しつけや育ちの悪さを揶揄して「親の顔が見てみたい」「お里が知れる」などと言いますが、親のしつけ方や生まれ育った環境はさて置き、親子の間で受け継がれる遺伝子には、性格に関する情報も含まれるのでしょうか?また、南国は陽気な国柄などと言われますが、人種によっても性格に差が生じるとしたら、それは何故なのでしょうか?

バーナム効果と血液型占い

いわゆるステレオタイプな性格として、「ブラジル人は陽気だ」とか「ラテンの血」などと表現したりします。

日本でも、「○○生まれの人は呑気で時間も守らない、■■地方の人は陰険だ」などと、人種や生まれ育った地方によって、さも性格が決定されるような言い回しがあります。
しかし、この場合に、性格を識別している要素は、遺伝というよりも、その地方ごとの風土や風習、または見る側の偏見によるものが多いのではないでしょうか。

では、親から受け継ぐ、性格を決定する因子は存在するのでしょうか?
多くの日本人がパッと思い浮かべるのは「血液型」ではないでしょうか。
日本では血液型占いと言うのが結構人気で、TVで度々取り上げられたり、書物も沢山出ています。
私はこの血液型占いでは嫌われがちなB型で、いつもイヤな思いをしてきました(笑)

実は、血液型占いには科学的な根拠は全くありません。
(それを言うと、「やっぱりB型だね」と言われたりするのですが。)
この占いの根底には、バーナム効果という心理学現象が働いていると言われています。
大事なことなのでもう一度否定します。
血液型占いは嘘です。

親から子へ受け継ぐ性格因子は?

さて、親から受け継ぐ血液型が性格に影響しないとなると、性格は遺伝しないのでしょうか?
大人しいとか、荒々しいとか、内向的だとか陽気だとか、こうした性格の特性の多くは脳内の神経伝達物質によって決められていると考えられています。

その神経伝達物質の一つがセロトニンです。
セロトニンは、脳内でドーパミンノルアドレナリンの暴走を抑えて、心のバランスを取る役割を果たしているとされています。

ヴェルツバーグ大学のピーター・レッツ医学博士らの研究から、脳内の神経間でセロトニンの伝達を行うセロトニントランスポーターという物質の遺伝子型から、性格の方向性に一定の違いがあることがわかってきました。

セロトニントランスポーターの遺伝子型にはS型、L型があり、その二つの型の組み合わせからSS型、SL型、LL型の3通りがあります。

各遺伝子型の保有割合を調べると、国や民族によって一定の傾向があり、日本人にはS型遺伝子のの保有傾向が多くL型の保有割合は少ない事がわかりました。

逆に、アフリカ人や欧米人では、L型の保有割合が増えるそうです。

実は、セロトニントランスポーター遺伝子は「不安遺伝子」などとも言われ、SS型>SL型>LL型の順で不安を感じやすいとされています。
逆に、L型は社交的で活動的、好奇心の旺盛な性格になる傾向があります。

日本人は不安を感じやすいS型の保有割合が多い

日本人はS型を保有している割合が多いことから、日本人の性格は不安やストレスに弱く、慎重で臆病、神経質になりやすいといえるでしょう。
また、アフリカや欧米人のような陽気で社交的な性格を持った人は日本人には少ないように思えます。
(割合の話で、陽気な人が存在しないという意味ではない)

そして、セロトニントランスポーターの遺伝子型(S,L型)は、親から子に代々遺伝するのです。 つまり、「親から子へ性格が遺伝している」と言ってよいでしょう。

自身の性格が社交的なのか内向的なのか、活発か大人しいか、はたまた、そうした自身の性格が好きか嫌いか、はさて置き、こうした性格の一部が親から引き継がれたものだと知ると、今悩み事を抱えている人や落ち込んでいる人も、自分の親も同じようなことで悩み、苦しんだのかもしれないと想像すると、少し気が楽になったりしないでしょうか?

ところで、日本人は(全体的な傾向として)伝統的にこうした内向的な性格を受け継いできて、集団としての内向性と、周囲の地域から閉鎖された島国であることが合わさって、外の世界に対しては一致団結して戦う(元寇とか黒船とか)力にもなるし、排他的(鎖国や現代も外国人受け入れが少ない点など)にもなっているのかもしれません。

尚、冒頭で取り上げたステレオタイプの例のような表現や、出身地や性別、血液型などで人の性格を判断するやり方は、差別的な要素を含んでいる場合、また、受け手が差別だと受け取る可能性がありますので、あまりそうした固定概念に囚われずに広い視野で、物事を見ることをお勧めします。