として期待できます。

日光浴は骨の生成や免疫力の向上にも必要なビタミンDにも効果的です。

ただし、必要以上に紫外線を浴びると、シミやシワなどの肌トラブルの原因になったりすることもあるため、日焼け対策は十分にしましょう。尚、紫外線対策は夏だけすれば良いと思われがちですが、紫外線の量はあまり季節に関係ありませんので、冬でも肌を出せば、その分紫外線を浴びることになりますから、冬でも紫外線がきになる場合はしっかりと対策をしましょう。

どうせなら呼吸も意識して
サイクリングによるセロトニン増加効果をもう一つ増やすために、サイクリングのときの呼吸法にも工夫をしてみてはいかがでしょうか。呼吸はセロトニン神経を刺激する要素で、無意識に誰でも行っています。この呼吸を意識して、特に腹式呼吸、または丹田呼吸法と呼ばれる呼吸法で行うことで、さらに効率よくセロトニン神経を刺激することができます。

4倍の相乗効果
このようにサイクリングをうまく利用すると、1.サイクリング(リズム運動)+2.抗重力筋トレーニング+3.日光浴+4.呼吸法と、セロトニンを増やす効果のある事柄を同時に4つも実現することが出来るため、非常に効率よくセロトニンを増やすことが期待できるわけです。

また、サイクリングは同時に新しい発見をすることで、ドーパミンの分泌にもつながり、明日への活力、そして健全な精神のトレーニングにも最適です。

速く漕ぐ必要はない

最近はロードバイクなどが人気で、若い世代だけでなくシニア世代もロードバイクの愛好家が増えています。サイクリングと聞くと、こうしたロードバイクに乗って、とにかく速く走らなくてはならないような誤解を受けるかもしれませんが、実はセロトニンを増やすためのリズム運動では、激しい運動をする必要はありません

例えばものを噛む咀嚼のように、極弱い力で繰り返し行うような運動でも、脳のセロトニン神経への刺激には十分で、サイクリングの場合も速く漕がずに、ゆっくりと自分のペースで漕ぐだけで良いのです。

ダイエットや健康増進も兼ねて魅力的

サイクリングはセロトニンを増やす効果が期待出来るだけでなく、様々なメリットがあります。

運動をするということは優れたストレスの解消効果がありますので、日頃溜まった運動もサイクリングをすることで効率的に解消できます。

また、ペダルの漕ぎ方で体への負担は異なりますが、重たいギアで漕げば、無酸素運動による足の筋肉の強化になり、長期的には筋肉量が増えることによる基礎代謝量の増加と、それに伴うダイエット機能が期待できます。

さらに、ギアを軽くしてシャカシャカ速くペダルを回すと、心肺機能が活性化する有酸素運動になり、脂肪を直接燃焼させてメタボ対策になる他、心肺機能や血管の強化に繋がり、動脈硬化や心筋梗塞、また、生活習慣病の予防にも役立ちます。

サイクリングは手軽に始めることができ、通勤や長距離移動など幅広い用途にも対応した、魅力あふれるリズム運動だと言えるでしょう。

photo credit: Santa caught on cam (license)